旅行代理店の旅程表と提案書づくりをClaude Codeで半分の時間に
旅行代理店のプランナー向け。Claude Codeと生成AIで旅程表・見積もり・提案書づくりを時短する手順を、プロンプト雛形と検証スクリプト付きで紹介します。
金曜の夕方、カウンターに「来週末、夫婦で京都2泊。予算は20万円くらいで、紅葉と懐石が見たい」というお客様が来ました。良い相談です。でも僕の頭をよぎったのは、これから始まる2時間です。
宿の空きを調べ、移動の時間を組み、料金を電卓で足し、Wordに清書し、注意事項を貼り付け、最後に誤字を直す。提案書1本に2時間。それを1日に何件も抱えると、夜になっても「明日また組み直そう」の山が残ります。お客様の顔より、テンプレの空欄を埋める作業に時間を吸われている。これが旅行代理店のプランナーの、わりとリアルな日常だと思います。
僕はこの「組み立てと清書」の部分を、Claude Codeと生成AIに肩代わりしてもらいました。結論を先に言うと、提案書1本あたりの作業が2時間から50分くらいに減りました。ただし、丸投げではうまくいきません。任せる範囲と、人が必ず握る範囲をきっちり分けるのがコツでした。
この記事の要点
- 旅程表・見積もり・提案書の「組み立てと清書」はAIが得意。プランナーは行き先選びとお客様対応に集中できる
- そのまま貸せるプロンプト雛形と、料金の計算ミスを機械で弾く検証スクリプトを置いた
- 料金・在庫・キャンセル規定など「間違えたら事故になる数字」は人が必ず確認する。ここを線引きするのが安全に使う条件
- 個人情報は氏名や予約番号を伏せ字にしてからAIに渡す。生データを貼らない運用ルールを先に決める
- 1本2時間が50分に。月60本なら約70時間の節約という概算が立った
そもそも旅行代理店の仕事のどこが重いのか
読者はおそらく、店舗や法人営業でオーダーメイド旅行を組むプランナーでしょう。パッケージを売るより、要望を聞いて一から組む比率が高い人ほど、この記事は刺さるはずです。
オーダーメイドの提案は、だいたいこんな流れで進みます。
- ヒアリング:行き先、人数、予算、好み、外せない条件を聞く
- 素材集め:宿、交通、現地体験の候補と料金を調べる
- 組み立て:移動時間と空き状況を見ながら日程に落とす
- 見積もり:宿泊、交通、手配料、税を足して総額を出す
- 清書:旅程表と提案書に整え、注意事項を添える
- 提示と修正:お客様に出し、「2日目を観光多めに」などの直しを反映する
このうち1と6は、人にしかできません。お客様の表情や予算の本音を読む仕事です。一方で3から5は、決まった素材を決まった型に流し込む作業です。ここに毎回1〜2時間かかり、しかも修正のたびに同じ作業をやり直す。手戻りの正体はここにあります。
「2日目をもう少しゆっくりに」と言われると、移動時間も料金も全部組み直し。Excelの行を一個ずらしただけで合計が合わなくなり、気づかず出して赤面する。こういう小さな事故が、現場では地味に多いんですね。
AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲
ここを曖昧にすると事故ります。先に線を引きます。
| 工程 | AIに任せる | 人が必ず判断する |
|---|---|---|
| ヒアリング | 質問の抜け漏れチェック | 予算の本音、相性、雰囲気の読み取り |
| 素材集め | 候補の下調べ、比較表の作成 | 在庫・空室の最終確認、おすすめの取捨選択 |
| 組み立て | 移動時間を考えた日程の叩き台 | 無理のない動線か、体力に合うか |
| 見積もり | 計算式の組み立て、合計の下書き | 仕入れ単価、為替、キャンセル規定の数字 |
| 清書 | 旅程表と提案書への整形、誤字チェック | 最終承認、お客様名義の確定 |
覚えてほしい線引きは1つです。「間違えたら返金やクレームになる数字」は、必ず人が確認する。 料金、空室、キャンセル料、年齢別料金、為替。ここはAIの下書きを鵜呑みにせず、仕入れ先の正式な料金で照合します。AIは速い清書係であって、料金保証はしてくれません。
Use case 1:要望メモから旅程表の叩き台を作る
ヒアリングのメモは、たいていバラバラの箇条書きです。これを日程表の形に起こすのに、僕は今までいちばん時間を使っていました。ここをAIに渡します。
そのまま使えるプロンプト雛形がこれです。
あなたは旅行代理店のベテランプランナーです。
以下の要望メモから、移動時間に無理のない旅程表の叩き台を作ってください。
# 要望メモ
- 行き先: 京都
- 日程: 2泊3日
- 人数: 夫婦2名
- 予算: 総額20万円前後
- 希望: 紅葉スポット、夜は懐石、移動は詰め込みすぎない
# 出力ルール
- 1日ごとに「午前/午後/夜」で区切る
- 各項目に所要時間の目安と移動手段を書く
- 移動が1時間を超える箇所には「★移動長め」と注記する
- 料金が必要な箇所は [要確認:料金] と書き、数字は勝手に埋めない
- 最後に「確認が必要な項目」を箇条書きで列挙する
最後の2行が肝です。料金は勝手に埋めさせず、[要確認:料金] のプレースホルダにしておく。 こうすると、AIがそれっぽい嘘の値段を書く事故を防げます。出てきた叩き台に、自分が仕入れ先で取った正式な料金を流し込む。この役割分担なら安心して使えます。
