Use Cases (更新: 2026/6/7)

行政書士事務所の許認可書類、下書きと要件整理をClaude Codeで前倒しする実務術

建設業許可や在留資格の要件整理と下書きで毎回詰まる行政書士事務所向け。Claude Codeに任せる範囲、コピペできるプロンプト雛形、個人情報の守り方を実例でまとめました。

行政書士事務所の許認可書類、下書きと要件整理をClaude Codeで前倒しする実務術

金曜の夕方、建設業許可の更新案件で、僕は要件一覧のExcelとにらめっこしていました。「専任技術者の証明書類、これで全部そろってたっけ」。前の担当者が作った独自フォーマットのチェックリストは項目が30行あって、どこまで集めたのか自分でも分からなくなる。お客さんに「あと何が足りませんか」と聞かれて即答できず、月曜に折り返します、と言ってしまう。あの気まずさ、行政書士事務所で働いていると一度は味わうと思います。

許認可の仕事は、難しいというより「抜け漏れが怖い」仕事です。要件は条文と運用基準と過去案件の経験が混ざっていて、毎回ゼロから組み立て直すのは時間がかかる。でも完全な定型でもないので、テンプレを貼るだけでは済まない。この「半分定型・半分判断」の部分こそ、Claude Codeのような生成AIに下ごしらえを任せると効きます。

この記事では、許認可書類の下書きと要件整理を事務所の業務にどう組み込むか、僕が実際に試した手順とそのまま使えるプロンプトで説明します。

この記事の要点

  • 行政書士事務所の「要件整理と下書き」は、AIに下ごしらえ、人が最終判断、という分け方が一番事故が少ない。
  • 申請の種類ごとに要件チェックリストを生成させ、ヒアリング項目の抜けを先に潰す使い方が即効性あり。
  • 個人情報は実名・住所・マイナンバーを伏せ字に置き換えてから渡すのが大前提。仮名化のひと手間で安全度が大きく変わる。
  • コピペできるプロンプト雛形3種と、伏せ字化を機械的にやる検証スクリプトを載せています。
  • 法令の最終確認・添付書類の要否・お客さんへの最終回答は、必ず行政書士本人が判断する。AIの出力は下書き止まり。

行政書士事務所の現場で、何が時間を食っているか

まず読者像をそろえます。この記事が想定するのは、建設業許可、産業廃棄物収集運搬業、飲食店営業、古物商、在留資格、会社設立まわりなど、複数の許認可を少人数で回している事務所の行政書士です。補助者が1〜2名、案件は同時に5〜15件、繁忙期は更新と新規が重なる。そんな規模感を思い浮かべてください。

許認可案件の業務フローは、だいたいこう進みます。

  1. 問い合わせを受けて、申請の種類と要件のあたりをつける
  2. お客さんにヒアリングし、必要書類のリストを渡す
  3. 集まった書類を確認し、足りない分を催促する
  4. 申請書・添付書類・理由書などを作成する
  5. 役所の窓口や電子申請でチェックを受け、補正に対応する
  6. 許可後のフォロー(更新時期の管理など)

時間を食うのは2と3と4です。とくに「要件のあたりをつけてヒアリング項目を作る」工程は、案件ごとに微妙に違うのに毎回手作業でやり直していて、しかも抜けると後工程の手戻りに直結します。書類を集め終わってから「実は決算書がもう1期分必要でした」と分かると、お客さんの信頼にも響く。

ここで起きるよくある手戻りを並べると、こんな感じです。

  • ヒアリング項目の抜けで、書類の催促が2回・3回に分かれる
  • 過去の似た案件のフォーマットを流用して、今回不要な書類まで集めてしまう
  • 理由書の文面を毎回ゼロから書いて、結局言い回しは前回とほぼ同じ
  • 更新案件で、前回からの変更点の洗い出しに時間がかかる

AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲

ここが一番大事なので先に線を引きます。Claude Codeに任せるのは「下ごしらえ」、人がやるのは「最終判断」。この境界を曖昧にすると、AIが書いたそれっぽい要件説明をそのまま信じて事故ります。

