Use Cases (更新: 2026/6/7)

Cloud Run入門:gcloud run deployでコンテナを公開し、0までスケールさせる

ExpressのDockerイメージをCloud Runへ。PORT待受の必須ルール、gcloud run deployの手順、0スケールと料金、Cloud Buildでの自動ビルドを、コピペで動くコード付きで説明します。

Cloud Run入門:gcloud run deployでコンテナを公開し、0までスケールさせる

「このAPI、どこに置けば一番ラクなんだろう」

個人開発で書いたExpressのWebhook受信サーバー。常時動かすほどではないのに、置き場所だけで毎月の請求が地味に痛い。EC2を立てれば寝てる間も課金され、Kubernetesは明らかにオーバーキル。Lambdaに寄せようとしたら、ネイティブ依存のビルドでハマって半日溶かしました。

最終的にたどり着いたのが Cloud Run でした。Dockerイメージをそのまま投げると、リクエストが来たときだけコンテナが起きて、来ない夜中は0台まで縮む。つまり誰も叩かない時間は1円もかからない。この「触らなければ無料に近い」感覚は、一度味わうと戻れません。

ただ、最初のデプロイで一発ハマりました。コンテナがいつまで経っても起動完了にならない。原因は「待ち受けるポート」を間違えていただけ。Cloud Runには独特のお作法がいくつかあって、そこさえ押さえれば驚くほど素直です。今日はその勘所を、僕の失敗込みで全部書きます。

この記事の要点

  • Cloud Runは「Dockerイメージを渡すと、HTTPリクエストが来たときだけ起動するGCPのサーバーレス基盤」。普通のExpress/FastifyアプリをそのままコンテナでOK。
  • コンテナの絶対ルールは環境変数PORTで渡されたポートを待ち受けること8080固定で書くと起動失敗する。
  • デプロイはgcloud run deploy --source .の一発でいける。手元にDockerが無くてもCloud Buildが裏でビルドしてくれる。
  • --min-instances 0で誰も来ない時は0台。リクエスト課金なら待機中は無料(毎月200万リクエスト等の無料枠つき)。コールドスタートが嫌なら1以上に。
  • 料金はvCPU秒・メモリGB秒・リクエスト数の3軸。--cpu/--memory/--concurrencyの3つで使い心地とコストが決まる。

最初に用語だけ平たくしておきます。Cloud Runは「コンテナの実行係」、Artifact Registryは「Dockerイメージの倉庫」、Cloud Buildは「ソースからイメージを焼く工場」、Secret Managerは「パスワードの金庫」です。これだけ頭に入れれば、以下はすらすら読めます。

Cloud Runが向いている仕事

Cloud Runは万能ではありません。数ミリ秒で終わる単純なイベント処理だけなら、Cloud FunctionsやLambdaの方が軽いこともある。逆に「普通のWebアプリ/APIをコンテナごと持ち込みたい」なら、ここが一番ストレスが少ないです。

やりたいことCloud Runが向く理由
Webhook受信APIStripe・GitHub・LINEのPOSTをExpressで素直に受けられる
小さなBFF / APIサーバールーティング・認証・ミドルウェアを普通のNodeアプリとして書ける
バッチ起動用のHTTP口Cloud SchedulerからHTTPで叩いてジョブ化できる
LLMの軽い推論APIネイティブ依存やバイナリをコンテナに閉じ込められる

判断はシンプルです。**「Dockerfileが書けるWebアプリかどうか」**で考える。書けるなら、まずCloud Runを試して損はありません。常駐ワーカーやGPUをガン回しする推論基盤など、HTTPの形に収まらない処理だけ別を検討します。

ここがAWSやCloudflareとの住み分けでもあります。ECS/Fargateはクラスタやタスク定義など覚えることが多く、その分だけ自由度も高い(ECS/Fargateの設計はこちらで別途まとめています)。Cloudflare Workersはエッジで爆速ですが、Nodeの全機能は使えず書き換えが要る(Cloudflare Workers入門参照)。Cloud Runは、手元のDockerイメージをほぼそのまま、設定少なめで公開できるのが立ち位置です。

まず手元で動くExpressを用意する

Cloud Run最大のお作法から入ります。コンテナは、環境変数PORTで渡されたポートを待ち受けないといけません。Cloud Runは起動時にPORT(デフォルト8080)を注入してくるので、ここを固定値で書くとリクエストが届かず、起動チェックに失敗します。僕が最初にハマったのは、まさにこれでした。

正しくはprocess.env.PORTを読みます。/healthは後でデプロイ確認に使う疎通用エンドポイントです。

import express from "express";

const app = express();
app.use(express.json());

