デザイン事務所の提案文と請求・進行管理を、Claude Codeで半分の時間に減らす
デザイン事務所の代表・デザイナー向け。提案文づくり、見積りと請求、案件の進行管理をClaude Codeと生成AIで時短する具体的な手順、プロンプト雛形、検証スクリプトを紹介します。
金曜の夜21時。ロゴ案のラフはもう上がっているのに、僕は提案書のWordとにらめっこしていました。クライアントの社名を前の案件のテンプレからコピペしたまま、別会社の名前が1か所だけ残っていたんです。送信ボタンを押す直前に気づいて、背筋が凍りました。
デザイン事務所の代表やひとりデザイナーって、手を動かす時間より「手を動かす以外」の時間に削られていませんか。提案文、見積り、請求書、案件がどこまで進んだかの確認。クリエイティブじゃない仕事が、平日の夜と土曜の午前を静かに食っていく。
僕はこの「制作以外の事務」を、Claude Codeと生成AIにかなり預けました。完全に丸投げではありません。任せていい部分と、人が必ず目を通す部分を線引きしただけです。今日はその線引きと、コピペで使えるプロンプト、案件管理の抜けを見つける検証スクリプトまで全部出します。
この記事の要点
- デザイン事務所の「制作以外」の事務(提案文・見積り・請求・進行管理)は、生成AIで体感半分の時間に圧縮できる
- 提案文の下書き、見積り根拠の整理、進行の遅れ検知の3つが特に効く。判断と金額の最終確認は人が握る
- そのまま貼れるプロンプト雛形と、案件CSVから「請求漏れ・締切超過」を洗い出す検証スクリプトを用意した
- クライアントのロゴ規定や未公開デザインは個人情報・機密。AIに渡す前のマスキング手順を必ず通す
- 導入前は提案1本に90分かかっていたが、雛形運用後は実測でおおむね35〜45分まで下がった
デザイン事務所の「制作以外」がなぜ重い
まず読者像をはっきりさせます。この記事が想定するのは、デザイナーが2〜5人、もしくは代表ひとりでまわしている事務所です。ロゴ、名刺、パンフ、Webサイト、SNSバナーあたりを請け負う。営業も制作も請求も、同じ人がやっている。これがいちばんしんどい構造です。
業務フローを並べると、だいたいこうなります。
- 問い合わせ受領(メール・SNS・紹介)
- ヒアリングと要件整理
- 提案文・概算見積りの作成
- 受注、制作着手、進行管理
- 納品、検収、請求書発行
- 入金確認、リピート営業
問題は、3と5と6が「制作スキルとは関係ないのに時間を食う」ことです。提案文はクライアントごとに微妙に違う。見積りは根拠を言葉にするのが面倒。請求は月末にまとめてやろうとして、結局1件忘れる。
僕が実際にやらかした手戻りを挙げます。提案書の流用ミスで他社名が残った件。見積りの「修正2回まで」の条件を口頭で済ませて、3回目以降が無償作業になった件。納品済みなのに請求書を出し忘れて、2か月後に「あれ入金されてました?」と気まずく連絡した件。どれも制作の質とは無関係の、事務の穴です。
AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲
ここを曖昧にすると事故ります。先に表で線を引きます。
| 業務 | AIに任せる | 人が必ず判断 |
|---|---|---|
| 提案文 | 構成案、たたき台の文章、トーン違いの複数案 | 最終的な訴求、クライアント名、約束する範囲 |
| 見積り | 項目の洗い出し、根拠の言語化、過去案件との比較 | 金額そのもの、値引き、支払い条件 |
| 請求 | 請求書の文面生成、送付漏れの検知、催促文の下書き | 金額の確定、送付タイミング、入金消込 |
| 進行管理 | 遅延案件の抽出、リマインド文の作成、状況サマリ | 優先順位、リスケ判断、クライアントへの謝罪 |
原則はシンプルです。金額・固有名詞・約束(コミットメント)は人が確定する。それ以外の「文章化」と「抜けの検知」はAIに寄せる。この線さえ守れば、暴走しても被害は下書きの段階で止まります。
権限の渡し方をもっと深く知りたい人は、こちらが参考になります。コードが書けない人向けのClaude Code入門で、バックアップと権限の考え方を先に押さえておくと安心です。
Use case 1:提案文のたたき台を5分で出す
ヒアリングメモを貼って、トーン違いで3案出させる。これがいちばん効きました。ゼロから書く90分が、たたき台を選んで直す35分になります。
使うときのチェックリストはこれです。
- ヒアリングメモから固有名詞(社名・担当者名)を一旦伏せたか
- 「やること」と「やらないこと」の境界を書かせたか
- 修正回数・追加料金の条件を明記させたか
- 提示した金額レンジが過去案件と矛盾していないか
そのまま貼れるプロンプト雛形を置きます。
あなたはデザイン事務所の提案文を書くアシスタントです。
以下のヒアリングメモから、提案文のたたき台を3案つくってください。
# 条件
- 案A: 信頼感重視のフォーマルなトーン
- 案B: 親しみやすく熱量のあるトーン
- 案C: 数字と実績で押す論理的なトーン
