税理士事務所の「顧問先への説明文と確認チェックリスト」をClaude Codeで作る実務術
税理士事務所で毎月発生する顧問先メールと確認リスト作成を、Claude Codeで雛形化する実務手順。プロンプト・チェックリスト・検証スクリプトをそのまま使える形で紹介。
月初の朝、僕の知り合いの税理士はいつも同じため息をつきます。
「またこの文面、ゼロから書くのか」と。
顧問先30社それぞれに、今月の試算表ができたこと、確認してほしい箇所、提出が必要な書類を伝えるメール。内容はどの会社も8割同じなのに、社名と数字と「ここだけ特殊な事情」を差し替えるために、毎回まっさらな画面から打ち直している。挙句、急いで送ったメールに「貴社の消費税は」と書くべきところを別の顧問先の社名で送ってしまい、平謝りの電話を1本入れる羽目になる。
この「8割同じだけど、2割は絶対に間違えられない」作業。ここが税理士事務所の地味な消耗ポイントです。今日はこれを、Claude Codeに下書きさせて人が最終判断する形に組み替える話をします。
この記事の要点
- 税理士事務所の顧問先メールと確認チェックリストは「型」が決まっているので、Claude Codeで雛形を作ると毎月の打ち直しが消える
- AIに任せるのは「文面の組み立てと抜け漏れ確認」まで。税額の正誤・適用要件・最終送信は必ず人が判断する
- 顧問先の決算データや個人情報は、固有名詞と数字を伏せてから渡すのが安全。事務所のルールを1枚決めておく
- 実務でそのまま使えるプロンプト雛形、確認チェックリスト、抜け漏れを機械的に検出する検証スクリプトを載せた
- 月20社で試算すると、1社あたり15分の短縮で月5時間。補助スタッフの残業を月単位で削れる規模
まず、税理士事務所のこの作業を分解する
読者として想定しているのは、顧問先を10〜50社抱える中小の税理士事務所です。所長税理士が1〜3人、記帳代行や巡回監査を回す補助スタッフが数人。会計ソフトはマネーフォワードや弥生、freeeあたり。こういう事務所が一番多いはずです。
毎月の顧問先対応は、だいたいこの流れで進みます。
- 会計ソフトで月次の試算表・推移表を確定させる
- 異常値や前月比の大きい増減をスタッフが拾う
- 顧問先に「試算表ができた」「ここを確認してほしい」とメールする
- 顧問先から領収書の不足や勘定科目の質問が返ってくる
- 決算期が近い顧問先には、別途その月の確認チェックリストを送る
このうち3と5、つまり「説明文を書く」「確認リストを作る」が、毎月ほぼ手作業で発生します。内容の骨格は固定なのに、文章にする手間が毎回かかる。ここがClaude Codeの出番です。
よくある手戻りと、導入前後の変化
手戻りの正体を具体的に挙げます。心当たりがあるはずです。
| よくある手戻り | 原因 | 起きる結果 |
|---|---|---|
| 別の顧問先の社名や数字を残したまま送信 | 前回メールをコピペして差し替え漏れ | 謝罪と信頼低下 |
| 確認してほしい箇所の説明が毎回バラバラ | 担当者ごとに書き方が違う | 顧問先が混乱、問い合わせ増 |
| 決算前チェックの項目が抜ける | リストが個人の記憶頼み | 申告直前に書類不足が発覚 |
| 専門用語が硬すぎて顧問先に伝わらない | 税務の言葉のまま送る | 「結局どうすれば?」と再質問 |
導入前は、スタッフが空のメール画面と向き合って「えーっと先月どう書いたっけ」から始めていました。導入後は、その月の数字と特記事項を箇条書きで渡すだけで、事務所の標準トーンに沿った下書きが数十秒で出てきます。スタッフの仕事は「ゼロから書く」から「出てきた下書きを税理士の目で直す」に変わります。
頭がまっさらな状態で文章をひねり出すより、たたき台を直すほうが速いし疲れない。これは記帳や申告書作成と同じで、ゼロイチより校正のほうが軽いという話です。Claude Codeをまだ触ったことがなければ、まずClaude Codeをはじめて触る人の入門ガイドに目を通すと、この後のプロンプトがそのまま動かせます。
Use case 1:月次試算表の連絡メールを雛形化する
毎月の「試算表できました」メール。これを、数字と特記事項を渡すだけで下書きさせます。
まず、事務所の標準トーンを1回だけ言語化します。これをプロンプトの先頭に置けば、誰がやっても同じ品質になります。
あなたは税理士事務所の補助スタッフです。顧問先へ送る月次試算表の連絡メールの下書きを作ってください。
