Getting Started (更新: 2026/6/7)

既存リポジトリにClaude Codeを入れる初日に、壊さず最初の1タスクを選ぶ手順

他人が書いた巨大コードにClaude Codeを入れる初日。読む順番、触らせない場所、最初の小さな仕事、確認コマンドを30分で1枚にまとめる手順を紹介します。

既存リポジトリにClaude Codeを入れる初日に、壊さず最初の1タスクを選ぶ手順

転職して3日目、僕は150ファイルくらいある決済まわりのコードを渡されました。ドキュメントはほぼ無し。誰に聞いても「動いてるからあまり触りたくない」と言う。とりあえずClaude Codeに「このリポジトリを把握して、気になるところを直しといて」とお願いしてみたんです。

10分後、Claudeは自信たっぷりに「20ファイルを整理しました」と返してきました。差分を開いて血の気が引きました。マイグレーション用のSQLファイルの整形、.env.example の並べ替え、そして決済リトライの待ち時間を勝手に「最適化」して半分にしていたんです。動くコードではありました。でも本番に出ていたら、二重課金の問い合わせで電話が鳴り続けていたはずです。

問題はClaudeの賢さじゃありません。初日に渡した範囲が広すぎただけ。他人の巨大コードを安全に任せるには、賢いAIを探す前に「読む順番・触らせない場所・最初の小さな仕事・確認方法」を30分で決めておく。これだけで初日の事故はほぼ消えます。今日はその30分の中身を、コピペできる形でまとめます。

この記事の要点

  • 既存コードの初日は「全部見て直して」が一番危ない。範囲が曖昧なまま走り出すから。
  • 最初の30分で作るのは設計書ではなく、最初の1タスクを安全に選ぶための1枚のメモ
  • メモに書くのは4つだけ。読む順番、触らせない場所、最初の小さな仕事、終わったと判断する確認コマンド。
  • 最初の仕事は「戻しやすい場所」に限定する。文章、ボタンの文言、テスト名あたりがちょうどいい。
  • AIに任せるのは「調べる・下書きする」まで。本番DB・課金・削除・公開ボタンは人が押す。

なぜ初日の最初の指示でつまずくのか

Claude Codeは速いです。速いからこそ、最初に渡す情報が広いと、どうでもいい差分まで全力で作ってきます。

人間の新人なら「ここ触っていいんですか」と聞きます。AIは聞きません。親切心で範囲を広げます。「整理して」と言えば、本当に隅々まで整理する。マイグレーションの整形も、課金リトライの「最適化」も、本人は良かれと思ってやっています。

だから初日にやることは、コードを読み込むことでも、立派な改善計画を立てることでもありません。境界を引くことです。どこまでなら勝手にやっていいか、どこからは人に聞くか。この線を先に引いておくと、Claudeへの依頼が「自由に考えて」から「この範囲で証拠を残して」に変わります。線を引くのに必要な時間は30分。コードを全部理解する必要はありません。

30分で作る、初日の1枚メモ

紙でもメモ帳でも構いません。次の4項目だけ埋めます。順番にも意味があります。

  1. 読む順番を狭く決める。 いきなり全ファイルではなく、READMEpackage.json だけ。これでどの言語か、どう起動するか、どんな道具を使っているかがわかります。次に主要な画面やルートを2〜3個。それで十分です。
  2. 触らせない場所を書く。 課金、ログイン認証、環境変数、データベースのマイグレーション。ここは「読んでもいいけど書き換えるな」と明示します。書かないと、Claudeはここを普通の編集対象として扱います。
  3. 最初の小さな仕事を1つ選ぶ。 戻しやすい場所に限定します。記事の文末の文言、ボタンのラベル、わかりにくいテスト名。失敗してもすぐ元に戻せるものです。
  4. 終わったと判断する確認方法を決める。 ビルドが通るか、差分が想定の範囲か、画面が崩れていないか。雰囲気ではなく、コマンドの結果で判断します。