Claude Codeの基本操作にまだ慣れていない人は、先にClaude Code はじめ方ガイドを読んでおくと、この雛形をすぐ試せます。
Use case 2:見積もりの合計ミスを機械で弾く
提案書で一番怖いのが、料金の足し算ミスです。1泊2食を人数分、税とサービス料、手配料。Excelで組むと、行を1つ足したときに合計範囲がズレて、気づかず低い金額で出してしまう。これは謝罪と差額の自腹コースです。
そこで、見積もりの内訳を機械でチェックするスクリプトを用意しました。Node.jsがあれば動きます。内訳の小計を全部足し直して、提示している総額と一致するかを検算するだけのものです。
// verify-quote.mjs 料金の内訳と総額が一致するか検算する
// 実行: node verify-quote.mjs
const quote = {
customer: "(伏せ字)様",
items: [
{ label: "宿泊 1泊目 旅館A 2名", amount: 48000 },
{ label: "宿泊 2泊目 旅館B 2名", amount: 52000 },
{ label: "新幹線 往復 2名", amount: 56000 },
{ label: "現地ガイド 半日", amount: 18000 },
{ label: "手配料", amount: 8000 },
],
tax: 14400, // 消費税など
presentedTotal: 196400, // 提案書に書く総額
};
const subtotal = quote.items.reduce((sum, item) => sum + item.amount, 0);
const calcTotal = subtotal + quote.tax;
console.log(`小計: ${subtotal.toLocaleString()}円`);
console.log(`税: ${quote.tax.toLocaleString()}円`);
console.log(`計算上の総額: ${calcTotal.toLocaleString()}円`);
console.log(`提案書の総額: ${quote.presentedTotal.toLocaleString()}円`);
if (calcTotal === quote.presentedTotal) {
console.log("OK: 内訳と総額が一致しています");
} else {
const diff = quote.presentedTotal - calcTotal;
console.log(`NG: ${Math.abs(diff).toLocaleString()}円ずれています。提案書を出す前に直してください`);
process.exit(1);
}
このスクリプトに presentedTotal を提案書の数字に合わせて入れておけば、ズレた瞬間に NG で止まります。お客様に出す前の最後の門番です。items の単価そのものは人が仕入れ先で確認した値を入れる前提で、ここは検算しかしません。検算と料金確認は別、と割り切るのが大事です。
プロンプトの精度をもっと上げたい人は、プロンプトの精度を上げるコツもあわせてどうぞ。
Use case 3:「2日目をゆっくりに」の修正を一発で反映する
提示後の修正こそ、AIの本領です。これまでは要望が来るたびに旅程も料金も手で組み直していました。今はこう頼みます。
先ほどの旅程表に、次の修正を反映してください。
- 2日目: 午前の予定を1つ減らし、午後はホテルでの休憩を1時間入れる
- それにより移動が変わる箇所は所要時間を書き直す
- 料金が変わる項目は [要確認:料金] に戻す
- 変更した箇所の先頭に「▼変更」と付け、何を変えたか一行で説明する
「変更箇所に印をつけて」と頼むのがコツです。どこが変わったか一目でわかるので、自分の確認が一瞬で済みます。料金が動く項目は [要確認:料金] に戻させて、再計算は人が握る。これで「直したつもりが合計だけ古いまま」という事故が消えました。
旅程と提案書のひな型をプロジェクトに覚えさせておくと、毎回ゼロから指示せずに済みます。やり方はCLAUDE.md の書き方が参考になります。
コピペで使える確認チェックリスト
提案書を出す前の最終確認は、紙でもメモでもいいので毎回これを通してください。
- 料金は仕入れ先の正式な見積もりと照合したか
- 空室・在庫を最終確認したか(AIの下書きを信用していないか)
- キャンセル規定と年齢別料金を本文に入れたか
- 検算スクリプトを通して合計が一致したか
- お客様の氏名・予約番号を正しい表記に戻したか
- 移動時間に無理がないか(高齢・小さい子ども連れは特に)
個人情報・セキュリティの注意点
旅行の手配は、氏名、生年月日、パスポート番号、予約番号と、機微な情報の塊です。これをそのままAIに貼るのは避けます。
