Kubernetesデプロイ入門:kubectl applyからローリングアップデートとロールバックまで手で動かす
Deployment/Service/Ingressの役割、マニフェストの書き方、kubectl apply、ローリングアップデートとロールバック、liveness/readinessを最小YAMLで手を動かして覚える入門。
「Kubernetesにデプロイしといて」
そう頼まれて、Claude Codeに「KubernetesのYAML作って」と投げた僕は、出てきた150行をそのままクラスタに apply しました。動いた。やった、と思った瞬間、Podが2分おきに再起動を始めたんです。
原因は、コピペしたマニフェストの livenessProbe が、まだ起動中のアプリを「死んでる」と判定して殺し続けていたこと。賢いAIが書いたYAMLでも、こうなる。理由はシンプルで、動くYAMLと、安全に動かせるYAMLは別物だからです。
この記事では、その「別物」の境目を手で確かめます。題材はローカルでも貼り付けて試せる小さなNGINXアプリ。自社アプリのDockerイメージがまだなくても、Deployment・Service・Ingressの役割から、kubectl apply、ローリングアップデート、ロールバックまでひと通り体で覚えられます。Dockerイメージ作りから見直したい人は Claude CodeとDocker連携 を先に読むとつながります。
この記事の要点
- Kubernetesの主役は3つ。Deployment(Podを何個・どう更新するか)/ Service(安定した宛先)/ Ingress(外からの入口) の役割分担を最初に押さえる。
- マニフェストは1ファイルに全部書いて
kubectl apply -fで流せる。コピペで動く最小YAMLを下に置いた。 - ローリングアップデートは「少しずつ入れ替える」、ロールバックは
kubectl rollout undoで一発で戻す。 わざと壊して戻す練習を先にやる。 - readinessProbe(宛先に入れていいか)と livenessProbe(再起動すべきか)は別物。 混同するとPodが再起動ループに入る。
- K8sは万能ではない。1〜2台で足りるなら入れない。いつ要るかの判断基準も最後に書いた。
まず役者を3人だけ覚える
Kubernetesは用語が多すぎて、最初の壁はそこです。でも、最小構成で必要な役者は3人だけ。残り(ConfigMap、Secret、probe、resources)は脇役なので、まず主役から覚えます。
| 役者 | 役割 | 身近な例え |
|---|---|---|
| Deployment | アプリのコピー(Pod)を何個動かし、更新時にどう入れ替えるか管理する | 店長。バイトを何人シフトに入れ、入れ替えも仕切る |
| Service | バラバラに増減するPodに、変わらない宛先(社内向けの固定窓口)を与える | 代表電話。誰が出ても同じ番号でつながる |
| Ingress | 外からのアクセスを、ドメインやパスごとに正しいServiceへ振り分ける | 受付。来訪者を行き先の部署へ案内する |
ここで大事なのは、Podは使い捨てという前提です。落ちたら新しいのが立ち上がるし、更新のたびに作り直される。だからPodのIPは毎回変わる。その「変わるもの」に「変わらない宛先」をかぶせるのがServiceで、その外側の入口がIngress。この3層を分けて考えると、あとで「外からつながらない」ときの切り分けがラクになります。
Podは個別に手で作ることもできますが、入門では基本やりません。Deployment経由で作れば、台数管理も更新もロールバックも全部まとめて面倒を見てくれるからです。
Claude Codeに丸投げしない前提メモ
最初に正直に言うと、Claude Codeは便利です。でも「KubernetesのYAML作って」だけだと、僕が冒頭でやらかしたような事故りやすいYAMLが出てきます。勝手にLoadBalancerを作る、Secretを平文で書く、クラスタ固有のIngress Controller名を決め打ちする——AIはこっちのクラスタの事情を知らないので当然です。
なので、頼むときは「何を作るか」だけでなく「何を作らないか」も渡します。コードフェンスの中が、僕が実際に使っている指示文です。
Kubernetes初心者向けに、ローカルでも検証できるDeployment一式を作ってください。
前提:
- namespaceは claude-k8s-demo
- private registryは使わず nginx:1.27-alpine を使う
- ConfigMapでHTMLを1つ差し替える
- Deploymentはreplicas 2、RollingUpdate、readinessProbe、livenessProbe、resourcesを含める
- ServiceはClusterIPにする
- Ingressは任意利用として claude-k8s.local を使う
- Secretの実値はGitにコミットしない方針だけ説明する
- kubectl apply、rollout status、port-forward、rollbackの確認コマンドも書く
制約:
- NodePortやLoadBalancerは使わない
- Secretの実値をYAMLに書かない
- クラスタ全体に影響するClusterRoleやNamespace削除コマンドは出さない
namespace、公開方法、イメージ、probe、resources、Secret方針を先に決める。それだけで危ない自動生成がごっそり減ります。同じプロジェクトで何度も使うなら、この前提を CLAUDE.md に移しておくと毎回書かずに済みます。考え方は Claude.mdベストプラクティス に整理しました。
コピペで動く最小マニフェスト
理屈より動かしたほうが早いので、まず手元で動くものを置きます。次の内容を k8s/claude-k8s-demo.yaml として保存してください。kind、minikube、Docker Desktop Kubernetes、検証用クラスタのどれでも試せます。Namespace、ConfigMap、Deployment、Service、Ingressを1ファイルに --- で区切って入れてあります。