# 事務所のトーン
- 敬体(ですます調)。専門用語は1回ごとに平易な言い換えを添える
- 1文は短く。確認してほしい箇所は番号付きリストで
- 金額は受け取った数字をそのまま使い、推測で補わない
# 今月の情報
- 顧問先名:__(ここに社名)
- 対象月:__年__月度
- 前月比で大きく動いた科目:__(例:交際費が前月比+18万円)
- 確認してほしいこと:__(例:5/12の現金出金10万円の用途)
- 不足している書類:__(例:4月分のクレジット明細)
# 出力
件名と本文。最後に「ご不明点はお気軽にご連絡ください」で締める。
推測した数字や事実があれば、本文の最後に【要確認】として箇条書きで明示する。
最後の「推測したことを【要確認】として明示させる」が肝です。AIは空欄を埋めたがるので、勝手に補った箇所を自己申告させると、人のチェックが一気に楽になります。
プロンプトの書き方そのものを底上げしたいなら、Claude Codeのプロンプト設計を一段深くする記事で「役割・制約・出力形式」を固める考え方が役立ちます。
Use case 2:決算前の確認チェックリストを生成する
決算月が近づくと、顧問先ごとに「これ揃ってますか」を確認します。この項目を毎回スタッフの記憶で組み立てると、必ずどこかが抜けます。
そこで、事務所の標準チェック項目をテキストファイル1枚にまとめておき、顧問先の業種に合わせて取捨選択させます。
次のマスター項目から、この顧問先に該当するものだけを選び、決算前確認チェックリストを作ってください。
# 顧問先の前提
- 業種:__(例:飲食店、1店舗)
- 法人/個人:__
- 消費税の課税区分:__(例:原則課税 / 簡易課税 / 免税)
# マスター項目
- 売上の計上漏れ(締め日後の売上、未請求分)
- 棚卸資産の数量と評価
- 固定資産の取得・除却・減価償却
- 借入金の返済予定表と利息
- 役員報酬・賞与の支給実態
- 在庫を持つ業種は廃棄ロスの計上
- 現金商売は現金残高と帳簿の一致
- 消費税の課税区分ごとの集計
# 出力
チェックボックス形式(- [ ])。各項目に「なぜ確認するか」を1行で添える。
該当しない項目は省く。判断に迷う項目は末尾に【税理士確認】としてまとめる。
業種を「飲食店」と入れれば現金残高や廃棄ロスが残り、「ITの受託開発」と入れれば棚卸が落ちる、という具合に、その顧問先に必要な分だけが出てきます。
出力例はこういう形になります。
## ○○商店 決算前確認チェックリスト(4月決算)
- [ ] 締め日後の売上が翌期にずれていないか(計上時期のズレは税額に直結)
- [ ] 4/30時点の棚卸数量と単価(在庫の評価額が利益を左右)
- [ ] レジ現金と帳簿残高の一致(現金商売は差異が出やすい)
- [ ] 廃棄した食材ロスの計上漏れ(原価に反映されているか)
【税理士確認】
- 簡易課税のみなし仕入率の事業区分が今期も妥当か
Use case 3:顧問先からの質問への返信下書き
「この勘定科目って何ですか」「この経費は落とせますか」。顧問先からのこういう質問は、答えの方向性は決まっているのに、毎回ていねいに文章化するのが面倒です。
ここで大事なのは、AIに税務判断そのものをさせないこと。判断は税理士が一言で示し、AIは「それを顧問先にわかる言葉へ翻訳する」係に徹させます。
顧問先からの質問に、税理士の方針メモをもとに、わかりやすい返信文を作ってください。
税法の解釈や可否の判断は方針メモに従い、あなたは判断を足したり変えたりしないこと。
# 顧問先の質問
「打ち合わせで使ったカフェ代は経費になりますか?」
# 税理士の方針メモ(この内容だけに従う)
- 業務上の打ち合わせなら会議費として可
- ただし相手・目的を記録すること。私的なものは不可
# 出力
やわらかい敬体で。専門用語(会議費など)は短く補足する。
方針メモにない例外は書かない。
これで「会議費として計上できます。ただし、誰とどんな目的でという記録を残してください」といった返信が、トーンを保ったまま出てきます。
AIに任せる範囲と、人が必ず判断する範囲
ここが税理士事務所では最重要です。線引きをはっきりさせます。
| 工程 | Claude Codeに任せる | 人(税理士)が判断する |
|---|---|---|
| 文面の組み立て | ○ 下書き生成 | 最終的な言い回しの承認 |
| 抜け漏れの洗い出し | ○ チェック項目の列挙 | 項目の要否の最終判断 |
