Use Cases (更新: 2026/6/7)

内科・小児科クリニックの電話・Web問い合わせ一次対応をAIで時短する実務手順

内科・小児科クリニックの受付が抱える「同じ質問の電話地獄」を、Claude CodeでFAQと一次対応文に整える方法。プロンプト雛形と検証スクリプト付き。

内科・小児科クリニックの電話・Web問い合わせ一次対応をAIで時短する実務手順

午前の診療が始まって30分。受付の電話が3回鳴って、内容は全部「予防接種って予約いりますか」「今日インフルエンザの検査できますか」「子どもが熱で、何時まで受付ですか」。

待合室には患者さんが並んでいて、レセコンの画面も開きっぱなし。そのあいだも電話は鳴る。終わったと思ったら、今度はWebの問い合わせフォームに同じような質問が5件たまっている——。

これ、知り合いの小児科クリニックで実際に見た光景です。先生も事務さんもみんな優秀なのに、毎日この「同じ質問の繰り返し」に1〜2時間を持っていかれていました。

僕が手伝ったのは、AIに賢い受付ロボットを作ることではありません。「よく来る質問」と「答え方」を一回ちゃんと言葉にして、誰が対応しても同じ品質で返せる土台を作ること。今日はその手順を、コピペできる形で全部書きます。

この記事の要点

  • 内科・小児科クリニックの問い合わせは、8割が「同じ20〜30種類」の質問。まずこれを棚卸しするだけで電話対応がぐっと楽になる
  • Claude Codeに任せるのは「FAQの草案づくり」「電話台本の文章化」「Web返信文の下書き」。最終チェックは必ず人がやる
  • 患者の氏名・症状・電話番号などの個人情報は、AIに渡さない。渡すのは「質問の型」だけ
  • 受付1人あたり月15〜20時間の削減が現実的な目安。教育コストも下がる
  • 検証スクリプトで「FAQに禁止ワード(診断・断定)が混ざっていないか」を機械チェックできる

内科・小児科クリニックの受付は、何に時間を取られているのか

まず読者像をはっきりさせます。この記事が役に立つのは、こういう方です。

  • 開業して数年、スタッフ2〜5人くらいの内科・小児科クリニックの院長
  • 受付・電話・予約管理を兼任している医療事務さん
  • 「人を増やすほどの余裕はないが、今の電話対応はもう限界」と感じている

内科・小児科クリニックの問い合わせには、業界特有のクセがあります。小児科は親御さんが不安なまま電話してくるので、聞き方も切実です。内科は予約・検査・処方・健診と問い合わせの種類が幅広い。発熱外来の時間帯やワクチンの在庫など、「今日の事情」で答えが変わる質問も多い。

だから「マニュアルを1冊作って終わり」になりにくいんですね。ここがAIの出番です。

よくある業務フローと、手戻りが起きるポイント

典型的な問い合わせ対応の流れはこうです。

  1. 電話が鳴る、またはWebフォームに問い合わせが届く
  2. 受付が内容を聞き取る
  3. その場で答えられれば回答、迷えば看護師や院長に確認
  4. 折り返しが必要なら、患者情報をメモして後でかけ直す
  5. 同じ質問が翌日また来る

手戻りが起きるのは、主に3か所です。

手戻りポイント具体例起きること
答えのブレ同じ質問でも事務さんによって回答が違う患者が混乱、クレームの種に
確認待ち「これは先生に聞かないと」が多い折り返し増、電話が長引く
記録が残らない口頭対応で終わり、次に活きない毎回ゼロから対応

この3つは、「質問と答えのセット」を一度きちんと文章にしておけば、ほとんど消えます。手作業でやると半日仕事ですが、Claude Codeに下書きさせれば1〜2時間で形になります。

使い方その1:よく来る質問の棚卸しとFAQ草案づくり

最初にやるのは、頭の中にある「いつもの質問」を全部AIに吐き出させて、抜けを埋めることです。受付さんは忙しくて、自分が何に答えているか案外言語化できていません。

ここでのコツは、自分のクリニックの情報をAIに教えてから書かせること。一般論のFAQは使い物になりません。

コピペできるプロンプト雛形

あなたは内科・小児科クリニックの受付業務に詳しいアシスタントです。
以下のクリニック情報をもとに、患者さんからよく電話・Webで来る質問を
カテゴリ別に30個リストアップし、それぞれに受付が口頭で使える回答案を作ってください。

【条件】
- 診断・治療方針の断定はしない(「〜の可能性があります」等の医療判断はしない)
- 受診を促す/医師に確認する旨を添える質問には、その一文を必ず入れる
- 回答は3文以内、電話で読み上げられる自然な話し言葉
- 小児科の質問は、不安な保護者に配慮したやわらかい言い回しにする