運用ルールはシンプルに2つです。1つ、個人情報は伏せ字にしてから渡す。 氏名は「A様」、予約番号は「(伏せ字)」に置き換える。組み立てや清書に本名は要りません。2つ、生データはローカルで管理し、最後の名義差し込みだけ人が手元でやる。 AIには型を作らせ、個人を特定する情報は手元で埋める。この順番を守れば、外に出して困る情報は流れません。
会社として導入するなら、何を渡してよくて何がダメかを明文化しておくと安全です。チームでの線引きづくりは研修・相談で一緒に整理できます。判断基準を曖昧なまま全員に配ると、誰かが必ず生データを貼ってしまうからです。
導入前と後で、何が変わったか
数字で並べると変化がはっきりします。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 提案書1本の作成時間 | 約2時間 | 約50分 |
| 修正1回の反映時間 | 約40分 | 約10分 |
| 合計の計算ミス | たまに発生 | 検算で出す前に検知 |
| プランナーの集中先 | 清書と電卓 | 行き先選びと接客 |
ざっくりROIの目安です。提案書を月60本作るとして、1本あたり70分の短縮なら、月にざっと70時間が浮く計算になります。その時間を、より良い行き先探しや追加提案に回せる。ここが一番の価値だと感じています。
非エンジニアでも使えるのか不安な人は、エンジニアでなくても使えるClaude Codeを読むと、最初の一歩のハードルが下がるはずです。
よくある質問
Q. AIが料金を勝手に決めてしまわないか心配です。
A. プロンプトで [要確認:料金] を使い、数字を埋めさせない運用にします。料金は人が仕入れ先で確認した値だけを入れる。AIは計算式と清書の係、と役割を固定すれば暴走しません。
Q. お客様の本名や予約番号を入れて大丈夫ですか。 A. 入れないでください。伏せ字にしてから渡し、最後の名義差し込みだけ手元でやります。組み立てと清書に個人名は不要です。
Q. うちは独自の旅程テンプレートがあります。再現できますか。 A. できます。自社の型と書式ルールをプロジェクトに覚えさせれば、毎回それに沿った形で出してくれます。詳しくは公式ドキュメントの設定方法を確認してください。
Q. 完全に自動化して、人の確認を省けますか。 A. おすすめしません。料金・在庫・キャンセル規定の確認は人が握る前提です。ここを省くと、ミスがそのままお客様に届きます。時短は「組み立てと清書」に限るのが安全です。
実際に試した結果
僕は冒頭の「京都2泊」のケースを、実際にこの流れで1本通してみました。要望メモから旅程の叩き台を出すまでが約8分。仕入れ先で取った正式料金を流し込み、検算スクリプトに通したら、最初は手入力ミスで2,000円ずれていて、ちゃんと NG で止まってくれました。出す前に気づけたのが何より大きかったです。
そのあとお客様から「2日目をゆっくりに」と修正が入りましたが、変更箇所に印を付けさせたおかげで、確認込みで10分かからず差し替えられました。トータルで、いつもなら2時間コースが50分ほど。浮いた時間で、紅葉の穴場をもう1案足す余裕まで生まれました。
確かめたのは3つです。料金を埋めさせない運用で嘘の数字が出ないこと、検算で合計ミスが出る前に止まること、修正反映が手戻りなく回ること。この3つが揃えば、旅行代理店の提案づくりは安心して任せられる、というのが今の実感です。まずは1本、失敗しても怖くない案件で試してみてください。最初の操作に迷ったらClaude Code はじめ方ガイドから始めるのが近道です。
公式の使い方はClaude Code 公式ドキュメントも参照してください。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
まずは無料PDFで基本コマンドと最初の使い方をまとめて確認してください。登録後はそのままテンプレート集や導入相談にも進めます。
スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
Claude Codeを仕事で使える形にしませんか?
まず無料PDFで基本を固め、繰り返し使う作業はGumroad教材へ、チーム導入や権限設計は導入相談へ進めます。
この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
関連書籍・参考図書
この記事のテーマに関連する書籍を楽天ブックスで探せます。
※ 当サイトは楽天市場のアフィリエイトプログラムに参加しています。上記リンクから商品をご購入いただくと、運営者に紹介料が支払われる場合があります。
関連記事
制作会社がClaude Codeに触らせる前に決める権限チェックリスト
クライアントサイトを壊さずにAI編集を使うための、制作会社向け権限と確認の型です。
SaaSサポートのバグ報告をClaude Codeで再現手順に変える実務フロー
問い合わせ文をそのまま開発へ投げず、再現手順、証拠、次の一手に整えるサポート向け手順です。
Obsidianの古いメモをClaude Codeの指示書に変える10分ルーチン
Obsidianに溜めたメモが毎回ゴミになる人へ。事実・決定・未確認に仕分けして、Claude Codeがそのまま動ける指示書に変える朝の10分の型を紹介します。