Use Cases (更新: 2026/6/7)

Terraform入門:state管理とplan/applyの違いを、事故らず覚える

Terraformのstate管理(リモートstate・ロック)とplan/applyの違いを、クラウド非依存のHCLとコピペで動く例で解説。module化とマルチクラウドの考え方、Claude Codeでの差分レビューまで。

Terraform入門:state管理とplan/applyの違いを、事故らず覚える

僕が初めてTerraformで本番を壊しかけたのは、terraform apply を「保存ボタンみたいなもの」だと思っていた日でした。

ローカルでちょっと書き換えて、緑色のログが流れて、よし反映された——その数分後に同僚から「DBのセキュリティグループ、消えてない?」と連絡が来ました。planを読まずにapplyしたら、for ループの書き換えが既存リソースを丸ごと作り直す(replace)扱いになっていたんです。手元のコードは正しかった。でも、コードと実環境のズレを記録した「state」を僕がまったく理解していなかった。

Terraformは賢いツールです。けれど賢さと安全は別物で、事故の9割は「stateとplanを軽く見たこと」から来ます。今日はそこを、専門用語をなるべく日本語に置き換えながら、転んでもケガしない順番で解説します。AWS専用のコードは書きません。**どのクラウドでも同じように効く「クラウド非依存のTerraform」**として進めます。

この記事の要点

  • Terraformは「あるべき姿」をHCLという設定言語で書くと、実環境をそこへ近づけてくれる道具。命令を1行ずつ書くシェルスクリプトとは発想が逆。
  • plan は変更の下見、apply は実行。planを読まずにapplyしない。これだけで事故の大半は防げる。
  • state(実環境とコードの対応表)はチームの共有資産。ローカルやGitに置かず、ロック付きのリモートに置く。
  • 似た設定の塊は module(再利用できる部品)にまとめる。env(dev/prod)はファイルで分け、stateの保存先も分ける。
  • providerを差し替えればAWS・Google Cloud・Azureを同じ書き方で扱える。Claude Codeはコード生成より「planの危ない差分を拾う相棒」として使うと強い。

Terraformって、要するに何をしている?

一言でいうと、Terraformは「願い事を書くと、その通りに環境を寄せてくれる」道具です。

普通のスクリプトは「VPCを作れ」「次にサブネットを作れ」と手順を並べます。Terraformは違って、vpc が1つ、subnet が2つ、ある状態 というゴールの絵を書くだけ。今の環境がその絵とどう違うかをTerraformが計算して、足りないものを作り、余ったものを消します。この「今と理想の差を埋める」考え方を宣言的(declarative)と呼びます。

ここで主役になるのがstateです。Terraformは「自分が作ったリソースは何で、どんなIDだったか」を terraform.tfstate という台帳に書き残します。次に走るとき、Terraformは台帳・実環境・コードの3つを見比べて差分を出す。だから台帳が壊れたり、人によって中身が違ったりすると、平気で「作り直し」や「二重作成」が起きます。冒頭の僕の事故も、要はこの台帳の読み方を知らなかっただけでした。

用語を先にならしておきます。

  • HCL: TerraformのためのDSL(設定専用の小さな言語)。{} で囲ってリソースを書く。
  • provider: AWSやGoogle Cloudなど、相手のAPIを叩くプラグイン。これを差し替えるとクラウドが変わる。
  • state: 実環境とコードの対応表。Terraformの記憶そのもの。
  • backend: stateの保存先。ローカルか、S3やGCSのようなリモートか。
  • module: 何度も使う設定の塊を部品化したもの。

plan と apply の違い(ここだけは絶対に外さない)

Terraformでいちばん大事な2語が planapply です。混同すると本番が燃えます。

terraform plan下見です。コードとstateと実環境を見比べて、「これからこういう変更をするよ」という予定表を出すだけ。何も実行しません。予定表には記号が付きます。

記号意味警戒度
+新規作成(create)
~その場で変更(update in place)
-削除(destroy)
-/+一度消して作り直す(replace)最高

terraform apply は、その予定表を実行します。-/+(replace)が出ているのに気づかずapplyすると、稼働中のDBやロードバランサーが一瞬消えて再作成される、なんてことが起きます。だから僕は、planを必ずファイルに保存して、それを目で読んでからapplyする癖をつけました。