この4つを埋めると、初日の不安の大半が消えます。なぜなら「Claudeが何をしでかすか」ではなく「Claudeにどこまで任せたか」を自分が把握しているからです。

AIに任せる範囲と、人が判断する範囲

線引きを言葉にしておくと、毎回迷いません。僕が使っている分け方はこうです。

やることClaudeに任せる人が判断する
コードを読んで構造をまとめる○ 下書きを作らせる最終的な理解は自分で確認
触らせない場所を提案する○ 候補を挙げさせる課金・認証は必ず人が確定
文章やラベルの修正○ 任せてよい差分を見て承認
本番DBへの書き込み×人が手で実行
削除・公開・課金まわり×人がボタンを押す

ポイントは、危ない操作を最初から全部「人に聞く」側に置くことです。安全だと確認できた操作だけ、あとから自動に格上げします。逆はやらない。最初に広く許して、事故ってから締めるのは、順番が逆です。

この考え方をもっと丁寧に知りたい人は、Claude Code はじめの一歩ガイドClaude Code 最初の30分チェックリスト も合わせて読むと、初日の動きがつながります。

コピペで使える依頼文の雛形

まず、いきなり編集させないのがコツです。最初は「読んで、表にまとめるだけ」を頼みます。

このリポジトリを初めて触ります。まだ何も編集しないでください。
次の順で読み、結果を表で返してください。

1. README と package.json を読み、使っている言語・起動コマンド・主要な依存を挙げる
2. 触ると危ない場所(課金・認証・環境変数・DBマイグレーション)を、ファイルパスつきで列挙する
3. 戻しやすい「最初の小さな仕事」の候補を3つ、理由つきで挙げる
4. 各候補について、完了を確認するコマンド(ビルド・差分確認など)を書く

繰り返します。この段階では1文字も編集しないでください。

表が返ってきたら、自分の目で「触らせない場所」が抜けていないか確認します。抜けていたら付け足して、次にようやく1タスクだけ依頼します。

さきほどの候補のうち、◯◯(記事末尾の文言修正)だけ進めてください。
課金・認証・環境変数・マイグレーションには一切触れないこと。
編集後に `npm run build` を実行し、差分を `git diff --stat` で見せてください。
壊れていたら、原因と直し方を1行で説明してから止まってください。

CLAUDE.md に「触らせない場所」を最初から書いておくと、毎回この注意書きを貼らずに済みます。書き方は CLAUDE.md ベストプラクティス にまとめてあります。

チェックを機械にやらせる小さなコード

「ちゃんと準備できてから渡す」を人の記憶に頼ると、忙しい日に必ず抜けます。なので、1枚メモが最低限そろっているかを機械に判定させます。次のコードはNode.jsでそのまま動きます。

// 初日の1枚メモが「Claudeに渡せる状態」かを機械チェックする
const repoMap = {
  goal: "戻しやすい最初の1タスクを1つ選ぶ",
  readFirst: ["README.md", "package.json", "src/routes/"],
  protectedAreas: [".env", "billing/", "migrations/", "wrangler.toml"],
  firstTask: "記事末尾の文言を直す(決済コードには触らない)",
  proofCommands: ["npm run build", "git diff --stat"],
};

function isReady(map) {
  const reasons = [];
  if (map.readFirst.length < 2) reasons.push("読む順番が狭すぎる/未設定");
  if (map.protectedAreas.length === 0) reasons.push("触らせない場所が空");
  if (!map.proofCommands.some((c) => c.includes("build"))) {
    reasons.push("ビルド確認コマンドが無い");
  }
  if (!map.firstTask) reasons.push("最初の1タスクが未選定");
  return { ready: reasons.length === 0, reasons };
}

const result = isReady(repoMap);
console.log(result.ready ? "渡してOK" : "まだ渡すな: " + result.reasons.join(", "));

実行するとこうなります。

node check-repo-map.mjs
# => 渡してOK

試しに protectedAreas を空配列にして実行すると「まだ渡すな: 触らせない場所が空」と出ます。たったこれだけですが、「触らせない場所を書き忘れたまま全自動で走らせる」という一番ありがちな事故を、渡す前に止められます。このメモは CLAUDE.md やissueにそのまま貼っておくと、翌日の自分や同僚も同じ判断を再利用できます。

実際に効いた3つの場面

1. ブログ運用で、稼いでいる記事のリンクを守る 人気記事の末尾の導線だけ直したいとき、Claudeに「文言を改善して」と頼むと、つい商品リンクのURLまでいじります。そこで「文言は直してよいが、リンク先URLは1文字も変えるな。変更後にビルドと差分を見せろ」と範囲を閉じます。これで売上に直結するリンクを壊さずに、文章だけ磨けます。

