司法書士事務所の「登記の説明文と進捗連絡」をClaude Codeで下書きする実務手順
司法書士事務所で毎回手書きしている登記の説明文と進捗連絡を、Claude Codeで下書きにする方法。プロンプト雛形・チェックリスト・個人情報の注意点まで、実務の手順でまとめました。
金曜の夕方、決済を3件こなして事務所に戻ると、机の上に「お客様への進捗連絡、まだ出てません」という補助者のメモが貼ってありました。
僕が司法書士の友人から聞いた話です。相続登記の依頼者に「いま法務局に申請が出て、完了予定は2週間後です」と一本連絡を入れる。それだけのことなのに、案件が重なる時期はこれが後回しになる。連絡が遅れたお客さんから「どうなってますか」と電話が来て、その対応でまた時間が溶ける。文章自体は5分で書けるのに、書く時間そのものが取れない。
しかも、毎回ゼロから書いている。所有権移転の説明、抵当権設定の説明、相続放棄の注意点。中身はだいたい同じなのに、案件ごとに少しずつ条件が違うから、過去のメールを探して、コピーして、日付と名前を直して、という作業が地味に重い。
この「中身はほぼ同じだけど、毎回手で書いている文章」こそ、生成AIに下書きさせる相性が一番いい仕事です。今日はそれを、Claude Codeを使って事務所の手順に落とす話をします。
この記事の要点
- 司法書士事務所の文書のうち、「登記の説明文」と「依頼者への進捗連絡」は型が決まっているので、AIの下書きと一番相性がいい
- AIに任せるのは下書きまで。登記の可否判断、法的な助言、最終チェックは司法書士本人がやる、という線を最初に引く
- そのまま使えるプロンプト雛形と、案件メモを流し込んで連絡文を一括生成する検証スクリプトを置いた
- 個人情報を守るため、本物の氏名・住所・登記識別情報は伏せ字で渡す運用を最初に決める
- 1案件あたりの文章作成を15分から3分に縮められれば、月100件で約20時間が浮く計算になる
まず、誰のための話か
この記事が役に立つのは、こんな司法書士事務所です。
司法書士1〜3人、補助者が数人。相続登記、不動産の売買による所有権移転、会社の役員変更や設立、抵当権の抹消あたりを日常的に扱っている。決済や面談で外に出ることが多く、事務所での文書作成は夜か早朝にまとめてやっている。補助者が下書きを作って司法書士が直す体制だけれど、繁忙期は下書きすら追いつかない。
つまり、文章を書くスキルが足りないわけではなく、書く時間と「毎回似たものを一から作る無駄」が問題、という事務所です。ここが当てはまるなら、この先の手順はそのまま現場で試せます。
Claude Codeそのものに初めて触れる人は、先に非エンジニア向けのClaude Code入門に目を通しておくと、この記事の手順が頭に入りやすいです。
司法書士事務所の文書フローを分解する
登記案件の文書まわりを、依頼から完了まで並べてみます。
- 受任時:依頼内容のヒアリングと、必要書類の案内文を渡す
- 着手:見積りと業務内容の説明書を作る
- 申請前:依頼者に「これから申請します」「完了予定はいつ」を連絡する
- 申請後:法務局の処理状況に変化があれば中間連絡を入れる
- 完了:登記完了の報告と、登記識別情報・登記事項証明書の受け渡し案内を作る
このうち、毎回ほぼ同じ型で書いているのは 2の業務説明、3と4の進捗連絡、5の完了報告 です。法的な判断が要る部分(登記が通るか、必要書類は何か、登録免許税はいくらか)はAIには任せられませんが、判断が終わった後の「お客さんに分かる言葉で書き起こす」工程はAIの得意分野です。
ここを切り分けるのが最初の一歩。判断はあなた、清書はAI、と決めてしまうと事故が起きにくくなります。
Use case 1:登記の説明文を依頼者向けに書き直す
司法書士の頭の中では当たり前の「所有権移転登記」「抵当権設定」も、依頼者にとっては初めて聞く言葉です。専門用語のまま説明書を渡すと、後で「これどういう意味ですか」という問い合わせが増える。
AIに、専門的な内容を保ったまま依頼者が読める日本語に直してもらいます。
よくある手戻り: 補助者が説明文を作ると、過去の別案件の文面を流用して、抵当権の説明なのに「所有権」と書き間違える。司法書士が気づいて直す。この往復が毎回発生する。
導入後: あなたが箇条書きで条件だけ渡し、AIが説明文の形にする。間違えやすい固有名詞や金額は、あなたが渡した箇条書きにしかない情報なので、流用ミスが起きにくくなります。