工程AIに任せてよい範囲行政書士本人が判断する範囲
要件整理申請種類ごとの要件項目を一覧化、ヒアリング表のたたき台作成その自治体・その案件で実際に必要な要件の最終確定
書類リスト一般的な添付書類の候補を網羅的に出す個別事情での要否、原本/写しの別、有効期限
下書き作成理由書・申請理由の文面のたたき台、定型部分の穴埋め事実関係の正確性、誇張のない表現、署名・押印の判断
補正対応補正通知の内容を平易に言い換え、対応案の整理役所への最終回答、追加書類の判断

AIの出力は「条文や運用基準の正確な引き写し」ではありません。あくまで思い出しのきっかけ、抜け漏れチェックの相棒です。最終的な根拠は必ず自分で一次情報にあたる。これを徹底するなら、下書き工程の時間はかなり削れます。生成AIに業務を頼むときの基本的な考え方は、コードが書けなくてもClaude Codeは使える始め方でも整理しているので、初めての方はそちらも合わせて読んでください。

Use case 1:申請種類ごとの要件チェックリストを生成する

一番効くのがこれです。新規の問い合わせが来た瞬間に、申請の種類を伝えて要件チェックリストのたたき台を作らせる。手元のテンプレと突き合わせて、抜けと過剰を10分で確認できます。

例えば建設業許可(知事許可・一般)の新規なら、経営業務の管理責任者、専任技術者、財産的基礎、誠実性、欠格要件、といった大項目ごとに「確認すべきこと」と「集める書類の候補」を表にしてもらう。出てきた一覧を自分の一次情報チェックリストと照合し、その自治体の手引きで最終確定します。

コピペできるプロンプト雛形がこれです。

あなたは行政書士事務所の補助者です。以下の許認可申請について、
要件整理のたたき台を作ってください。最終確認は行政書士が行うので、
「一般的にこう言われている」レベルの網羅性を優先し、断定は避けてください。

# 申請の種類
建設業許可(都道府県知事許可・一般建設業・新規)

# 出力してほしいもの
1. 要件の大項目(経管・専技・財産的基礎・誠実性・欠格要件など)ごとに、
   確認すべきポイントを箇条書き
2. 各項目で集める可能性のある添付書類の候補(原本/写しの別が分かれば併記)
3. お客さんへのヒアリングで聞くべき質問のリスト
4. 自治体の手引きで必ず確認すべき注意点(運用差が出やすい点)

# 制約
- 自治体ごとに運用が異なる点は「要確認」と明記する
- 法令の条番号は参考として添えるが、根拠は人が確認する前提で書く

ポイントは、最後の制約で「断定するな・要確認と書け」と明示することです。これを入れないと、AIは自信たっぷりに「○○は不要です」と書いてしまい、そこを見落とすと危ない。プロンプトの精度を上げる細かいテクニックはプロンプトエンジニアリングの応用に詳しくまとめています。

Use case 2:ヒアリング表とお客さん向け書類リストを作る

要件のたたき台ができたら、それをお客さんに渡せる形に整えます。専門用語だらけの要件一覧をそのまま渡しても、お客さんは何を用意すればいいか分かりません。「住民票(本籍地記載あり、3か月以内)」のように、何を・どこで・どの状態で取るかまで噛み砕いた一覧に変換させます。

このとき便利なのが、出力フォーマットを指定することです。

先ほどの要件整理をもとに、お客さん(建設業の経営者・法律用語に不慣れ)に
そのまま渡せる「ご準備いただく書類リスト」を作ってください。

# 形式
- 表形式:書類名 / 取得先 / 部数 / 注意点(有効期限など)
- 専門用語は使わず、取得先(市役所・法務局・税務署など)を具体的に書く
- チェックボックス(- [ ])付きで、お客さんが集めながら消し込めるようにする

# 注意
- 個別事情で要否が変わるものは「※要確認」と末尾に付ける
- 部数や有効期限が自治体で変わるものは断定しない

このリストは、催促の往復を減らすのに効きます。一度に何が必要か見える化されるので、「あれも、これも」と小出しになりません。

Use case 3:理由書・申請理由の下書きを前倒しする

産廃の収集運搬業や在留資格の更新では、理由書や申請理由の文面が要ります。これがゼロから書くと地味に時間を食う。過去案件の言い回しはだいたい決まっているのに、毎回考え直していました。

