居酒屋の予約電話マニュアルと多言語メニューをClaude Codeで作る実務手順
居酒屋の店長向け。予約電話の対応マニュアルと外国人客の多言語メニューを、Claude Codeと生成AIで短時間に整える手順を、プロンプト雛形と検証スクリプト付きで紹介。
金曜の19時、店は満席。そこへ予約の電話が鳴る。受話器を取ったのは入ったばかりのバイトの子で、声が固まっている。
「えっと、4名様ですね…あ、コースは…すみません、店長代わります」
僕がフロアから走って電話口に着いた頃には、お客さんの声が少しイラついている。背後では「すみませーん!」の声。注文も配膳も止まっている。電話1本のために、ホール全体が数十秒固まったわけです。
しかもその夜は外国人の二人組が来店していて、英語メニューがない。指差しと身振りで乗り切ったけど、アレルギーを聞かれて答えに詰まった。後で「卵が入っていた」とクレームにならなかったのは、ただ運が良かっただけです。
予約電話の応対も、多言語メニューも、「いつか整える」と言い続けて1年が過ぎる。紙に書いても更新されず、バイトの誰も見ない。この記事は、そこを生成AI、特にClaude Codeで1日で形にする話です。
この記事の要点
- 予約電話の対応マニュアルを、よくある会話の流れごとにテンプレ化し、新人がその場で読める形にする
- 日本語メニューから英語・中国語・韓国語のメニューを下訳まで一気に作る
- アレルギーや個人情報など、AIに任せず人が必ず確認する線引きを決める
- コピペで使えるプロンプト雛形と、メニューの翻訳漏れを見つける検証スクリプトを用意する
- 導入の手間は半日〜1日、更新はその後1回10分。紙の作り直し地獄から抜ける
居酒屋の現場で何が起きているか
まず読者像をはっきりさせます。この記事が役に立つのは、席数20〜50くらいの個人経営または小規模チェーンの居酒屋店長。スタッフの半分以上がアルバイトで、入れ替わりが多い。インバウンドの客がじわじわ増えていて、英語メニューの問い合わせが月に何度かある。そんなお店です。
居酒屋の予約まわりの業務フローを書き出すと、だいたいこうなります。
- 電話が鳴る → 誰かが手を止めて出る
- 日付・時間・人数・コースの有無・席の希望を聞く
- 予約台帳(紙かアプリ)に書く
- アレルギーや苦手な食材があれば確認する
- 当日の流れ(お通し、ラストオーダー時刻)を一言伝える
この5ステップ、ベテランなら30秒。でも新人は2番でつまずき、4番を忘れ、5番をすっ飛ばす。属人化しているから、教えるのにも時間がかかる。
メニュー側はもっと放置されがちです。季節で品書きが変わるのに、英語版を作る時間がない。翻訳アプリで都度しのぐから、「親子丼」が毎回違う英語になる。外国人客が増えているのに、ここだけ昭和のまま止まっています。
よくある手戻り・困りごと
- 新人が予約を取り違える(時間と人数の聞き間違い)。後で電話して謝るはめになる
- アレルギー確認を忘れ、提供後に発覚。最悪は救急沙汰になる
- 英語メニューを業者に頼むと数万円かかるうえ、品書きが変わると作り直し
- 翻訳アプリの直訳が珍妙で、外国人客に通じない。「お通し」が “Pass” になっていたりする
Use case 1:予約電話の対応マニュアルをテンプレ化する
最初に手をつけるべきはここです。電話応対は型が決まっているので、AIと一番相性がいい。
やることは、よくある会話パターンを洗い出して、新人が読み上げるだけで成立するスクリプトに落とすこと。Claude Codeに「うちの店の条件」を渡せば、抜けのないマニュアルを一気に書いてくれます。
下のプロンプトをそのまま使えます。カッコの中だけ自分の店に合わせて書き換えてください。
あなたは居酒屋の接客教育担当です。新人アルバイトが電話応対で読み上げられる
予約対応マニュアルを作ってください。
【店の条件】
- 店名: (居酒屋まさ)
- 席数: (40席)、個室: (2部屋・各6名まで)
- 営業時間: (17:00-24:00、ラストオーダー23:00)
- コース: (3500円/4500円の2種類、要前日予約)
- お通し: (1人400円、必ず案内する)
- 駐車場: (なし、近隣コインP案内)
【作ってほしいもの】
1. 電話を取ったときの第一声テンプレ
2. 聞き取る項目のチェックリスト(日付/時間/人数/コース有無/個室希望/連絡先)
3. よくある質問への回答例(駐車場、子連れ可否、アレルギー対応、当日キャンセル)
4. 復唱して確認するための締めの言葉
出力は新人が読み上げやすい口語の日本語で。専門用語は使わない。
返ってきたマニュアルは、A4一枚にまとめて電話の横に貼っておく。これだけで、冒頭の「店長代わります」が激減します。
聞き取り項目は、紙のチェックリストにしておくと取りこぼしが減ります。最低限こうです。
| 項目 | 聞く理由 | 抜けたときの事故 |
|---|---|---|
| 日付・時間 | 当然 | ダブルブッキング |
| 人数 | 席の確保 | 席が足りない/空きすぎ |
| コースの有無 | 仕込み量に直結 | 当日に材料切れ |
| アレルギー | 安全に直結 | 提供事故・クレーム |
| 連絡先 | 当日確認用 | 無断キャンセルの連絡不能 |