下の表は、AIに任せる部分と人が判断する部分の線引きです。
| 工程 | AIに任せる | 司法書士が判断する |
|---|---|---|
| 登記の種類の特定 | × | ○ |
| 必要書類の確定 | × | ○ |
| 登録免許税の計算 | × | ○ |
| 説明文の文章化 | ○ | 最終確認 |
| 専門用語のかみ砕き | ○ | 最終確認 |
| 依頼者向けトーンの調整 | ○ | 最終確認 |
Use case 2:進捗連絡を案件メモから一括生成
進捗連絡は型が決まっています。「誰の」「どの登記が」「いまどの段階で」「完了予定はいつか」。この4つを埋めれば文章になる。
案件メモをこんな形でためておきます。
氏名: A様
登記の種類: 相続による所有権移転
段階: 法務局へ申請済み
申請日: 2026-06-05
完了予定: 2026-06-19
備考: 完了後、権利証の受け渡し方法を要相談
これをAIに渡すと、お客さんに送れる連絡文の下書きが返ってきます。複数案件をまとめて流し込めば、夕方の30分で全件の下書きが揃う。あとはあなたが目を通して送るだけです。
ROIの目安: 連絡文1通を手で書くと、過去メールを探す時間も含めて15分。下書きをAIに任せて確認だけにすると3分。差は12分です。月に100通出す事務所なら、100通 × 12分 = 1,200分、約20時間が浮く計算になります。時給換算で司法書士の単価を仮に5,000円とすれば、月10万円分の時間です。
数字は事務所の規模で変わりますが、「毎回手で書く文章が多いほど効く」という方向は変わりません。
Use case 3:完了報告と受け渡し案内のテンプレ化
登記が完了したら、報告と登記識別情報の受け渡し案内を出します。ここは間違えると信頼に直結するので、定型文をしっかり作り込む価値があります。
チェックリストにしておくと、AIの下書きを確認するときの抜け漏れが減ります。
- 完了した登記の種類が正しいか
- 登記完了の日付が入っているか
- 受け渡す書類の名前が正確か(登記識別情報通知、登記事項証明書など)
- 受け渡し方法(来所・郵送・データ)が依頼者の希望と合っているか
- 登記識別情報の取り扱い注意(他人に見せない・コピーを取らない)が書いてあるか
- 次に依頼者がやることが明記されているか
このチェックリストを、後で出てくるCLAUDE.mdにそのまま書いておくと、AIが下書きの段階で自分で確認するようになります。プロジェクトのルールをAIに覚えさせる仕組みはCLAUDE.mdの書き方にまとめています。
コピペで使えるプロンプト雛形
まず、説明文と連絡文の両方で使える基本プロンプトです。Claude Codeのチャットにそのまま貼って、案件情報の部分を差し替えてください。
あなたは司法書士事務所の文書作成を手伝うアシスタントです。
以下のルールを守って、依頼者に送る連絡文の下書きを作ってください。
# ルール
- 依頼者が法律の専門家でない前提で、専門用語は初出でかっこ書きで言い換える
- 断定的な法的助言はしない。事実の報告と次の手続き案内にとどめる
- 金額・日付・氏名は、下に書いた案件情報にあるものだけを使う。推測で補わない
- 不足している情報があれば、文中ではなく末尾に「確認事項」として箇条書きで挙げる
# 案件情報
氏名: A様
登記の種類: 相続による所有権移転
段階: 法務局へ申請済み
申請日: 2026-06-05
完了予定: 2026-06-19
# 出力
件名と本文を、そのまま送れる丁寧な文章で。署名は入れない。
ポイントは「推測で補わない」と「不足は確認事項に出す」の2行です。これを入れておくと、AIが勝手に日付や金額をでっち上げる事故を防げます。プロンプトの細かい組み立て方はプロンプトエンジニアリングの応用が参考になります。
検証スクリプト:案件メモから連絡文を一括下書き
案件が複数あるとき、1件ずつチャットに貼るのは面倒です。案件をまとめたファイルを読み込んで、Claude Code側で全件分の下書きプロンプトを組み立てるスクリプトを置きます。Node.jsがあれば動きます。
cases.json に案件をためておきます。本物の氏名や住所は入れず、伏せ字にしておくのがコツです(理由は次の章で書きます)。
[
{
"name": "A様",
