Use Cases (更新: 2026/6/7)

調剤薬局の服薬指導メモと在庫・発注をClaude Codeで時短する実務手順

調剤薬局の薬剤師・事務向け。走り書きの服薬指導メモの整形、在庫の棚卸し、発注リスト作りをClaude Codeで下ごしらえする頼み方を、プロンプト雛形と検証スクリプト付きで紹介します。

調剤薬局の服薬指導メモと在庫・発注をClaude Codeで時短する実務手順

夕方の調剤薬局。処方箋の波が引いたあと、僕の手元には付箋とメモ用紙が10枚ほど残っていました。

「この患者さん、朝の血圧の薬を飲み忘れがちって言ってた」「ワルファリン服用中、納豆の話したけど、次回も確認」。走り書きの服薬指導メモです。これを薬歴に清書するのが、閉局後のいつもの仕事でした。

困るのは、字が汚いことでも、量が多いことでもありません。疲れた頭で清書すると、書き間違えること。一度、別の患者さんのメモと取り違えて薬歴に書きかけ、ヒヤッとしたことがあります。幸い投薬前に気づきましたが、あれ以来「単純作業ほど機械に下ごしらえさせたい」と思うようになりました。

そこで試したのがClaude Codeです。AIに走り書きを清書させ、在庫の棚卸し表から発注候補を拾わせる。最終チェックは僕がやる。この分担にしてから、閉局後の事務作業がだいぶ軽くなりました。今日はその頼み方を、薬剤師・事務の人が今日から真似できる形でまとめます。

この記事の要点

  • Claude Codeは「文字でできたファイル」を日本語の指示で整える道具。服薬指導メモの清書、在庫表の整理、発注候補の抽出といった下ごしらえに向く。
  • 任せるのは「整形・並べ替え・抜き出し」まで。薬学的な判断、相互作用の確認、最終的な発注数の決定は薬剤師が必ず自分でやる。
  • 個人情報はそのまま渡さない。患者名は記号に置き換える、社内の閉じた環境で使う、という前提を最初に決める。
  • 雛形プロンプトと検証スクリプトを用意したので、コピペして自分の薬局の様式に合わせるだけで動かせる。
  • 体感では、メモ清書と発注リスト作りで1日あたり30〜60分の事務時間が浮く。

調剤薬局のどこに時間が溶けているか

まず読者像をはっきりさせます。この記事が役に立つのは、こんな現場です。

  • 1日40〜120枚の処方箋をさばく、薬剤師2〜4名規模の保険薬局
  • 薬歴入力と在庫管理を、薬剤師と医療事務が分担している
  • レセコンや薬歴システムはあるが、「メモの清書」「棚卸し集計」は手作業が残っている

調剤薬局の一日を業務フローで並べると、時間が溶ける場所が見えてきます。

工程主な作業手戻りが起きやすい点
受付・処方監査処方箋確認、疑義照会後で薬歴に書く内容のメモ取り
調剤・監査ピッキング、鑑査在庫切れに気づくのが投薬直前
投薬・服薬指導患者対応、指導内容の口頭確認走り書きメモの一時保管
薬歴入力メモを薬歴に清書字の判読、患者の取り違え
在庫・発注棚卸し、発注数の決定Excel転記ミス、発注漏れ

太字にしたいくらい多いのが、最後の「薬歴入力」と「在庫・発注」です。どちらも頭を使う判断は一部で、残りは転記・整形・並べ替えという単純作業。ここがClaude Codeの出番です。

Claude Codeそのものが初めての人は、先に 非エンジニアのための始め方Claude Code入門ガイド に目を通すと、この先の手順がすっと入ります。

Use case 1:走り書きの服薬指導メモを薬歴の体裁に整える

口頭で確認した内容を箇条書きで殴り書きしておき、それをClaude Codeに渡して薬歴の体裁に整形させます。SOAP形式(S=患者の訴え、O=客観的所見、A=評価、P=計画)に並べ替えてもらうと、清書がぐっと速くなります。

頼むときのコツは、患者名を渡さないこと。メモの段階で「患者A」「患者B」と記号にしておきます。

清書させたいメモの例はこんな感じです。

患者A 60代女性
アムロジピン5mg 継続
朝のみ飲み忘れ多い 本人いわく出勤前バタバタ
お薬カレンダー提案 → 次回反応みる
血圧 家庭測定値 上が140台と

このメモにつけるプロンプト雛形が次です。---ここから--- の下に自分のメモを貼るだけで動きます。

あなたは調剤薬局の薬歴記載を手伝うアシスタントです。
以下の走り書きメモを、SOAP形式の薬歴ドラフトに整形してください。

ルール:
- S/O/A/P の4見出しに振り分ける。判断に迷う情報はAに置き、末尾に「(要確認)」を付ける。
- メモにない情報を創作しない。薬学的な評価や提案は追記しない。
- 患者名・生年月日・電話番号など個人を特定できる情報があれば伏字「[個人情報]」にする。
- 最後に「薬剤師が確認すべき点」を箇条書きで3つまで挙げる。