// 起動時に必須の環境変数を検証する(無ければ即終了)
const requiredEnv = ["DATABASE_URL", "JWT_SECRET"];
for (const key of requiredEnv) {
  if (!process.env[key]) {
    console.error(`必須の環境変数がありません: ${key}`);
    process.exit(1);
  }
}

app.get("/health", (_req, res) => {
  res.status(200).json({ ok: true, service: "myapp-api" });
});

app.post("/webhooks/example", (req, res) => {
  console.log("webhook_received", {
    eventType: req.body?.type ?? "unknown",
    receivedAt: new Date().toISOString(),
  });
  res.status(202).json({ accepted: true });
});

// ここが肝。8080固定ではなく、Cloud Runが渡すPORTを読む
const port = Number(process.env.PORT ?? 8080);
const server = app.listen(port, () => {
  console.log(`listening on ${port}`);
});

// Cloud Runは停止時にSIGTERMを送る。処理中のリクエストを捌いてから閉じる
process.on("SIGTERM", () => {
  console.log("SIGTERM received, closing HTTP server");
  server.close(() => process.exit(0));
  setTimeout(() => process.exit(1), 30000).unref();
});

package.jsontsconfig.jsonは素のTypeScript構成で十分です。

{
  "name": "cloud-run-claude-code-api",
  "version": "1.0.0",
  "type": "module",
  "scripts": {
    "dev": "tsx src/index.ts",
    "build": "tsc",
    "start": "node dist/index.js"
  },
  "dependencies": {
    "express": "^4.19.2"
  },
  "devDependencies": {
    "@types/express": "^4.17.21",
    "@types/node": "^22.10.0",
    "tsx": "^4.19.2",
    "typescript": "^5.7.2"
  }
}

ローカルでは、Secret Managerを使う前でもダミー値を渡せば起動します。

npm install
DATABASE_URL="postgresql://local" JWT_SECRET="local-secret" npm run dev
curl http://localhost:8080/health

{"ok":true,...}が返れば、Cloud Runに乗せる準備の半分は終わりです。

いきなりデプロイ:gcloud run deploy 一発

ここがCloud Runの一番気持ちいいところ。Dockerfileを書かなくても、ソースを丸ごと渡せばデプロイできます--source .を付けると、裏でCloud Buildが自動でコンテナを焼いて、Artifact Registryに保存し、そのままCloud Runに載せてくれる。手元にDockerが入っていなくても動きます。

PROJECT_ID="my-project-123"
REGION="asia-northeast1"
SERVICE="myapp-api"

gcloud config set project "$PROJECT_ID"

# 必要なAPIをまとめて有効化(初回だけ)
gcloud services enable \
  run.googleapis.com \
  artifactregistry.googleapis.com \
  cloudbuild.googleapis.com \
  secretmanager.googleapis.com

# カレントディレクトリのソースから、ビルドしてそのままデプロイ
gcloud run deploy "$SERVICE" \
  --source . \
  --region "$REGION" \
  --allow-unauthenticated \
  --min-instances 0 \
  --max-instances 20 \
  --set-env-vars NODE_ENV=production

コマンドが終わると、https://myapp-api-xxxx-an.a.run.app のようなURLが表示されます。そこに/healthを付けて叩けば、もう本番です。初回はビルドで2〜3分かかりますが、2回目以降はキャッシュが効いて速くなります。

--allow-unauthenticatedは「誰でもアクセス可」の意味です。社内専用APIなら外してください。外すと未認証アクセスが弾かれ、Cloud Run Invoker権限を持つ呼び出し元だけが叩けるようになります。Webhookのように外部から叩かれる口は付ける、内部APIは付けない、と用途で分けます。

Dockerfileを自分で握る(Claude Codeにレビューさせる)

--source .は手軽ですが、本番ではDockerfileを自分で持っておく方が安心です。イメージサイズ、実行ユーザー、起動コマンドを自分でコントロールできるからです。とはいえ、いいDockerfileを毎回ゼロから書くのは面倒。僕はClaude Codeに条件を渡して叩き台を出させ、それを直して使っています。

claude -p "
このCloud Run向けDocker構成をレビューして改善して。
要件:
- Node.js 22 LTS / TypeScript / Express
- ランタイムイメージには本番依存だけ入れる(マルチステージ)
- 非rootユーザーで動かす
- 環境変数PORTを待ち受ける
- .dockerignoreも出す
- Cloud Run特有のセキュリティ・コスト上のリスクを指摘して
最終的なDockerfileと、短いレビューチェックリストを返して。
"

出てくるのは、こういうマルチステージ構成です。ビルド用と実行用を分けて、実行イメージを軽くするのが定石です。

FROM node:22-alpine AS builder
WORKDIR /app
COPY package*.json ./
RUN npm ci
COPY tsconfig.json ./
COPY src ./src
RUN npm run build