apiVersion: v1
kind: Namespace
metadata:
name: claude-k8s-demo
---
apiVersion: v1
kind: ConfigMap
metadata:
name: demo-page
namespace: claude-k8s-demo
data:
APP_ENV: "demo"
index.html: |
<!doctype html>
<html lang="ja">
<head>
<meta charset="utf-8" />
<title>Claude Code Kubernetes Demo</title>
</head>
<body>
<h1>Claude Code Kubernetes Demo</h1>
<p>Deployment, Service, ConfigMap, probes are running.</p>
</body>
</html>
---
apiVersion: apps/v1
kind: Deployment
metadata:
name: demo-web
namespace: claude-k8s-demo
labels:
app: demo-web
spec:
replicas: 2
revisionHistoryLimit: 5
strategy:
type: RollingUpdate
rollingUpdate:
maxSurge: 1
maxUnavailable: 0
selector:
matchLabels:
app: demo-web
template:
metadata:
labels:
app: demo-web
spec:
containers:
- name: nginx
image: nginx:1.27-alpine
imagePullPolicy: IfNotPresent
ports:
- name: http
containerPort: 80
env:
- name: APP_ENV
valueFrom:
configMapKeyRef:
name: demo-page
key: APP_ENV
resources:
requests:
cpu: "50m"
memory: "64Mi"
limits:
cpu: "250m"
memory: "128Mi"
readinessProbe:
httpGet:
path: /
port: http
initialDelaySeconds: 3
periodSeconds: 5
timeoutSeconds: 2
failureThreshold: 3
livenessProbe:
httpGet:
path: /
port: http
initialDelaySeconds: 10
periodSeconds: 10
timeoutSeconds: 2
failureThreshold: 3
volumeMounts:
- name: demo-page
mountPath: /usr/share/nginx/html/index.html
subPath: index.html
readOnly: true
volumes:
- name: demo-page
configMap:
name: demo-page
---
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: demo-web
namespace: claude-k8s-demo
spec:
type: ClusterIP
selector:
app: demo-web
ports:
- name: http
port: 80
targetPort: http
---
apiVersion: networking.k8s.io/v1
kind: Ingress
metadata:
name: demo-web
namespace: claude-k8s-demo
spec:
ingressClassName: nginx
rules:
- host: claude-k8s.local
http:
paths:
- path: /
pathType: Prefix
backend:
service:
name: demo-web
port:
name: http
初心者が一番ハマるのは、selector.matchLabels とPod templateの labels、そしてServiceの selector の3つを app: demo-web で一致させることです。ここがズレると、Deploymentは自分のPodを見つけられず、Serviceも宛先を見失います。僕も最初、コピペ中にラベルを1文字だけ変えてしまって「Podは動いてるのにつながらない」で30分溶かしました。Claude Codeにレビューさせるなら「selector、template labels、Service selectorが一致しているか確認して」と一言添えてください。
kubectl applyで流して、port-forwardで覗く
マニフェストを保存したら、クラスタにつながっているか先に確認してから流します。kubectl apply -f は「このファイルに書いた状態に合わせて」という指示で、何度実行しても同じ結果になります(差分だけ反映される)。これが手順書より楽な理由です。
kubectl cluster-info
kubectl apply -f k8s/claude-k8s-demo.yaml
kubectl -n claude-k8s-demo rollout status deployment/demo-web
kubectl -n claude-k8s-demo get pods -l app=demo-web
kubectl -n claude-k8s-demo get service demo-web
kubectl -n claude-k8s-demo port-forward service/demo-web 8080:80