Use case 2:日本語メニューから多言語メニューを作る
次は多言語メニュー。これがAIで一番ラクになる部分です。
日本語の品書きを渡して、英語・中国語・韓国語の3言語に訳してもらう。料理名だけでなく、簡単な説明文も付けると外国人客が安心します。「もつ煮込み」を “Motsu Nikomi” とだけ書いても通じませんが、“Simmered pork offal in miso broth” と一言添えれば伝わる。
プロンプトはこうです。
次の居酒屋メニューを英語・中国語(簡体字)・韓国語に翻訳してください。
【ルール】
- 料理名はローマ字読みも残し、その横に短い英語説明を付ける
例: Motsu Nikomi (simmered pork offal in miso)
- 価格はそのまま数字を残す(税込/税抜の表記も変えない)
- アレルギー注意が必要な品(卵・乳・小麦・そば・落花生・えび・かに)には
各言語で注意マークの説明を付ける
- 直訳でなく、現地のメニューで実際に使われる自然な言い回しにする
- 出力は料理名ごとに「日本語 / 英語 / 中国語 / 韓国語」の表形式で
【メニュー】
- 枝豆 480円
- だし巻き卵 580円(卵)
- もつ煮込み 680円
- 鶏の唐揚げ 680円(小麦)
- 海老マヨ 780円(えび・卵)
ここで大事なのは、アレルギー表示を翻訳に任せきりにしないこと。AIは “egg” を付け忘れることがあります。だから人の目で必ず突き合わせる。次の検証スクリプトがその突き合わせを助けます。
AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲
ここを曖昧にすると事故ります。線引きを表で決めておきましょう。
| 作業 | AIに任せてよい | 人が必ず確認 |
|---|---|---|
| 電話マニュアルの文面作成 | ○ 下書きまで | 自店の運用と合うか |
| メニューの翻訳・説明文 | ○ 下訳まで | 料理名・価格の正確さ |
| アレルギー表示 | △ 候補出しのみ | ◎ 必ず人が最終確認 |
| 予約台帳への記入 | × | ◎ 人が記入 |
| 個人情報(連絡先)の扱い | × | ◎ 人が管理 |
覚え方は単純です。間違えたら謝って済む作業はAIに下書きさせる。間違えたら健康や信用に関わる作業は人が決める。 アレルギーと個人情報、この2つだけは絶対に丸投げしない。
コピペで使える検証スクリプト
翻訳メニューを目視だけで確認すると、品数が多いと必ず見落とします。そこで「日本語にアレルギー注記があるのに、英語側に対応する単語が無い品」を機械的に洗い出すスクリプトを用意しました。Node.jsがあれば動きます。
check-menu.mjs として保存し、node check-menu.mjs で実行します。
// 日本語のアレルギー表記と、英訳に含めるべき英単語の対応
const allergenMap = {
"卵": "egg",
"乳": "milk",
"小麦": "wheat",
"そば": "buckwheat",
"えび": "shrimp",
"かに": "crab",
};
// 自分のメニューをここに貼る(jp=日本語行, en=英語訳)
const menu = [
{ jp: "だし巻き卵 580円(卵)", en: "Dashimaki Tamago (rolled egg omelet) 580yen" },
{ jp: "鶏の唐揚げ 680円(小麦)", en: "Karaage (fried chicken) 680yen" },
{ jp: "海老マヨ 780円(えび・卵)", en: "Ebi Mayo (shrimp with mayo) 780yen" },
];
let problems = 0;
for (const item of menu) {
for (const [jp, en] of Object.entries(allergenMap)) {
const needsAllergen = item.jp.includes(jp);
const hasAllergen = item.en.toLowerCase().includes(en);
if (needsAllergen && !hasAllergen) {
console.log(`要確認: 「${item.jp}」に ${jp}(${en}) の表示が英訳に見当たりません`);
problems++;
}
}
}
if (problems === 0) {
console.log("OK: アレルギー表示の抜けは見つかりませんでした");
} else {
console.log(`\n${problems}件、人の目で確認してください`);
}
上の例だと「鶏の唐揚げ」に “wheat” が無いので、ちゃんと警告が出ます。完璧な検査ではありませんが、抜けの当たりを付ける門番としては十分。最後は必ず人が見る、という前提で使ってください。
導入前と後で何が変わるか
僕の感覚値ですが、変化はこのくらいです。
導入前は、予約電話1本にベテランが平均40秒、新人だと取り次ぎ込みで1分以上。1日20本なら、新人時間帯は20分以上が電話に消えていました。マニュアルを貼ってからは新人でも30〜40秒で完結し、店長の取り次ぎがほぼ消えました。