---ここから---
(ここに走り書きメモを貼る)

ポイントは「メモにない情報を創作しない」と明記すること。これを入れないと、AIは親切心で「降圧目標は130未満が望ましい」のような一般論を足してきます。薬歴は事実の記録なので、勝手な追記は邪魔になります。

出てきたドラフトは、薬剤師が読んで、薬学的な評価を自分の言葉で書き足してから薬歴システムに転記する。この「下ごしらえはAI、判断は人」の線引きを崩さないのが肝心です。

Use case 2:棚卸し表から発注候補だけを抜き出す

在庫管理でしんどいのは、棚卸しした数字を眺めて「どれが減ってきたか」を目視で拾う作業です。これはClaude Codeに任せると速い。

棚卸しのCSV(在庫表)を用意します。患者情報は一切含まれないので、こちらは個人情報の心配が薄く、扱いやすい題材です。

医薬品名,規格,在庫数,1日平均使用量,発注点,メーカー
アムロジピンOD錠,5mg,180,22,150,A社
ロキソプロフェン錠,60mg,95,40,200,B社
レバミピド錠,100mg,420,18,150,C社
酸化マグネシウム錠,330mg,60,35,150,D社

このCSVに添えるプロンプト雛形です。

あなたは調剤薬局の在庫管理を手伝うアシスタントです。
次のCSVの在庫表を読み、発注候補を表で出してください。

判定ルール:
- 「在庫数 ÷ 1日平均使用量」で残り日数を計算し、小数第1位まで表示する。
- 在庫数が発注点を下回っている品目に「要発注」、残り日数が5日未満の品目に「至急」と印を付ける。
- 残り日数が短い順に並べる。
- 推奨発注数は計算しない。最終的な数量は薬剤師が決めるため、判断材料の提示にとどめる。

出力は「医薬品名 / 規格 / 残り日数 / 状態 / メーカー」の表だけにする。

ここでも「推奨発注数は計算しない」と釘を刺しています。発注数は、納期・最小発注単位・キャンペーン・季節要因で変わるので、AIに数字を出させると「それっぽいけど現場に合わない数」が一人歩きします。AIは候補の抽出と並べ替えまで、決定は人。これを守ります。

Use case 3:発注リストの抜け漏れを検証スクリプトで機械チェックする

AIに整形させた発注候補を、最後にプログラムで二重チェックします。人間の目だけに頼ると、忙しい日に必ず見落とすからです。

次のスクリプトは、棚卸しCSVを読み込み、発注点を割っている品目を機械的に洗い出します。Node.jsがあれば動きます。AIの出力と突き合わせて、拾い漏れがないかを確かめる用途です。

// check-stock.mjs : 棚卸しCSVから発注すべき品目を機械的に抽出する
import { readFile } from "node:fs/promises";

const csv = await readFile("./stock.csv", "utf8");
const [header, ...rows] = csv.trim().split(/\r?\n/);
const cols = header.split(",");

const idx = (name) => cols.indexOf(name);
const iName = idx("医薬品名");
const iStock = idx("在庫数");
const iUse = idx("1日平均使用量");
const iPoint = idx("発注点");

const alerts = [];
for (const line of rows) {
  const c = line.split(",");
  const name = c[iName];
  const stock = Number(c[iStock]);
  const use = Number(c[iUse]);
  const point = Number(c[iPoint]);

  // 数値が壊れている行は飛ばさず警告する(転記ミスの発見が目的)
  if ([stock, use, point].some((n) => Number.isNaN(n))) {
    alerts.push(`${name}: 数値が読めません。CSVを確認してください`);
    continue;
  }

  const daysLeft = use > 0 ? (stock / use).toFixed(1) : "∞";
  if (stock < point) {
    const urgent = use > 0 && stock / use < 5 ? "【至急】" : "【要発注】";
    alerts.push(`${urgent} ${name}: 在庫${stock} / 残り${daysLeft}日`);
  }
}

if (alerts.length === 0) {
  console.log("発注点を割っている品目はありません。");
} else {
  console.log("発注を検討すべき品目:");
  alerts.forEach((a) => console.log(" - " + a));
}

棚卸しCSVを stock.csv という名前で同じフォルダに置き、こう実行します。

node check-stock.mjs

このスクリプトの値打ちは、計算の速さではありません。数値が壊れている行を黙って飛ばさず警告するところです。在庫数の桁を打ち間違える転記ミスは現場でよく起きますが、これがあると「12」が「1200」になっている行を機械が拾ってくれます。AIの整形結果とこのスクリプトの出力、両方が一致したものだけを発注リストに採用する、という二段構えにすると安心です。

スクリプトを自分の薬局の様式に育てたくなったら、プロンプト設計の応用生産性を上げる小技 が参考になります。

AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲

線引きを一覧にしておきます。これを最初に決めておくと、現場で迷いません。

作業Claude Codeに任せてよい人(薬剤師)が必ず判断する
服薬指導メモ体裁の整形、SOAPへの並べ替え薬学的評価、指導方針の決定
相互作用・併用該当しそうな項目の一覧化相互作用の判断、疑義照会の要否
在庫表残り日数の計算、候補の抽出発注数・発注先・タイミングの決定
文書作成案内文・掲示物の下書き最終的な文面の責任、掲示の可否