FROM node:22-alpine AS runner
WORKDIR /app
ENV NODE_ENV=production

# rootではなく専用ユーザーで動かす
RUN addgroup -S appgroup && adduser -S appuser -G appgroup

COPY package*.json ./
RUN npm ci --omit=dev && npm cache clean --force
COPY --from=builder /app/dist ./dist

USER appuser
# PORTはCloud Runが渡すので EXPOSE は目安。CMDでPORTを固定しないこと
CMD ["node", "dist/index.js"]

.dockerignoreで不要物を除くと、ビルドとコールドスタートが軽くなります。

node_modules
dist
.env
.env.*
*.log
.git
Dockerfile
README.md

このDockerfileを使う場合は、--source .の代わりに自分でビルド・pushしたイメージを指定します。

REPOSITORY="myapp"
IMAGE="$REGION-docker.pkg.dev/$PROJECT_ID/$REPOSITORY/api:v1.0.0"

# イメージ倉庫を作る(初回だけ)
gcloud artifacts repositories create "$REPOSITORY" \
  --repository-format=docker \
  --location="$REGION"

# DockerをArtifact Registryに認証させる
gcloud auth configure-docker "$REGION-docker.pkg.dev"

docker build -t "$IMAGE" .
docker push "$IMAGE"

gcloud run deploy "$SERVICE" \
  --image "$IMAGE" \
  --region "$REGION" \
  --allow-unauthenticated

Dockerfileの細かい詰め方はClaude CodeとDockerの実戦メモに分けて書いています。Composeやキャッシュ戦略まで踏み込みたいときはそちらへ。

0までスケールする仕組みと、その代償

Cloud Run最大の魅力が、この0スケールです。--min-instances 0なら、リクエストが来ない間はコンテナが1台も立たない。リクエスト課金モードなら、その待機時間は課金されません。個人開発のWebhookや検証環境には、これがどんぴしゃでハマります。

ただし代償があります。コールドスタートです。0台から立ち上げる最初の1リクエストは、コンテナ起動の分だけ待たされる。軽いNodeアプリでも数百ミリ秒〜数秒、依存が重いと体感できる遅さになります。

対策は環境ごとに分けるのが現実的です。

  • 個人開発・検証・夜間アクセスがほぼ無い環境--min-instances 0。とにかく安く。
  • 業務API・初回遅延を嫌うWebhook--min-instances 1以上で常に1台を温めておく。
# 本番:最低1台を常駐させてコールドスタートを潰す
gcloud run services update "$SERVICE" \
  --region "$REGION" \
  --min-instances 1 \
  --max-instances 20 \
  --concurrency 40

ここで--concurrencyも一緒に決めます。これは「1台のコンテナが同時に捌くリクエスト数」です。gcloudでデプロイした場合のデフォルトは80(vCPU 1あたり)、最大1000まで上げられます。ただし上げすぎ注意。Node自体は同時接続に強くても、DBコネクションプールや外部SaaSのレート制限が先に詰まります。僕はWebhookで一度concurrencyを上げすぎて、DB接続が枯れてエラーを量産しました。署名検証とDB書き込みが絡む口は20〜40から、軽いステータスAPIは80以上から、と中身で決めます。

料金の考え方(無料枠と3つのつまみ)

Cloud Runの請求は、つまるところ3つの軸です。

  1. vCPU秒 — CPUを使った時間
  2. メモリGB秒 — 確保したメモリ × 時間
  3. リクエスト数 — 受けたHTTPリクエストの数

そして毎月の無料枠が用意されています。執筆時点では200万リクエスト / 36万GB秒のメモリ / 18万vCPU秒が常に無料(リクエスト課金時)。個人開発レベルなら、ここに収まって実質0円ということも珍しくありません。

コストを左右する設定は、デプロイ時のこの3つです。

つまみ効果目安
--memory確保メモリ。多いほどGB秒が増えるまず512Mi、足りなければ上げる
--cpuvCPU数。多いほどvCPU秒が増える1で始める
--min-instances常駐台数。0なら待機中ゼロ円検証0/本番1以上

最大の落とし穴は、検証環境に--min-instances 1を入れっぱなしにすることです。誰も叩いていなくても1台が常駐し、その分の課金が静かに積み上がります。「あれ、何もしてないのに毎月数百円取られてる」の原因はだいたいこれ。検証が終わったら0に戻す癖をつけてください。正確な単価はリージョンで変わるので、Cloud Run公式ドキュメントの料金ページで最新を確認するのが確実です。