ここでもAIにたたき台を作らせます。ただし渡す情報には実名・住所・具体的な事業所名を入れない。後述の伏せ字化を必ず通してから渡します。

以下の事実メモをもとに、産業廃棄物収集運搬業許可の申請理由書の下書きを
作ってください。事実は変えず、誇張せず、淡々と書いてください。

# 事実メモ(仮名化済み)
- 申請者:A社(運送業を15年営む法人)
- 動機:取引先B社からの依頼で、建設廃材の運搬需要が増えた
- 体制:車両3台、ドライバー全員が特別管理産業廃棄物の研修を受講済み
- 取扱品目:がれき類、廃プラスチック類

# 制約
- 700字程度、です・ます調
- 事実メモにないことは書かない(推測で補わない)
- 署名・押印・日付欄はプレースホルダにする

出てきた下書きは、必ず事実関係を一行ずつ確認してから使います。AIは「それっぽく」埋めようとするので、メモにない事実を勝手に足していないかが要チェックです。

導入の前と後で、何がどう変わったか

数字で実感を共有します。あくまで僕の手元の概算で、案件の難易度で前後しますが、目安として。

工程導入前(手作業)導入後(AIに下ごしらえ)
要件整理+ヒアリング表作成約90分約30分(確認込み)
書類リストの清書約40分約10分
理由書の初稿約60分約20分

1案件あたりで見ると、ざっくり3時間が1時間ちょっとに縮みました。月に新規・更新あわせて10件回すと、単純計算で月15〜20時間。時給換算でいくらになるかは事務所ごとに違いますが、その時間を面談やフォローに回せるのは大きいです。注意したいのは、削れたのは「下ごしらえの時間」であって「確認の時間」ではないこと。確認はむしろ丁寧にやる前提です。

個人情報とセキュリティの注意点

ここを飛ばすと全部が台無しになります。行政書士は職務上、戸籍や住民票、決算情報など機微なデータを大量に扱います。これをそのままAIに貼るのは絶対にやめてください。

守るべき最低ラインはこれです。

  • 実名・住所・生年月日・マイナンバー・法人番号・具体的な事業所名は、AIに渡す前に伏せ字(A社、B氏、◯◯市など)に置き換える。
  • 戸籍・住民票・登記事項証明書などの画像やPDFそのものをアップロードしない。必要な事実だけをテキストのメモにして渡す。
  • 業務で使うなら、入力データが学習に使われない契約形態(API利用や、データ保持の設定を確認したプラン)を選ぶ。利用規約とデータの扱いは事務所として一度きちんと確認する。
  • 顧客との守秘義務契約や、行政書士法上の守秘義務に反しない範囲かを、導入前に自分で線引きする。

仮名化は手作業だと逆に漏れます。だから機械的にやります。次のスクリプトは、テキストの中の典型的な個人情報パターン(メール、電話番号、マイナンバー桁の数字列など)を伏せ字に置き換える簡単な前処理です。Node.jsがあれば動きます。完璧な匿名化ツールではなく「貼る前の一次フィルタ」として使ってください。

import { readFile, writeFile } from "node:fs/promises";

// 置き換えルール:機微情報のパターンを伏せ字にする
const rules = [
  // メールアドレス
  [/[A-Za-z0-9._%+-]+@[A-Za-z0-9.-]+\.[A-Za-z]{2,}/g, "[メール]"],
  // 電話番号(ハイフンあり/なし、10〜11桁)
  [/0\d{1,4}-?\d{1,4}-?\d{3,4}/g, "[電話番号]"],
  // マイナンバー・法人番号らしき12〜13桁の数字
  [/\d{12,13}/g, "[番号]"],
  // 郵便番号
  [/〒?\d{3}-?\d{4}/g, "[郵便番号]"],
];

const input = process.argv[2] || "./draft.txt";
const output = process.argv[3] || "./draft.masked.txt";

let text = await readFile(input, "utf8");
let hits = 0;
for (const [pattern, replacement] of rules) {
  text = text.replace(pattern, () => { hits++; return replacement; });
}
await writeFile(output, text, "utf8");
console.log(`${hits} 件を伏せ字にしました → ${output}`);
console.log("注意:氏名・住所・社名は自動で消えません。目視で必ず確認してください。");