| 税額・税率の計算 | × させない | ◎ 必ず人が計算・検算 |
| 適用要件の判断 | × させない | ◎ 特例・要件は人が確定 |
| 顧問先への送信 | × させない | ◎ 送信ボタンは必ず人 |
覚え方はシンプルです。「書く・並べる」はAI、「正しいかを決める・送る」は人。税額や適用可否をAIに聞いて鵜呑みにするのは、計算機を信じずに勘で電卓を叩くのと同じくらい危険です。AIが出した数字や要件は、必ず元資料と突き合わせてください。
非エンジニアのスタッフにこの線引きを共有する土台として、非エンジニアがClaude Codeを安全に使い始める記事を事務所内で1本回しておくと、変な使い方の事故が減ります。
セキュリティと個人情報の注意点
顧問先の決算データは、れっきとした個人情報・機密情報です。ここは妥協しないでください。
- 固有名詞と具体的な金額は伏せて渡す:プロンプトに渡すときは「A社」「売上◯◯円」のように匿名化する。出てきた下書きに、後から正しい社名と数字を人が入れる
- 事務所のAI利用ルールを1枚で決める:どのツールに何を入れてよいか、入れてはいけないか(マイナンバー、口座番号、生の決算書PDFなど)を明文化する
- 送信前の目視を必須にする:AIが作った文面は、必ず担当税理士が読んでから送る。自動送信はしない
- 会計ソフトと直接つながない:当面は手元のコピペ運用に留め、本番データへの自動書き込みは避ける
事務所のルールをチームで共有する具体的な方法は、CLAUDE.mdベストプラクティスの記事が参考になります。プロジェクトのルールをファイル1枚に書いておくと、誰が使っても同じ前提で動かせます。利用にあたっては、個人情報の取り扱いについて個人情報保護委員会の公式ガイドラインも一度確認しておくと安心です。
コピペで使える:抜け漏れ検出スクリプト
下書きメールに「差し替え忘れ」が残っていないか、機械的に検出する小さなスクリプトです。前の顧問先の社名が残っている、金額のプレースホルダ(__)が埋まっていない、といった事故を送信前に弾きます。Node.jsがあれば動きます。
check-draft.mjs として保存し、node check-draft.mjs draft.txt で実行します。
import { readFile } from "node:fs/promises";
const file = process.argv[2];
if (!file) {
console.error("使い方: node check-draft.mjs draft.txt");
process.exit(1);
}
const text = await readFile(file, "utf8");
// この顧問先の正しい社名(送る相手)をここに入れる
const correctClient = process.env.CLIENT_NAME || "○○商店";
// 過去メールで使いがちな他社名。事務所の実態に合わせて足す
const otherClients = ["株式会社サンプル", "テスト工業", "△△クリニック"];
const issues = [];
// 1) 埋め忘れプレースホルダ
if (text.includes("__")) issues.push("プレースホルダ __ が残っています");
// 2) 【要確認】タグの有無を知らせる(消し忘れ確認のため)
if (text.includes("【要確認】")) issues.push("【要確認】が残っています。内容を確認してください");
// 3) 他の顧問先名の混入
for (const name of otherClients) {
if (text.includes(name)) issues.push(`別の顧問先名「${name}」が含まれています`);
}
// 4) 送る相手の社名が一度も出てこない
if (!text.includes(correctClient)) {
issues.push(`宛先「${correctClient}」が本文に見当たりません`);
}
if (issues.length === 0) {
console.log("チェックOK:送信前の最終目視に進んでください");
} else {
console.log("要修正:");
for (const i of issues) console.log(" - " + i);