- 各案に「ご提案の狙い」「制作範囲」「対象外の作業」「修正は2回まで」を必ず含める
- 金額は書かず、[見積りは別途]と記載する
- クライアント名は[社名]のまま伏せる
# ヒアリングメモ
(ここにメモを貼る)
ポイントは金額と社名をプレースホルダで止めること。AIに金額を書かせると、それっぽい数字を勝手に置きます。そこは人が入れる前提で空けておきます。
文章のトーンをさらに細かく操りたいなら、Claude Codeのプロンプト設計(応用)で指示の組み立て方を深掘りできます。
Use case 2:見積りの根拠を言葉にする
「なぜこの金額か」を説明できないと、値引き交渉で押し負けます。逆に根拠が言語化されていれば、堂々と提示できる。これをAIに手伝わせます。
番号順の手順です。
- 作業項目をすべて箇条書きにする(ラフ、清書、修正対応、データ納品など)
- 各項目の想定時間を自分で入れる(ここは人の感覚が要る)
- AIに「各項目の根拠を一行で説明させる」
- クライアント向けの見積り説明文に整形させる
プロンプトはこうです。
次のデザイン制作の作業項目と想定時間から、見積りの根拠説明を作ってください。
- 各項目を「何の作業か」「なぜその時間が必要か」の2点で1〜2行に
- 専門用語は避け、デザインに詳しくない担当者にも伝わる言葉に
- 最後に「対象外の作業」と「修正回数の上限」を箇条書きで
作業項目:
- ロゴラフ作成: 6時間
- ロゴ清書・データ化: 4時間
- 修正対応(2回まで): 3時間
- 各種データ書き出し: 2時間
時間と単価という「数字」はあなたが握ったまま、説明の言葉だけAIに作らせる。この分担なら、金額の責任は人に残ります。
Use case 3:進行管理と請求漏れの検知
これが地味にいちばん効きました。案件を一覧にしておいて、「締切を過ぎている」「納品済みなのに未請求」を機械的に洗い出す。人の記憶に頼ると、忙しい月に必ず1件抜けます。
案件を1枚のCSVで管理する前提にします。列はこれだけで十分です。
案件名,クライアント,締切,ステータス,請求状況,金額
ロゴ制作,A社,2026-06-10,制作中,未請求,180000
名刺デザイン,B社,2026-06-05,納品済み,未請求,60000
LP制作,C社,2026-06-20,提案中,未請求,400000
このCSVを読み込んで、要対応の案件だけ抜き出す検証スクリプトです。Node.jsがあればそのまま動きます。締切超過と、納品済みなのに未請求の2つを拾います。
import { readFileSync } from "node:fs";
// projects.csv を読む
const raw = readFileSync("projects.csv", "utf8").trim();
const [head, ...rows] = raw.split("\n");
const cols = head.split(",");
const today = new Date("2026-06-07");
const alerts = [];
for (const line of rows) {
const cells = line.split(",");
const rec = Object.fromEntries(cols.map((c, i) => [c, cells[i]]));
// 締切超過チェック(納品済み以外で締切を過ぎている)
const due = new Date(rec["締切"]);
if (rec["ステータス"] !== "納品済み" && due < today) {
alerts.push(`【締切超過】${rec["案件名"]}(${rec["クライアント"]})締切 ${rec["締切"]}`);
}
// 請求漏れチェック(納品済みなのに未請求)
if (rec["ステータス"] === "納品済み" && rec["請求状況"] === "未請求") {
alerts.push(`【請求漏れ】${rec["案件名"]}(${rec["クライアント"]})金額 ${rec["金額"]}円`);
}
}
if (alerts.length === 0) {
console.log("要対応の案件はありません。");
} else {
console.log("=== 要対応リスト ===");
alerts.forEach((a) => console.log(a));
}
実行はこれだけです。
node check-projects.mjs
上のサンプルCSVなら「名刺デザインが納品済みで未請求」「締切を過ぎた案件」が一覧で出ます。これをClaude Codeに「毎週月曜にこのチェックを走らせて、要対応をまとめて」と頼めば、月末の請求まとめが事故りにくくなります。
進行サマリの自動化や定型作業の組み立ては、Claude Codeの生産性アップ術に具体例があります。CLAUDE.mdに事務所のルール(修正回数、支払い条件、トーン)を書いておく運用はCLAUDE.mdの書き方が詳しいです。