使い方は node mask.mjs 元のメモ.txt 伏せ字版.txt です。最後の警告メッセージが大事で、氏名や住所のような自由記述は正規表現では拾えません。だからスクリプトを通したあと、必ず人間の目で固有名詞を消す。この二段構えにします。Claude Codeにこの伏せ字化そのものをルール化して任せる方法は、CLAUDE.mdの書き方を参考に、事務所のルールとして設定ファイルに落とし込むとさらに安定します。

チェックリスト:AIの下書きを使う前の最終確認

下書きが上がってきたら、公開(=お客さんや役所に出す)前にこれを通します。

  • 伏せ字化スクリプトと目視の二段で、個人情報を渡していないか確認した
  • 要件の根拠を、自治体の手引きか条文の一次情報で確認した
  • AIがメモにない事実を勝手に足していないか、一行ずつ照合した
  • 「不要」「必要ない」という断定を鵜呑みにしていないか
  • 添付書類の原本/写しの別、有効期限を自分で確定させた
  • お客さん向けの文面に専門用語が残っていないか読み直した

よくある質問

Q. AIが出した要件をそのまま信じて申請して大丈夫ですか。 だめです。AIの出力は思い出しのきっかけであって、根拠ではありません。要件は必ず自治体の手引きや条文の一次情報で確定してください。最終責任は行政書士にあります。

Q. お客さんから預かった住民票の画像を読み取らせてもいいですか。 やめてください。画像やPDFそのものを渡さず、必要な事実だけをテキストのメモに起こし、しかも実名や番号は伏せ字にしてから渡します。手間に見えますが、これが守秘義務を守る最低ラインです。

Q. 専門用語を知らない補助者でも使えますか。 使えます。むしろ日本語で頼むだけなので、補助者のたたき台作りに向いています。導入の最初の一歩はClaude Code入門ガイドが分かりやすいです。出てきたものを行政書士が確認する運用にすれば、教育コストも下がります。

Q. どの申請から試すのがいいですか。 件数が多くて定型部分が大きいものから。建設業許可の更新、古物商、飲食店営業あたりは効果を実感しやすいです。在留資格のように個別性が高いものは、要件整理だけ任せて文面は慎重に扱うのがおすすめです。

Q. 情報の鮮度はどう担保しますか。 法令や運用基準は変わります。AIの知識は学習時点で止まっているので、施行日や改正の最新情報は必ずデジタル庁や各自治体の公式情報で確認してください。例えば電子申請の動向はデジタル庁の公式サイトで一次情報を追えます。

実際に試した結果

僕は実際に、建設業許可(知事・一般・新規)の架空案件で、要件整理からヒアリング表、書類リストまでを一気通貫で試しました。事実メモはすべて仮名化し、伏せ字化スクリプトを通してから渡しています。

確かめたのは三つです。一つ目、要件チェックリストのたたき台は、自分の手元リストと突き合わせて9割は合っていました。残り1割は自治体ごとの運用差で、これは想定どおり「要確認」と出力されていたので、危険な断定はありませんでした。二つ目、お客さん向けの書類リストは、専門用語をきちんと噛み砕いてくれて、そのまま渡せる完成度に近かった。三つ目、理由書の下書きは、事実メモにない事業所名を一度だけ勝手に補おうとしたので、ここは目視で消しました。やはり「メモにないことは書くな」の制約を入れても完全ではなく、最後の照合は外せないと再確認しました。

総じて、下ごしらえの時間は体感で半分以下になり、空いた時間を要件の最終確認に回せました。次の一歩としては、自分の事務所でよく扱う申請を一つ選び、その要件整理のプロンプトを上の雛形から作ってみることをおすすめします。さらに踏み込んで作業の段取りごと効率化したい方はClaude Code活用の生産性アップ術もどうぞ。事務所全体で業務に組み込みたい、運用ルールから一緒に設計したいという場合は、研修・相談で具体的なフローづくりをお手伝いします。

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Masa

この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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