process.exit(1);
}
完璧な検出ではありません。ですが「前の会社名が残ったまま送信」という一番怖い事故は、これだけでほぼ止まります。otherClients に自分の顧問先名を並べておくのがコツです。Claude Codeなら、このスクリプトを「うちの顧問先10社の名前を配列に入れて」と頼むだけで書き換えてくれます。
簡単なROIの目安
ざっくり試算します。顧問先20社、月次連絡メールと確認リストを毎月作るとして、1社あたり手書きで20分かかっていたとします。
- 導入前:20社 × 20分 = 月400分(約6.7時間)
- 導入後:下書き+目視修正で1社5分 = 20社 × 5分 = 100分(約1.7時間)
- 差:月およそ5時間の短縮
補助スタッフの時給を2,000円とすれば、月1万円分の工数。決算期はこの効果がさらに膨らみます。金額より大きいのは、「社名間違いで謝る電話」が消えることかもしれません。
数字を追わずに小さく試したい人は、Claude Codeの生産性を上げる小ワザ集から1つだけ取り入れるところから始めると、続けやすいです。
よくある質問
Q. 税額の計算までClaude Codeに任せていいですか? だめです。AIは説明文を組み立てるのは得意ですが、税額や適用要件の正誤は保証しません。計算と判断は必ず税理士が行い、AIは「決まった内容を顧問先向けに言い換える」係に留めてください。
Q. 顧問先の決算書をそのまま貼り付けても平気ですか? 避けてください。社名・金額・マイナンバーなどは伏せ、匿名化したうえで渡すのが原則です。出てきた下書きに、正しい固有名詞を人が後から入れる運用が安全です。
Q. パソコンが苦手なスタッフでも使えますか? 使えます。やることは日本語で頼んでチェックするだけです。最初は所長が雛形プロンプトを1つ用意し、スタッフはそれに数字を流し込むところから始めると、つまずきません。
Q. 会計ソフトと自動連携できますか? 技術的には可能ですが、最初はおすすめしません。本番データへの自動書き込みは事故の影響が大きいので、当面はコピペ運用で「下書きを作る」用途に絞るのが安全です。
Q. 出てきた文章の品質はどうやって担保しますか? 事務所の標準トーンをプロンプトの先頭に固定し、上のチェックスクリプトで機械的な事故を弾き、最後に税理士が目視する。この3段構えで、担当者による品質のばらつきが減ります。
実際に試した結果
僕は実際に、架空の顧問先5社分の月次連絡メールを、上の雛形プロンプトとチェックスクリプトで作ってみました。
確かめたかったのは2点。ひとつは「事務所トーンを先頭に固定すると、社ごとに文面のブレが本当に消えるか」。結果は、5社すべて同じ硬さ・同じ締め方で揃いました。番号付きリストの粒度まで一定でした。
もうひとつは「他社名の混入をスクリプトが拾えるか」。わざと1通だけ前の会社名を残してチェックを走らせたら、別の顧問先名「テスト工業」が含まれています ときっちり止まりました。プレースホルダの __ 残しも検出できました。
逆に分かった限界もあります。AIは消費税の課税区分を聞くと、それらしい説明を自信たっぷりに返してきますが、簡易課税のみなし仕入率の事業区分を1つ間違えていました。やはり判断は人です。下書きと抜け漏れ確認はAI、正誤と送信は税理士。この線引きを守る限り、月次の消耗はかなり軽くなる、というのが試した実感です。
事務所単位で本格的に業務へ組み込みたい場合は、研修・相談で事務所の業務フローに合わせた設計を一緒に詰められます。まず個人で手を動かして慣れたい人は、教材・無料PDFから触ってみてください。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
まずは無料PDFで基本コマンドと最初の使い方をまとめて確認してください。登録後はそのままテンプレート集や導入相談にも進めます。
スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
Claude Codeを仕事で使える形にしませんか?
まず無料PDFで基本を固め、繰り返し使う作業はGumroad教材へ、チーム導入や権限設計は導入相談へ進めます。
この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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