# 1. 下見:予定表をファイル(tfplan)に保存する
terraform plan -out=tfplan

# 2. 人間が読む。-/+ や - が無いか目で確認する
terraform show -no-color tfplan

# 3. 「この予定表だけ」を実行する(planとapplyの間で環境が変わってもズレない)
terraform apply tfplan

ポイントは -out=tfplan です。これを付けると、applyが「今この瞬間に計算し直した変更」ではなく「さっき僕が確認した予定表そのもの」を実行してくれます。レビューした内容と実行内容が必ず一致する。CIで自動化するときも、この形が基本になります。

コピペで動く最小構成(クラウド非依存)

説明より動かすほうが早いです。クラウドの認証もお金もいらない、local(手元にファイルを作るだけ)と random(ランダム値を作るだけ)のproviderで、Terraformの一連の流れを体験してみましょう。Terraform本体だけ入っていれば動きます。

まず空のフォルダに main.tf を1つ置きます。

# main.tf — クラウド不要。手元でstateとplan/applyを体験する最小例
terraform {
  required_version = ">= 1.10.0"

  required_providers {
    random = {
      source  = "hashicorp/random"
      version = ">= 3.6"
    }
    local = {
      source  = "hashicorp/local"
      version = ">= 2.5"
    }
  }
}

# 変数:あとから -var で差し替えられる
variable "greeting" {
  type        = string
  description = "ファイルに書き込むあいさつ"
  default     = "hello terraform"
}

# ランダムな接尾辞(実クラウドの「一意な名前づくり」の練習)
resource "random_pet" "name" {
  length    = 2
  separator = "-"
}

# 手元にファイルを1つ作るだけのリソース
resource "local_file" "note" {
  filename = "${path.module}/output/${random_pet.name.id}.txt"
  content  = "${var.greeting}\n"
}

output "created_file" {
  value       = local_file.note.filename
  description = "作成したファイルのパス"
}

あとは下の順で叩くだけです。Terraformが初めての人でも、この3コマンドで「初期化 → 下見 → 実行」の流れが体に入ります。

# providerをダウンロードして初期化する
terraform init

# 何が作られるか下見する(+ が2つ出るはず)
terraform plan -out=tfplan

# 予定表を実行する。output/ にファイルが1つできる
terraform apply tfplan

ここで terraform.tfstate というファイルがフォルダに生まれます。中を開くと、さっき作ったファイル名やランダム値が記録されています。これがstateの正体です。試しに greeting を変えてもう一度 terraform plan すると、Terraformが「ファイルの中身を ~(変更)するよ」と予定表を出してくれます。stateがあるから、Terraformは「何を前回作ったか」を覚えていられるわけです。片付けは terraform destroy で一発です。

state管理:チームで事故らないための置き場所

ここが本記事の核心です。stateは「ただのキャッシュ」ではなく、チームの共有記憶です。扱いを間違えると、2人が同時にapplyしてstateが壊れる、といった事故が起きます。

ローカルのstateには2つの致命的な弱点があります。

  1. 共有できない: あなたのPCにしかstate台帳が無いと、同僚のTerraformは「リソースが1つも無い」と勘違いして、同じVPCをもう1つ作ろうとします。
  2. ロックが無い: 2人が同時にapplyすると、台帳の書き込みがぶつかって壊れます。

だから本番では、stateをリモート(S3・GCS・Azure Blobなど)に置き、さらにロックをかけます。ロックは「誰かがapply中は、他の人を待たせる」鍵のことです。例としてAWSのS3 backendを挙げますが、考え方はどのクラウドでも同じです。

# backend.tf — stateをS3に置き、ロックをかける(クラウドが変わっても発想は同じ)
terraform {
  backend "s3" {
    bucket       = "your-tfstate-bucket"           # 事前に作っておく
    key          = "myapp/dev/terraform.tfstate"   # 環境ごとに分ける(後述)
    region       = "ap-northeast-1"
    encrypt      = true                            # stateを暗号化
    use_lockfile = true                            # S3ネイティブのロック
  }
}

use_lockfile = true がロックの肝です。以前はロック用にDynamoDBのテーブルを別途用意するのが定番でしたが、2026年6月時点のTerraform S3 backend公式ドキュメントでは、DynamoDBによるロックはdeprecated(非推奨・将来削除予定)になっています。新規に組むなら use_lockfile を使ってください。Google CloudならGCS backend、AzureならazurermのようにbackendはほぼAPI差分だけで差し替えられます。