最後の port-forward は、Ingressがまだ無くてもServiceまで届いているかを確かめる近道です。別のターミナルでアクセスします。
curl http://localhost:8080/
<h1>Claude Code Kubernetes Demo</h1> が返ってくれば、Deployment → Service → Pod の経路は生きています。Ingress Controllerが入っている環境なら、claude-k8s.local をローカルのhostsファイルに向けて確認します。割り当てIPはクラスタの種類で違うので、まず現物を見てから決めてください。
kubectl -n claude-k8s-demo get ingress demo-web
kubectl -n claude-k8s-demo describe ingress demo-web
ここを曖昧にしたままClaude Codeに任せると、環境に合わないIngress注釈ばかり増えていきます。Ingressは「最後に疑う」のがコツです。外からつながらないときは、Pod → Service → port-forward → Ingress の順に切り分ける。Serviceで届かないものはIngressをいじっても直りません。
ローリングアップデートとロールバックを、わざと壊して覚える
Deploymentの本当の価値は、台数を増やすことより「安全に入れ替えて、ダメなら戻せる」ことにあります。最初に置いたYAMLで maxUnavailable: 0 と maxSurge: 1 を指定しているので、更新は新しいPodを1個立ててから古いのを1個落とす形で進みます。これがローリングアップデートで、途中で全部止まる瞬間が生まれません。
まずは正常な更新を流して、履歴が残ることを見ます。
kubectl -n claude-k8s-demo set image deployment/demo-web nginx=nginx:1.27-alpine
kubectl -n claude-k8s-demo rollout status deployment/demo-web
kubectl -n claude-k8s-demo rollout history deployment/demo-web
次が本番の練習。あえて存在しないタグに更新して、壊します。
kubectl -n claude-k8s-demo set image deployment/demo-web nginx=nginx:not-a-real-tag
kubectl -n claude-k8s-demo rollout status deployment/demo-web --timeout=30s
kubectl -n claude-k8s-demo get pods
kubectl -n claude-k8s-demo describe deployment demo-web
ImagePullBackOff が見えるはずです。でも、ここで気づいてほしいのは——サイトはまだ落ちていないこと。新しいPodが立ち上がれないので、Kubernetesは古いPodを残したままにしています。maxUnavailable: 0 が効いている証拠です。慌てずに戻します。
kubectl -n claude-k8s-demo rollout undo deployment/demo-web
kubectl -n claude-k8s-demo rollout status deployment/demo-web
この「わざと壊して戻す」を一度やっておくかどうかで、本番でのメンタルが全然違います。本番で初めて rollout undo を打つチームは、どのrevisionに戻るのか、ConfigMapやSecretの変更も一緒に戻るのか(戻りません。Deploymentのテンプレートしか戻らない)、監視アラートは止まるのか、で必ず迷います。Claude Codeにロールバック手順を書かせるときは「戻る対象と戻らない対象も書いて」と頼むと、この落とし穴を先に潰せます。本番反映までまとめて自動化したくなったら Claude CodeでCI/CDパイプラインを構築 が続きになります。
probeとSecret、ここだけは事故りやすい
脇役と言いましたが、事故率が高いのはむしろこの2つです。冒頭の再起動ループも、ここでやらかしました。
readinessProbe と livenessProbe は意味が違います。
- readinessProbe:このPodを「Serviceの宛先に入れていいか」の判定。失敗してもPodは殺されず、宛先から外れるだけ。
- livenessProbe:このPodを「再起動すべきか」の判定。失敗が続くとコンテナが殺されて作り直される。
僕の事故は、起動に時間のかかるアプリに対して livenessProbe の initialDelaySeconds が短すぎて、起動中を「死んでる」と誤判定し、永遠に再起動し続けたケースでした。起動が遅いアプリには startupProbe を足すか、initialDelaySeconds と failureThreshold を現実に合わせます。DBの一時障害で liveness を落とす設計にすると、Pod再起動が連鎖して傷口が広がるので注意してください。
Secretは「Secretにしたから安全」ではありません。 標準のSecretはbase64で保存されるだけで、暗号化ではない。Gitにコミットすればそのまま漏えいです。ローカルで形だけ作るなら、ファイルを .gitignore に入れたうえでこうします。
kubectl -n claude-k8s-demo create secret generic demo-api-secret \
--from-literal=API_TOKEN='replace-me-locally' \
--dry-run=client \
-o yaml > secret.local.yaml
kubectl apply -f secret.local.yaml