【クリニック情報】
- 診療科:内科・小児科
- 診療時間:平日9:00-12:30 / 15:00-18:00、土曜午前のみ
- 予防接種:要予約、火・木の14:00-15:00
- 発熱外来:別入口、来院前に電話必須
- オンライン予約:あり(再診のみ)
- 駐車場:3台、提携コインパーキングあり

出力は「カテゴリ / 質問 / 回答案 / 医師確認が必要か(必要/不要)」の表形式で。

これで30問の叩き台が一気に出ます。出てきた表を見て、現場の事務さんと「これは違う」「これも足して」と直していく。ゼロから書くより、直すほうが圧倒的に速いし、抜けにも気づけます。

AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲

ここを曖昧にすると事故ります。線引きをはっきりさせておきます。

工程AIに任せてよい人が必ず判断
質問の洗い出し◎ 抜け漏れ補完が得意カテゴリの妥当性
回答文の下書き◎ たたき台づくり医学的に正しいか
言い回しの調整◎ やわらかい表現クリニックの方針に合うか
公開・掲示×◎ 最終承認は院長

鉄則はひとつ。AIが書いた医療っぽい文章を、人の確認なしで患者に出さない。AIは「それっぽい嘘」を自信満々で書きます。受付の言葉として正しいかは、必ず院長か看護師が目を通してください。

使い方その2:電話の一次対応台本を作る

FAQができたら、それを「電話で読み上げられる台本」に変換します。新人の事務さんが入ったとき、この台本があるだけで立ち上がりが全然違います。

僕が試したプロンプトはこれです。

次のFAQ表をもとに、受付が電話で使える一次対応スクリプトを作ってください。
各質問について「最初のひとこと → 確認すること → 回答 → 締めの言葉」の
4ステップに分けてください。

【守ること】
- 発熱・けいれん・呼吸が苦しいなど緊急性の高い訴えは、
  回答せず「すぐ受診/救急」へ案内する分岐を必ず入れる
- 折り返しが必要なケースは、聞き取る項目(お名前・診察券番号・連絡先・症状の概要)を明示
- 保護者が不安そうな小児科の電話は、共感の一言を最初に入れる

緊急性の高い訴えを「回答せず受診へ流す」分岐は、医療現場では命に関わる部分なので、ここだけは絶対に外さないでください。AIに作らせたあとも、院長が一語一句チェックする箇所です。

導入前と導入後で何が変わったか

知り合いのクリニックでの、ざっくりした変化です。

  • 導入前:電話1本あたり平均4〜5分。新人は答えに詰まって毎回先輩に確認。同じ質問が毎日10件以上
  • 導入後:FAQと台本を見ながら1本2〜3分。新人もその場で回答できる。Webフォームの定型質問は下書き返信をコピーして送るだけ

時間で見ると、受付1人あたり1日40〜60分、月にして15〜20時間ほど浮いた計算です。時給換算でも月2〜3万円分。AI利用料は月に数百円〜千円台なので、ROIで悩む水準ではありませんでした。

使い方その3:Web問い合わせへの返信文を下書きする

Webフォームの問い合わせは、文章で丁寧に返さないといけないぶん、電話より時間がかかります。ここもAIに下書きさせると速い。

ただし患者さんが書いた本文をそのままAIに貼り付けるのはNGです(理由は後述)。代わりに、「質問の種類」だけを伝えて雛形を作らせ、固有名詞は人が手で埋めます。

内科・小児科クリニックのWeb問い合わせ返信テンプレートを5種類作ってください。
種類:①予約方法 ②診療時間の確認 ③予防接種の予約 ④発熱外来の受診方法 ⑤健康診断の予約

【条件】
- 冒頭にお礼、末尾に「お大事に/ご来院お待ちしております」等の締め
- 個人情報や症状の断定には触れない
- {{名前}} {{日時}} のように、人が後から埋める箇所を二重波かっこで示す

返ってきたテンプレートに、受付が患者名と日時を入れて送るだけ。1件3分かかっていた返信が1分を切るようになります。

個人情報・セキュリティの注意点

ここは医療機関として絶対に外せないので、独立した節にします。

  • 患者の実名・診察券番号・電話番号・具体的な症状をAIの入力欄に貼らない。 クラウドのAIサービスに送る=外部に出すと考える
  • AIに渡すのは「質問の型」「クリニックの公開情報(診療時間など)」だけ。診療記録やレセプトデータは一切渡さない
  • 作ったFAQ・台本に、特定の患者が推測できる情報が混じっていないか公開前に確認
  • スタッフが使うときのルール(何を入れてよく、何はダメか)を1枚にまとめて掲示する