stateを安全に保つコツを3つ。

  • stateにはIDだけでなく一部の属性値(時にパスワードらしき値)も入る。だからversioning(履歴保存)と暗号化を有効にし、アクセス権を最小に絞る。
  • stateをGitにコミットしない.gitignore*.tfstate* を必ず入れる。
  • stateを手で書き換えない。リソースを動かしたいときは terraform state mv、消したいだけなら terraform state rm のように専用コマンドを使う。

module化:似たコードのコピペをやめる

VPCを3環境ぶん手書きしていると、必ずどこかでコピペミスが起きます。そこで似た塊を module(部品)にまとめます。

考え方はシンプルで、関数に切り出すのと同じです。「入力(variable)を受け取り、リソースを作り、出力(output)を返す」フォルダを1つ用意し、それを呼び出す。下は完全にクラウド非依存な、local_file を量産するだけのmodule例です。仕組みだけ掴んでください。

# modules/notes/main.tf — 「メモファイルを量産する」部品
variable "names" {
  type        = list(string)
  description = "作るメモの名前リスト"
}

variable "body" {
  type        = string
  description = "各メモの中身"
}

# for_each で名前ごとに1ファイルずつ作る(順番に依存しないのがミソ)
resource "local_file" "memo" {
  for_each = toset(var.names)
  filename = "${path.module}/../../output/${each.key}.md"
  content  = "# ${each.key}\n\n${var.body}\n"
}

output "files" {
  value = [for f in local_file.memo : f.filename]
}

呼び出し側はこれだけです。

# main.tf から部品を呼ぶ
module "team_notes" {
  source = "./modules/notes"

  names = ["alice", "bob", "carol"]
  body  = "今日のタスクメモ"
}

ここで覚えてほしいのが for_each です。僕が冒頭で本番を壊しかけた原因は、リストのインデックス(count.index)でリソースを並べていたことでした。リストの途中に1要素足すと番号が全部ずれて、Terraformが「2番は別物になった」と判断し、replace(作り直し)の嵐になる。for_each と名前(キー)で管理すれば、要素を足しても既存リソースは動きません。moduleは「責務を1つに絞る」のが鉄則で、ネットワークの部品にDBやロードバランサーまで詰め込むと、少し直すだけで巨大なplanが出るようになります。

マルチクラウド:providerを差し替えるだけ

Terraformの強みは「クラウドに縛られない」ことです。同じHCLの書き方で、providerブロックを変えるだけで相手が変わります。

# AWSを使うとき
provider "aws" {
  region = "ap-northeast-1"
}

# Google Cloudを使うとき
provider "google" {
  project = "my-gcp-project"
  region  = "asia-northeast1"
}

# Azureを使うとき
provider "azurerm" {
  features {}
}

注意したいのは、リソースの「書き方」は共通でも「中身」はクラウドごとに違う点です。AWSの aws_s3_bucket とGoogle Cloudの google_storage_bucket は別物で、自動変換はされません。Terraformが共通化してくれるのは「plan/apply/state/moduleという作法」であって、各クラウドの仕様そのものではない。ここを誤解すると「Terraformなら一度書けばどこでも動く」と期待してハマります。

AWS固有のIaCをCloudFormationやCDK(AWS専用の道具)と比べたい人は、AWS CDK入門:CloudFormationとの違いと差分レビューを読むと住み分けが見えます。ざっくり言うと、AWSしか使わないならCDK/CloudFormation、複数クラウドや将来の乗り換えを見据えるならTerraform、というのが僕の使い分けです。AWSの権限設計だけ深掘りしたいならClaude Code × AWS IAMガイドもあわせてどうぞ。

Claude CodeをTerraformの相棒にする

Terraformは便利ですが、HCLは手で書くと地味に疲れます。ここでClaude Codeに手伝ってもらうのですが、コツは「生成させる」より「planの危ない差分を一緒に読ませる」ことです。

依頼は短くても、触ってよい範囲・禁止事項・検証コマンドまで添えます。

claude -p "
Terraformを書いてください。クラウドはAWSではなくGoogle Cloud(provider: google)です。
対象は Cloud Storage bucket を作る module だけ。既存ファイルは削除しない。

要件:
- Terraform 1.10以降
- module は modules/bucket に分ける
- dev/prod は tfvars で分離し、backend key も分ける
- secrets や鍵を tfvars に書かない
- 仕上げに terraform fmt -recursive と terraform validate の手順も出す
- plan に destroy / replace が出たら apply しない前提で、レビュー観点を箇条書きにする
"