迷ったときの判断基準はシンプルです。間違えたら患者の安全に関わることは、全部人がやる。整形・並べ替え・抜き出しのような、間違えても元データを見れば気づけることだけAIに任せる。この一線さえ守れば、AIは安全な下働きになります。

個人情報・セキュリティで外せない注意点

調剤薬局は要配慮個人情報のかたまりです。ここは慎重すぎるくらいでちょうどいい。

  • 患者を特定できる情報は渡さない。 名前・生年月日・保険者番号・電話番号は、メモの段階で「患者A」「[個人情報]」に置き換える。整形後に人間が実名へ戻す。
  • 入力データの扱いを確認する。 業務利用では、入力内容がモデルの学習に使われない契約形態・設定を選ぶ。個人で試す前に、自社のルールと利用規約を必ず確認する。判断に迷うなら管理薬剤師や情報管理の担当に相談してから使う。
  • 在庫CSVは患者情報を含めない。 在庫表は患者と無関係なので扱いやすい。逆に言えば、薬歴系のデータと在庫データのファイルを混ぜないことが事故防止になる。
  • 出力は薬歴システムに直接つながない。 AIの出力は必ず人が読んでから転記する。自動で本番システムへ書き込む連携は、最初は作らない。

公的なガイドラインも一度目を通しておくと安心です。厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインが、医療現場での情報の扱いの基準になります。

導入前と後で何が変わったか、ROIの目安

数字は薬局の規模で変わるので、あくまで僕の体感の概算です。

  • 服薬指導メモの清書:1件3分の清書が、整形ドラフトを直す方式で1件1分に。1日20件なら、約40分の短縮。
  • 発注候補の洗い出し:棚卸し後の目視チェック20分が、抽出+検証スクリプトで5分前後に。約15分の短縮。
  • 合わせて1日およそ30〜60分。月20日稼働なら、月10〜20時間ぶんの事務時間が浮く計算です。

浮いた時間で何をするかが本番です。僕の場合は、その時間を在庫の発注精度の見直しと、服薬指導の質を上げる準備に回しました。事務を削ること自体より、判断に使える時間が増えたことが大きかったです。

導入の段取りやチームへの広げ方は CLAUDE.mdの書き方 にまとめた「ルールをファイルに書いて共有する」考え方がそのまま使えます。薬局の様式や禁止事項をファイルに書いておくと、誰が頼んでも同じ品質の下書きが返ってきます。

薬局全体で運用ルールを整えたい、個人情報の扱いも含めて安全に始めたい、という段階なら、現場に合わせた導入研修・相談で一緒に設計するのが近道です。複数店舗への横展開や、スタッフ向けの手順づくりまでまとめて相談できます。

よくある質問

Q. 薬歴の内容をAIに入れて、法令上だいじょうぶですか。 A. 患者を特定できる情報を含めたまま外部サービスへ送るのは避けてください。記号化したメモを整形させ、実名は人が戻す運用なら、個人情報を外に出さずに済みます。最終的な可否は自社の規程と利用規約で確認してください。

Q. レセコンや薬歴システムと直接つなげますか。 A. つなげますが、最初はやめておくことをおすすめします。AIの出力を人が確認してから手で転記する方式が、いちばん事故が少ないです。慣れて、止まる仕組みを用意できてから自動化を検討します。

Q. ITに詳しくない事務スタッフでも使えますか。 A. 使えます。やることは日本語でお願いするだけです。検証スクリプトは最初に一度設定すれば、あとは「node コマンドを打つ」だけで回せます。

Q. 発注数まで出してくれませんか。 A. 技術的には出せますが、おすすめしません。発注数は納期・最小単位・季節要因が絡むので、候補の提示までに留め、数量は薬剤師が決めてください。

実際に試した結果

自分の薬局のメモ20件と、在庫表1枚で1週間試しました。確かめたかったのは「事故らずに楽になるか」の一点です。

服薬指導メモの整形は、SOAPへの振り分けがかなり正確でした。迷う情報をAに寄せて「(要確認)」を付ける指示が効いて、僕がチェックすべき箇所が一目で分かるようになりました。一方で、指示を緩めた回は案の定、一般論の追記が混ざりました。「創作しない」の一文がいかに大事か、身をもって確認できました。

在庫は、検証スクリプトが効きました。AIが抽出した発注候補と突き合わせたら、桁の打ち間違いが1件見つかったんです。在庫数を「45」と打つべきところを「450」にしていた行で、AIもスクリプトも「在庫過多で発注不要」と判定していました。原因は元データの転記ミス。AIの賢さより、壊れた数字を見逃さない仕組みのほうが現場では効く、と改めて思いました。

結論として、メモ清書と発注候補の下ごしらえは安心して任せられる、というのが今の実感です。判断は人、下働きはAI。この分担を崩さなければ、調剤薬局の事務は確実に軽くなります。

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Masa

この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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