"type": "相続による所有権移転",
"stage": "法務局へ申請済み",
"appliedOn": "2026-06-05",
"doneBy": "2026-06-19"
},
{
"name": "B様",
"type": "抵当権抹消",
"stage": "必要書類を受領済み・申請準備中",
"appliedOn": "",
"doneBy": "2026-06-12"
}
]
下のスクリプトは、各案件を読み込んで「そのままClaude Codeに貼れるプロンプト」を案件ごとに書き出します。文章生成自体はClaude Codeにやらせ、スクリプトは下ごしらえに徹する、という分担です。
import { readFile, writeFile, mkdir } from "node:fs/promises";
const cases = JSON.parse(await readFile(new URL("./cases.json", import.meta.url), "utf8"));
// 1件分の案件情報から、貼り付け用プロンプトを組み立てる
function buildPrompt(c) {
const lines = [
"あなたは司法書士事務所の文書作成を手伝うアシスタントです。",
"依頼者が専門家でない前提で、丁寧な進捗連絡の下書きを作ってください。",
"金額・日付・氏名は下の案件情報にあるものだけ使い、推測で補わないこと。",
"不足情報は末尾に「確認事項」として箇条書きで挙げること。",
"",
"# 案件情報",
`氏名: ${c.name}`,
`登記の種類: ${c.type}`,
`段階: ${c.stage}`,
`申請日: ${c.appliedOn || "(未入力)"}`,
`完了予定: ${c.doneBy || "(未入力)"}`,
];
return lines.join("\n");
}
await mkdir(new URL("./out/", import.meta.url), { recursive: true });
let index = 1;
for (const c of cases) {
const prompt = buildPrompt(c);
const file = new URL(`./out/case-${index}.txt`, import.meta.url);
await writeFile(file, prompt, "utf8");
console.log(`case-${index}.txt を書き出しました(${c.type})`);
index += 1;
}
console.log(`合計 ${cases.length} 件の下書きプロンプトを out フォルダに用意しました。`);
実行はこれだけです。
node build-prompts.mjs
out フォルダに案件ごとのテキストができるので、それをClaude Codeに順番に渡せば全件の下書きが揃います。慣れてきたら、Claude Codeから直接このファイルを読ませて「out の中身を全部、連絡文にして」と頼む形にも広げられます。基本操作に不安があればClaude Codeの始め方ガイドを先に押さえておくと安心です。
個人情報とセキュリティの線引き
ここは司法書士事務所として一番気をつける部分なので、独立して書きます。
司法書士が扱う情報は、氏名・住所・生年月日・不動産の地番・登記識別情報など、漏れたら取り返しのつかないものばかりです。これをそのまま外部のAIサービスに送るのは避けたい。
僕が友人に勧めている運用はシンプルです。本物の固有情報は、AIに渡す前に伏せ字にする。氏名は「A様」、住所は「○○市○○」、登記識別情報の番号は絶対に渡さない。AIには「型」を作らせて、固有情報の差し込みは事務所内で人がやる。先ほどのスクリプトで案件名をA様にしていたのは、このためです。
加えて、次の3点を事務所のルールに書いておきます。
- 登記識別情報の12桁のパスワードは、AIにも、下書きファイルにも一切書かない
- 依頼者の同意なく、案件の固有情報を外部サービスに送らない
- 生成された下書きは、送信前に必ず司法書士が読んでから出す
この運用なら、AIに渡るのは「相続による所有権移転の進捗連絡の型」までで、誰の案件かは事務所の外に出ません。守秘義務とAI活用は、この線引きで両立できます。
AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲
ここまでをひとことでまとめると、線はこうです。
- AIに任せる:文章の下書き、専門用語のかみ砕き、トーンの調整、複数案件の下ごしらえ
- 人が判断する:登記が通るかの可否、必要書類と税額、法的な助言、固有情報の差し込み、送信前の最終チェック
この線を最初に引いておけば、「AIが間違った法的判断をして依頼者に伝わる」という最悪の事故は構造的に起きません。AIは清書係、判断は司法書士、という役割分担を崩さないことが肝です。
ふだんの使い方をもっと効率化したいときはClaude Codeの生産性向上テクニックもどうぞ。
よくある質問
Q. AIが法律を間違えて、依頼者に誤った内容を伝えてしまわないですか。 A. その心配は正しいです。だからこの記事では、登記の可否や税額の判断はAIにさせず、判断が終わった後の文章化だけを任せる設計にしています。プロンプトに「推測で補わない」を入れ、送信前に必ず人が読む。この2つを守れば、AIが法的判断を勝手にすることはありません。
Q. 顧客の個人情報をAIに入れて大丈夫ですか。 A. そのまま入れるのは避けてください。本記事のとおり、氏名は「A様」、住所は伏せ字、登記識別情報は一切渡さない運用にします。AIには文章の型だけ作らせ、固有情報の差し込みは事務所内で行います。
Q. パソコンやプログラミングが苦手でも使えますか。 A. 説明文や連絡文の下書きだけなら、プロンプトをチャットに貼るだけで使えます。本記事のスクリプトは「複数案件をまとめて処理したい」段階の話なので、最初は1件ずつチャットで試して、慣れてから自動化に進めば十分です。
Q. 出てきた文章をそのまま送っていいですか。 A. だめです。AIの出力はあくまで下書きです。日付・金額・書類名が案件と合っているか、登記の種類が正しいかを司法書士が確認してから送ってください。確認の手間を減らすために、本記事のチェックリストを使ってください。
Q. 公式の情報はどこで確認できますか。 A. 登記手続きそのものは法務省の登記関連ページが一次情報です。AIの下書きが手続きの流れと合っているかは、こうした公式情報を基準に司法書士が判断してください。
実際に試した結果
僕は司法書士ではないので、友人の事務所の協力を得て、相続登記の進捗連絡を10件分、伏せ字の案件メモから下書きさせてみました。
結果はわかりやすかったです。文章の質は、補助者が過去メールを流用して作るものとほぼ同じ。違ったのは時間で、10件分のメモを用意してから下書きが揃うまで、チャットに貼る作業も入れて15分ほどでした。手書きなら1件15分として150分かかる量です。
面白かったのは、プロンプトに入れた「不足情報は確認事項に出す」が効いたこと。完了予定が空欄の案件で、AIが本文に勝手な日付を入れず、末尾に「完了予定日の確認をお願いします」と書いてきた。これなら司法書士が見落としにくい。
逆に、伏せ字のルールを最初に決めずに試したときは、つい本物の地番を貼りそうになって冷や汗をかきました。だから「固有情報は伏せ字」を運用の一番上に置くことを、強くおすすめします。
事務所単位で本格的に運用に乗せたい、補助者まで含めて使い方を揃えたい、という段階になったら、研修・導入相談で事務所のフローに合わせた組み方を一緒に設計できます。まずは自分で試したい人は、無料の教材をこちらに置いています。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
まずは無料PDFで基本コマンドと最初の使い方をまとめて確認してください。登録後はそのままテンプレート集や導入相談にも進めます。
スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
Claude Codeを仕事で使える形にしませんか?
まず無料PDFで基本を固め、繰り返し使う作業はGumroad教材へ、チーム導入や権限設計は導入相談へ進めます。
この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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