そしてplanを保存したら、その予定表をClaude Codeに読ませて「最悪のケース」を拾わせます。AIは便利ですが、最後の安全弁は人間です。

terraform plan -out=tfplan
terraform show -no-color tfplan > plan.txt

claude -p "
plan.txt をレビューしてください。
destroy / replace / force replacement / 権限の拡大 / 公開設定の変更 / state key の変更を最優先で指摘。
削除や作り直しが含まれる場合は『承認しない』と明言してください。
安全に進めるための確認質問を箇条書きで出してください。
"

CIに組み込むなら、PRごとに fmt -check → validate → plan を回し、planの結果をレビュー材料にします。設計の全体像はClaude Code CI/CD設定ガイド、鍵の扱いはClaude Codeで始めるシークレット管理が参考になります。Claude Code側の作法はClaude Code公式ドキュメント、module設計の原典はTerraform Modules公式ドキュメントを見てください。

僕がやらかしたTerraformの失敗3つ

正直に書きます。最初の数ヶ月は事故だらけでした。

ひとつ目は、planを読まずにapplyしたこと。冒頭のセキュリティグループ消失がこれです。緑のログ=成功、ではありません。緑のログは「予定表どおり実行した」だけで、その予定表が間違っていたら忠実に間違いを実行します。今は -out=tfplan で保存して必ず目を通します。

ふたつ目は、stateをローカルに置いたまま2人で作業したこと。僕のPCのstateと同僚のstateがズレて、同じリソースが二重に作られました。リモートstate+ロックに移したら、この手の事故はぴたりと止まりました。

みっつ目は、count でリソースを並べたこと。リストの真ん中に1つ足しただけで番号が全部ずれて、無関係なリソースまでreplace判定。for_each と名前キーに直してからは、要素の増減で既存が壊れなくなりました。

よくある質問

Q. terraform planterraform apply の違いは? planは「これからこう変えるよ」という下見(予定表)で、何も実行しません。applyがその予定表を実際に実行します。terraform plan -out=tfplan で保存し、中身を確認してから terraform apply tfplan する流れが安全です。

Q. state(tfstate)はGitにコミットしてもいい? だめです。中にIDや一部の機微な値が入るうえ、複数人で更新するとすぐ壊れます。.gitignore*.tfstate* を入れ、S3やGCSなどのリモートに、ロックと暗号化を付けて置いてください。

Q. リモートstateのロックって何のため? 2人が同時に apply してstateが壊れるのを防ぐためです。誰かが実行中は他の人を待たせます。S3 backendなら use_lockfile = true で有効になり、以前必要だったDynamoDBは非推奨になりました。

Q. TerraformとCloudFormation/CDKはどう使い分ける? AWSだけで完結し、AWSの最新機能をすぐ使いたいならCloudFormation/CDK。複数クラウドや将来の乗り換え、ツールの統一を重視するならTerraform、というのが基本線です。詳しくはAWS CDK入門の記事を参照してください。

Q. dev と prod はどう分ける? 変数ファイルを envs/dev.tfvarsenvs/prod.tfvars に分け、backendのstate keyも myapp/dev/...myapp/prod/... のように分けます。同じstate keyを共有すると、devの変更がprodに紛れ込む典型的な事故になります。

実際に試した結果

この記事の最小構成(random + local)は、クラウド認証なしで init → plan → apply まで数十秒で通りました。greeting を変えて再planすると、ちゃんと ~(変更)の予定表が出て、stateが「前回の記憶」を持っていることを目で確認できます。

そして実クラウドでの肌感覚はこうです。Terraform自体は驚くほど素直で、事故は道具ではなく僕の運用から来ていました。planを必ず保存して読む、stateはロック付きリモートに置く、for_each で名前管理する。この3つを徹底しただけで、ヒヤッとする回数が激減しました。Claude Codeはコードを書かせる相手というより、planの destroyreplace を最優先で拾わせる「もう一組の目」として置くのがいちばん効きます。

賢いツールを使いこなそうとするより、転んでもケガしない順番を先に決める。Terraformでも結局これがいちばん速い、というのが今の実感です。チームでレビュー基準を整えたいなら教材一覧もどうぞ。まずは上の最小構成を手元で動かして、planapply の違いを体で覚えるところから始めてみてください。

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Masa

この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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