実務ではクラウドのSecret Manager、External Secrets、Sealed Secrets、SOPSあたりから方針をチームで1つ選び、リポジトリには実値を置きません。一方で、DBパスワードやAPIキーをConfigMapに入れるのは論外です。ConfigMapは「秘密ではない設定」専用と割り切ってください。
いつKubernetesを入れるべきか(入れない判断も大事)
ここまで書いておいてなんですが、全部のアプリにK8sが要るわけではありません。 むしろ入門者が一番やりがちな過剰投資が「とりあえずKubernetes」です。1台のVPSで月数千リクエストを捌くだけのサイトに、3ノードのクラスタとIngress ControllerとSecret運用を持ち込むと、アプリより運用に時間を取られます。
僕の中のざっくりした判断基準はこうです。
| 状況 | 向いている選択 |
|---|---|
| 1〜2台で足りる / トラフィックが安定 | 素のサーバー or PaaS(Render、Fly.io等)。K8sは不要 |
| コンテナを数個、たまに更新 | Docker ComposeやマネージドコンテナでもOK |
| 複数サービスを安全に更新・自動回復・水平スケールしたい | Kubernetesが効いてくる |
| チームが増え、デプロイの手順を全員でそろえたい | K8s + CI/CDで標準化する価値が出る |
判断軸はシンプルで、「ローリングアップデート・自動回復・水平スケール・宣言的な管理」のうち2つ以上が今すぐ欲しいかどうか。欲しくないなら、まだ早い。K8sは強力ですが、強力なぶん運用コストも乗ります。先にDockerで1コンテナをきれいに動かす経験を積むほうが、結局は近道です(Claude CodeとDocker連携 参照)。
よくある質問
Q. DeploymentとPodは何が違うの? A. Podが実際に動く最小単位(コンテナの入れ物)で、Deploymentはそのお世話係です。Deploymentに「2個動かして」と書けば、1個落ちても自動で補充し、更新やロールバックもまとめて面倒を見ます。入門ではPodを直接作らず、Deployment経由にするのが基本です。
Q. ServiceとIngressはどちらか片方でいい?
A. 役割が別なので、外部公開するなら両方使うのが普通です。Serviceはクラスタ内に「変わらない宛先」を作る役、Ingressはその外側で「どのドメイン・パスをどのServiceへ」振り分ける入口役。ローカル検証だけなら、Ingressを後回しにして kubectl port-forward でServiceに直接つないで確認できます。
Q. ローリングアップデートとロールバックの違いは?
A. ローリングアップデートは「新しい版を少しずつ入れ替える」前進、ロールバックは「前の版に戻す」後退です。戻すのは kubectl rollout undo deployment/<name> の一発。ただし戻るのはDeploymentのテンプレートだけで、ConfigMapやSecretの変更は戻らない点に注意してください。
Q. kubectl apply と kubectl create はどっちを使う?
A. 入門なら apply 一本でいいです。apply はファイルに書いた状態へ寄せる宣言的なコマンドで、何度流しても安全(差分だけ反映)。create は新規作成専用で、すでにある物に対して流すとエラーになります。
Q. probeは省略してもいい?
A. 動きはしますが、本番では入れてください。readinessProbeが無いと、まだ準備できていないPodにもアクセスが流れて一瞬エラーが出ます。livenessProbeが無いと、ハングしたPodが永遠に再起動されません。最初の initialDelaySeconds だけ現実に合わせれば、冒頭の僕のような再起動ループは避けられます。
実際に試した結果
この記事の流れは、ローカルクラスタで「apply → rollout status → port-forward → curl → 存在しないタグへ更新 → rollout undo」の順に手で確かめる前提で組みました。実際にやってみて一番効いたのは、maxUnavailable: 0 を入れた状態でわざと壊す練習です。Podが ImagePullBackOff になっても旧Podが残ってサイトが落ちない、という挙動を一度自分の目で見ると、ローリングアップデートの意味が腹落ちします。
そして、初心者が本当につまずくのはIngressではありませんでした。selectorとlabelの不一致、probeのpath・遅延の設定、Secretサンプルの扱い——この3つです。Claude Codeに最初から「安全な公開範囲・Secret禁止・ロールバック確認」を渡しておくほうが、後からYAMLを直すより速く、レビューもしやすい。賢いAIに完璧なYAMLを期待するより、壊しても戻せる小さな構成を手で回す。遠回りに見えて、これがK8sを怖くなくする一番の近道でした。
公式の一次情報も必ず当たってください。Kubernetes Deployments と Liveness/Readiness/Startup probes は特にブックマーク推奨です。チームでこの手順を実リポジトリに落とし込むなら Claude Code研修・導入相談 で、マニフェストの棚卸しからCIレビュー、ロールバック演習までまとめて整えられます。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
まずは無料PDFで基本コマンドと最初の使い方をまとめて確認してください。登録後はそのままテンプレート集や導入相談にも進めます。
スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
Claude Codeを仕事で使える形にしませんか?
まず無料PDFで基本を固め、繰り返し使う作業はGumroad教材へ、チーム導入や権限設計は導入相談へ進めます。
この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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