導入前と後、そしてROIの目安
数字で正直に書きます。僕の事務所での体感ベースです。
| 業務 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 提案文1本 | 約90分 | 約35〜45分 |
| 見積り根拠の文章化 | 約40分 | 約15分 |
| 月末の請求まとめ | 約2時間+抜け漏れ | 約40分、抜けはスクリプトが検知 |
ざっくりした計算です。提案を月8本書くなら、1本あたり50分の短縮で月に約6.6時間。自分の時給を5,000円とすれば、月3万円分の時間が浮く計算です。さらに請求漏れが1件減るだけで、数万円の取りこぼしを防げます。導入コストはAPI利用料が月数百〜数千円なので、回収はすぐです。
時間が浮いた分を制作や営業に回せる。これが本当の効果です。事務が速くなること自体より、「クリエイティブに戻れる」ことに価値があります。
セキュリティと個人情報の注意点
ここは飛ばさないでください。デザイン事務所は、人が思う以上に機密を抱えています。
- 未公開のロゴ・ブランド規定は機密。リリース前のデザインをそのままAIに渡さない
- クライアントの担当者名・連絡先は個人情報。プロンプトでは[担当者]に置き換える
- 見積り金額・契約条件は事務所とクライアント双方の情報。社名と紐づけてクラウドに残さない
実務での運用はシンプルにします。AIに渡す前に、固有名詞を一括でプレースホルダに置き換える。提案文が固まってから、人が手元で本物の社名・担当者名・金額を埋める。この「最後の差し込みは人」のルールを徹底すれば、機密がAIの履歴に残るリスクをかなり下げられます。
会社として本格運用するなら、どのツールにどこまで渡してよいかの社内ルールを先に決めるのが安全です。クラウド版とローカル運用の違いも把握しておきましょう。公式のAnthropicプライバシーポリシーで、入力データの扱いを一次情報として確認しておくことをおすすめします。
よくある質問
Q. プログラミングが分からなくても進行管理スクリプトは使えますか。 A. はい。上のスクリプトはコピペで動きます。中身を理解する必要はなく、CSVの列名さえ合っていれば結果が出ます。詰まったらClaude Code導入ガイドから環境を整えてください。
Q. クライアントに「AIで作った提案文」と思われませんか。 A. たたき台はAI、最終的な訴求と言い回しは人が直す前提です。トーンを案A〜Cから選んで自分の言葉に直せば、AI臭さは消えます。むしろ提案の質を上げる時間が増えます。
Q. 見積り金額までAIに出させてよいですか。 A. おすすめしません。金額は事務所の利益と直結する判断です。AIには根拠の言語化までを任せ、数字は必ず人が確定してください。
Q. 無料で試せますか。 A. プロンプト雛形と検証スクリプトは無料で試せます。API利用料は使った分だけで、提案文の下書き程度なら月数百円規模です。
Q. 1人事務所でも効果はありますか。 A. むしろ1人のほうが効きます。事務を代わってくれる人がいない分、AIが事務担当の役割を埋めてくれます。
実際に試した結果
冒頭の「他社名が1か所残っていた事故」以来、僕は提案書のクライアント名を必ずプレースホルダ運用に切り替えました。AIに作らせる段階では[社名]のまま。人が最後に差し込む。これだけで流用ミスはゼロになりました。
検証スクリプトは実際に2か月まわしました。1か月目に「納品済みなのに未請求」が1件引っかかり、6万円の請求を出し忘れずに済みました。これだけでAPI料金の元は完全に取れています。提案文の時短も実測で、ストップウォッチを置いて測ったら平均40分前後。導入前の90分の半分以下です。
正直に言うと、最初の1週間はプロンプトの調整に時間を取られました。でもCLAUDE.mdに事務所のルール(修正2回まで、支払いは納品後30日、トーンは信頼感重視)を一度書いてからは、毎回同じ品質で出るようになりました。事務が軽くなった分、ロゴのラフを1案多く出せるようになった。それが一番うれしい変化です。
会社として研修やルール作りから入れたい場合は研修・相談へ、まず個人で試したい場合は無料教材・PDFから始めてみてください。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
まずは無料PDFで基本コマンドと最初の使い方をまとめて確認してください。登録後はそのままテンプレート集や導入相談にも進めます。
スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
Claude Codeを仕事で使える形にしませんか?
まず無料PDFで基本を固め、繰り返し使う作業はGumroad教材へ、チーム導入や権限設計は導入相談へ進めます。
この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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