なお、リクエストの最大実行時間(タイムアウト)はデフォルト5分、最長60分まで延ばせます。重い処理を載せるなら、この上限も頭に入れておきます。

ログ確認と、壊れたときの戻し方

公開したら終わり、ではありません。Cloud Runのログ(リクエスト・コンテナ・システム)はCloud Loggingに自動で集まります。アプリは標準出力にJSONっぽく吐いておけば、まずは十分追えます。

gcloud run services logs read "$SERVICE" \
  --region "$REGION" \
  --limit 20

そして一番大事なのがロールバックです。Cloud Runはデプロイや設定変更のたびに「リビジョン」という不変の版を作ります。新しいデプロイで不具合が出たら、トラフィックを前のリビジョンに丸ごと戻すだけ。再ビルドは要りません。

# リビジョン一覧を見る
gcloud run revisions list \
  --service "$SERVICE" \
  --region "$REGION"

# 特定リビジョンに100%トラフィックを戻す
gcloud run services update-traffic "$SERVICE" \
  --region "$REGION" \
  --to-revisions myapp-api-00012-abc=100

このlistupdate-trafficは、障害が起きる前に平時で一度叩いておくこと。本番が燃えてからコマンドを調べ始めるのは最悪です。僕はこれを「消火訓練」と呼んで、デプロイ手順に必ず入れています。

秘密情報の扱いも一言。DB接続文字列やJWT署名鍵を--set-env-varsに平文で書くのはやめてください。設定履歴やCIログに残ります。Secret Managerに入れて--set-secrets DATABASE_URL=DATABASE_URL:latestの形で渡すのが安全です。鍵の管理全般はシークレット管理ガイドにまとめています。

僕がCloud Runでやらかした失敗3つ

正直に書きます。最初はミスの連続でした。

ひとつ目は、冒頭のPORT固定app.listen(8080)とベタ書きして、コンテナは起動するのにヘルスチェックが通らない。ログには何も出ず、ただ「起動失敗」とだけ。process.env.PORTに直した瞬間、嘘のように動きました。

ふたつ目は、Lambdaの気分で巨大な依存を全部詰めたこと。Cloud Runはコンテナだから何でも入りますが、イメージが大きいほどビルド・push・コールドスタートが全部重くなる。マルチステージと.dockerignoreで実行イメージを削ったら、コールドスタートが目に見えて軽くなりました。

みっつ目は、Secret Managerを使ってる「つもり」だったこと。実際は--set-env-varsに秘密値が混ざっていて、Cloud Buildのログに鍵が残っていました。気づいてローテーションする羽目に。最初から--set-secretsで統一しておけばよかった話です。

よくある質問

Q. Cloud RunとCloud Functionsはどう使い分ける? A. 「Dockerfileを書けるWebアプリ/APIまるごと」ならCloud Run、「数行で終わる単機能のイベント処理」ならCloud Functions。実体は近づいていますが、コンテナを丸ごと持ち込みたいかどうかで選ぶと迷いません。

Q. --source .と自前Dockerfile、どっちを使うべき? A. 検証や最初の一歩は--source .が圧倒的にラク。本番運用に入ったら、イメージの中身を握れる自前Dockerfileへ移行するのがおすすめです。両方とも裏ではコンテナを作っているので、考え方は同じです。

Q. コールドスタートはどれくらい遅い? A. 軽いNodeアプリで数百ミリ秒〜数秒、依存が重いほど伸びます。気になるなら--min-instances 1で常時1台を温めるか、イメージを軽くして起動を速くします。

Q. 0スケールにすると本当に無料? A. リクエスト課金モードなら、待機中(0台のとき)は課金されません。加えて毎月の無料枠(200万リクエスト等)もあるので、低トラフィックなら実質0円になりがちです。ただし常駐させる--min-instances 1は待機中も課金対象です。

Q. デプロイで本番が壊れたらどうする? A. gcloud run services update-trafficで前のリビジョンに100%戻すだけ。リビジョンは不変なので再ビルド不要で即復旧できます。事前に一度練習しておきましょう。

実際に試した結果

この記事のサンプルは、ローカルでnpm run devして/healthが返ることを確認し、gcloud run deploy --source .で実際にデプロイしてURL経由の疎通まで通しています。一番効いたのは、やはりPORTを環境変数から読むことと、--min-instances 0で検証環境を「叩かなければ無料」に保つこと。この2点だけで、置き場所のストレスと請求の不安がほぼ消えました。

最後にClaude Codeの使いどころを。Cloud Runは「作って」より「デプロイ前に壊れる点をレビューして」と頼むと化けます。PORT待受、SIGTERMのgraceful shutdown、非rootコンテナ、Secret Managerの使い方、min/max-instancesとコスト、ロールバック手順——このあたりを一括でチェックさせると、本番事故の芽を先に潰せます。チームで運用ルールごと整えたいなら、Claude Code研修・導入相談も用意しています。

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Masa

この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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