2. SaaSで、請求処理に近づけない 設定画面の説明文がわかりにくいとき、改善対象はあくまで表示テキストだけ。請求やプラン変更のロジックは触らせません。メモの「触らせない場所」に billing/ を入れておけば、Claudeが親切心でリトライ処理に手を出すのを防げます。

3. 社内ツールで、出力の列名だけ直す CSV出力の列名がわかりにくいという相談。直すのは列名の文字列だけで、集計ロジックは別の話です。「列名の表示文字列のみ。計算式には触れるな。サンプルデータで出力を見せろ」と頼むと、確認も一瞬で終わります。

3つに共通するのは、Claudeの能力不足ではなく、境界が薄いと事故るという一点です。境界をはっきり書くほど、AIは安全に速く動きます。

やりがちな落とし穴と直し方

落とし穴1: 最初から全ファイルを読ませる。 重要度の低い整形に時間とトークンを使い、肝心の変更が薄くなります。直し方は、読む対象を READMEpackage.json プラス主要ルート2〜3個に絞ること。全体把握は1タスク終えてから少しずつ広げます。

落とし穴2: 触らせない場所を書かない。 Claudeは課金・認証・デプロイ設定を普通の編集対象として扱います。直し方は、ファイルパスつきで保護リストを書き、CLAUDE.md に常駐させること。口頭の注意は忘れられますが、書いたものは残ります。

落とし穴3: 確認コマンドを決めずに「できました」を信じる。 完了報告が正しいか毎回人が推測することになります。直し方は、依頼文に最初から「ビルドして差分を見せて」を入れること。HTTP 200やそれっぽい返事は成功の証拠になりません。実際に走らせた結果だけを信じます。

よくある質問

Q. 既存コードの全体像を理解してから任せたほうが安全では? 理想はそうですが、初日に全体理解は終わりません。終わるのを待つと何も進まないので、先に「触らせない場所」を閉じて、戻しやすい1タスクから始めます。理解は作業しながら広げるほうが速いです。

Q. 最初のタスクはどのくらい小さくすべきですか? 1つのファイル、1つの文言、1つのコマンドで終わる粒度が目安です。大きく頼むとClaudeは親切に範囲を広げます。ビルドとスクリーンショットを確認してから次へ進めば、速度を落とさず戻し時間を減らせます。

Q. 触らせない場所はどこに書くのがいいですか? CLAUDE.md に書くのが一番続きます。毎回プロンプトに貼る方式は、忙しい日に貼り忘れます。プロジェクトのルールとして1か所に置けば、新しい作業でも自動的に効きます。

Q. 「触るな」と言ったのにClaudeが触ってしまいました。 たいていは保護対象がファイル名止まりで、ディレクトリ全体を指定できていません。billing.js だけでなく billing/ のように範囲で書きます。それでも越えるなら、依頼文の冒頭で「編集前に対象ファイルを宣言してから進め」と一段挟むと止まりやすくなります。

Q. このメモは毎回作り直しですか? リポジトリごとに1回作れば、あとは使い回せます。CLAUDE.md とissueに貼っておけば、翌日の自分も同僚も同じ判断を引き継げます。新しい保護対象が見つかったら追記していくだけです。

実際に試した結果

冒頭の決済コード事件のあと、僕は別の既存リポジトリで同じ手順を試しました。まず編集を一切させず、上の依頼文で表だけ出させたところ、billing/migrations/ を保護対象の候補にちゃんと挙げてきました。ただし環境変数ファイルは抜けていたので、自分で .env を追記。ここを人が見る前提で進めるのが大事だと改めて思いました。

最初のタスクは記事末尾の文言修正1つに絞り、npm run buildgit diff --stat まで確認して完了。差分は7行だけで、決済コードには1文字も触れていませんでした。チェック用のコードも実際に動かし、protectedAreas を空にすると「まだ渡すな」と止まることを確認済みです。賢いAIを探すより、転んでもすぐ戻せる小さな範囲を先に決める。これが他人のコードを任せる初日に、いちばん効きました。

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この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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