要は、AIは「文章づくりの道具」として使い、患者個人の情報処理には使わない。この線を守れば、医療情報の安全管理ガイドラインの考え方からも大きく外れません。詳しくは厚生労働省の医療情報システムの安全管理に関するガイドラインに目を通しておくと安心です。

作ったFAQを機械チェックする検証スクリプト

最後に、人の目だけに頼らない「門番」を1つ置きます。FAQの中に、受付が言ってはいけない断定表現(「〜です(診断)」「絶対治ります」など)が混ざっていないかを機械でチェックするスクリプトです。Node.jsがあれば動きます。

FAQをCSV(faq.csv、列は question,answer)で書き出しておき、次を実行します。

import { readFile } from "node:fs/promises";

// 受付が安易に使うと危ない表現(医療判断・断定・過度な安心)
const NG_WORDS = [
  "絶対", "必ず治", "問題ありません", "心配いりません",
  "の病気です", "と診断", "薬を飲めば", "放っておいて大丈夫",
];

const csv = await readFile("./faq.csv", "utf8");
const rows = csv.trim().split("\n").slice(1); // 1行目はヘッダー

let hit = 0;
rows.forEach((line, i) => {
  const answer = line.split(",").slice(1).join(",");
  const found = NG_WORDS.filter((w) => answer.includes(w));
  if (found.length > 0) {
    hit++;
    console.log(`[要修正] ${i + 2}行目: ${found.join(" / ")}`);
    console.log(`  → ${answer.trim()}`);
  }
});

console.log(hit === 0
  ? "OK: 危ない断定表現は見つかりませんでした。"
  : `${hit}件の要確認があります。院長レビューに回してください。`);

これを公開前に1回流すだけで、「絶対治ります」みたいな危ない一文が患者向け資料に紛れ込む事故を防げます。チェックリストとあわせて、公開前の門番にしてください。

公開前チェックリスト(印刷して受付に貼れます)。

  • 医学的な断定・診断をしていないか
  • 緊急時に「受診/救急へ」と案内する分岐があるか
  • 特定の患者が推測できる情報が混ざっていないか
  • 診療時間・予約方法など、今の運用と一致しているか
  • 院長または看護師の最終確認を受けたか

よくある質問

Q. プログラミングの知識がなくても使えますか? A. FAQやテンプレートを作るだけなら、ブラウザのチャットにプロンプトを貼るだけで始められます。検証スクリプトを動かす段階だけ少し手間ですが、まずは文章づくりから入って大丈夫です。導入の全体像はClaude Codeをはじめて使う人向けの導入ガイドが参考になります。

Q. 受付スタッフが新しく入っても引き継げますか? A. むしろ引き継ぎが楽になります。台本とFAQが文章で残るので、口頭で教える時間が減ります。非エンジニアのスタッフでも扱える形にする考え方はエンジニアでない人のためのClaude Code活用にまとめています。

Q. AIが間違った医療情報を出したらどうするんですか? A. だからこそ「公開前に必ず人がチェックする」を工程に組み込みます。AIは下書き係で、最終責任は人。検証スクリプトと院長レビューの二段構えで、間違いを止めます。

Q. プロンプトをもっと自分のクリニック向けに作り込みたいです。 A. クリニック情報を細かく与えるほど精度が上がります。プロンプトの書き分けのコツはプロンプトエンジニアリングの実践で具体例を紹介しています。

実際に試した結果

僕自身、知り合いの小児科クリニックで上のプロンプトを回して、FAQ30問と電話台本を半日で作りました。一番効いたのは、棚卸しの段階で**「これも聞かれてた」という質問が7〜8個あぶり出された**ことです。受付さんが無意識に答えていた質問が、ちゃんと言葉になりました。

検証スクリプトも実際に流してみたら、AIが書いた回答案の中に「心配いりません」という一文が2か所まぎれていて、ちゃんと拾えました。医療の現場でこの一言は危ない。機械の門番を置いてよかった、と思った瞬間です。

導入から2週間後に聞いたら、「同じ質問の電話に身構えなくなった」と言われました。時間が浮いただけでなく、対応のストレスが減ったのが大きいみたいです。

クリニック全体でこういう仕組みを定着させたい、スタッフ研修として整えたいという場合は、研修・相談で一緒に運用ルールまで組み立てられます。まずは自分で試したいという方は、この記事のプロンプトをそのままコピーして、自分のクリニックの情報に差し替えるところから始めてみてください。

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Masa

この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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