メニューは、業者に英語版を頼むと初回3〜5万円、季節更新のたびに追加費用。AIでの下訳+自分の確認なら、初回が半日、更新が1回10分程度。初期費用ほぼゼロ、更新が紙の作り直しから解放されるのが一番大きい。
ROIの目安をざっくり出すとこうです。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 電話1本の所要(新人) | 60秒+取り次ぎ | 35秒 |
| 英語メニュー初回 | 業者3〜5万円 | 半日の自作業 |
| メニュー更新 | 業者へ再依頼 | 10分 |
| アレルギー確認漏れ | たまに発生 | 検証スクリプトで激減 |
時給1200円のスタッフで電話を1日10分短縮できれば、月で約6000円。メニュー更新を年4回業者に出さずに済めば、それだけで数万円。導入コストはほぼ自分の時間だけなので、回収は早いです。
セキュリティと個人情報の注意点
便利だからと、何でもAIに貼り付けてはいけません。居酒屋でも個人情報は出ます。
- 予約客の名前・電話番号を生成AIに貼らない。 マニュアルの雛形作りには実在の顧客情報は不要です。サンプルは「山田様」「090-0000-0000」のような架空の値で作る
- アレルギー対応の最終判断は、必ず厨房と人が行う。AIの出力は下書きとして扱う
- 翻訳メニューを店外(印刷業者やSNS)に出す前に、価格と料理名を二人以上で確認する
- 無料の翻訳サービスに長文を貼ると、内容が学習に使われる場合がある。店の独自レシピや原価情報は入れない
このあたりの「何を渡してよくて、何を渡してはいけないか」は、プロジェクトのルールとしてまとめておくと迷いません。考え方はCLAUDE.mdのベストプラクティスが参考になります。
よくある質問
Q. ITに詳しくない店長でも使えますか。 A. 電話マニュアルとメニュー翻訳は、文章でお願いするだけなのでプログラミングは要りません。検証スクリプトだけはNode.jsが必要ですが、無くても目視確認で代用できます。まず非エンジニア向けの入り口から始めるのがおすすめです。
Q. 翻訳の精度は信用していいですか。 A. 料理名と説明文は概ね自然に訳されます。ただし価格・アレルギー・固有の調理法は必ず人が確認してください。AIは「もっともらしい間違い」をすることがあります。
Q. メニューが季節で変わります。毎回作り直し? A. 変わった品だけプロンプトに足して再生成すれば10分で済みます。全部作り直す必要はありません。
Q. 中国語や韓国語が正しいか、自分では判断できません。 A. アレルギー注記など命に関わる部分は、念のため翻訳に詳しい知人や有料サービスで一度チェックすると安心です。それ以外の説明文は多少の不自然さは許容範囲です。
Q. プロンプトをうまく書くコツはありますか。 A. 条件を箇条書きで具体的に渡すほど精度が上がります。書き方はプロンプトの基本にまとめてあります。
実際に試した結果
僕は実際に、架空の居酒屋メニュー15品でこの流れを通しで試しました。
電話マニュアルは、店の条件を箇条書きで渡すだけで、第一声からアレルギー確認、復唱までA4一枚に収まる形が一発で出てきました。直したのは、自店のラストオーダー時刻の言い回しくらい。ほぼそのまま使えるレベルです。
メニュー翻訳では、わざと「だし巻き卵(卵)」の英訳から “egg” を抜いた状態で検証スクリプトを回したところ、ちゃんと「要確認」と警告が出ました。逆に正しく訳した行は素通り。目視だと見落とす1件を、機械が確実に拾ってくれたのが収穫です。
一方で、AIが韓国語のアレルギー注記を1品だけ別の表現にしていたのは、スクリプトでは拾えませんでした。やはり命に関わる部分は人の最終確認が要る、という当たり前の結論に戻ります。
電話とメニュー、どちらも「ゼロから作る」のではなく「AIの下書きを人が直す」に変えるだけで、半日仕事が現実的な作業になりました。同じ要領で日々の業務を軽くしたい人は、生産性を上げる使い方もあわせてどうぞ。お店全体での導入や、スタッフ研修まで含めて相談したい場合は、研修・相談で具体的な進め方を一緒に設計できます。
参考までに、生成AIの仕組みや料金の前提はOpenAIの公式情報などの一次情報も確認しておくと、ツール選びの判断がぶれません。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
まずは無料PDFで基本コマンドと最初の使い方をまとめて確認してください。登録後はそのままテンプレート集や導入相談にも進めます。
スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
Claude Codeを仕事で使える形にしませんか?
まず無料PDFで基本を固め、繰り返し使う作業はGumroad教材へ、チーム導入や権限設計は導入相談へ進めます。
この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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