Use Cases (更新: 2026/6/7)

エステサロンのカウンセリングシートとフォローメールをAIで作る実務手順

エステサロンの施術前カウンセリングシートとアフターフォローメールを、Claude Codeと生成AIで雛形化する手順。プロンプト・チェックリスト・個人情報の注意点まで。

エステサロンのカウンセリングシートとフォローメールをAIで作る実務手順

金曜の夜19時、最後のお客様を見送ったあと、僕の友人が経営する小さなエステサロンのオーナーはまだ帰れません。今日担当した6人ぶんのカルテを清書して、来週ボディ集中コースに入る常連さんへのフォローメールを書いて、初回の方には次回予約のお礼を送る。ここまでやって、やっと電気を消せる。

「施術より、この事務作業のほうがしんどい」と彼女は言いました。手書きのカウンセリングメモは字が走って後で読めないし、フォローメールは前に送った文面をコピペして名前だけ書き換える。すると先週、ボディの方にフェイシャルの案内を送ってしまった。気づいたのは送信ボタンを押した3秒後でした。

この「事務でへとへとになる夜」を減らせないか。僕は彼女のサロンを実験台にして、カウンセリングシートとフォローメールの作成をAIに半分肩代わりさせてみました。結論を先に言わず、まず何が変わったかから書きます。

この記事の要点

  • エステサロンの事務で一番時間を食う「カウンセリングシートの清書」と「フォローメールの作成」は、雛形をAIに作らせれば1人あたり数分まで縮む。
  • AIに任せるのは文章の下書きと体裁の整え。お肌や体調の判断、薬機法に触れる表現のチェック、送信ボタンは必ず人が押す。
  • 個人情報は「実名・連絡先をAIに渡さない」が鉄則。記号に置き換えて入力し、戻すときだけ手元で名前を埋める。
  • コピペで使えるカウンセリング雛形プロンプトと、フォローメールを差し込みで一括生成する検証用スクリプトを置いた。
  • 導入前は1日6人で約60分かかっていた事務が、慣れると15分前後に。月20営業日なら15時間ぶんの余白が生まれる計算。

エステサロンの現場と、事務がこじれる理由

まず読者像をはっきりさせます。この記事が役に立つのは、スタッフ1〜5人の個人サロン、もしくは小規模チェーンで、フェイシャル・ボディ・脱毛・痩身あたりを扱っているオーナーやセラピストです。予約管理ソフトは入れているけれど、カウンセリングとメールは人の手で回している。そういう現場を想定しています。

エステの一日は、だいたいこう流れます。

  1. 予約確認とベッド・備品の準備
  2. ご来店、着替え、カウンセリング(お悩み・体調・既往歴のヒアリング)
  3. 施術
  4. アフターカウンセリング(自宅ケアの説明、次回提案)
  5. 会計、次回予約
  6. 営業後にカルテ清書とフォロー連絡

問題が起きるのは2と6です。カウンセリングでは、聞くべき項目が頭から抜けて「妊娠中ですか」を聞き忘れる、メモが殴り書きで後から読めない、お客様によって聞く深さがバラバラ。営業後の6では、疲れた頭でメール文面をひねり出すので、誤送信や塩対応な文章になりやすい。

手戻りの典型はこんなところです。

  • カウンセリングで既往歴を取りこぼし、施術当日に「実は金属アレルギーで」と発覚してメニュー変更
  • フォローメールのコピペミスで、別コースの案内や他人の名前が混入
  • 初回の方へのお礼が後回しになり、3日経ってから送って気まずい

どれも「能力がない」から起きるのではなく、疲れと単純作業の連続が原因です。ここはまさにAIが肩代わりしやすい部分です。

エステサロンでの3つの使い方

Use case 1:抜け漏れのないカウンセリングシートの雛形を作る

最初にやるべきは、毎回ゼロから書かないことです。お悩み・体調・既往歴・自宅ケア・次回提案までを一枚に収めた雛形を、AIに何パターンか作らせて、サロンに合うものを選びます。手書きで埋める紙版と、タブレットで打ち込むデジタル版の両方を出させると比較が早いです。

メニュー別に項目が変わるので、フェイシャル用・ボディ用・脱毛用で分けて作るのがコツです。下に走査しやすいよう、雛形に入れる必須項目をチェックリストにしました。

  • 主訴(今日一番気になっているお悩み)
  • 既往歴・通院中の有無、服薬の有無
  • アレルギー(金属・植物・化粧品)
  • 妊娠・授乳の有無
  • 当日の体調・睡眠・飲酒
  • 普段の自宅ケアと使用化粧品
  • 施術後の自宅ケア指示
  • 次回提案メニューと推奨間隔
  • 同意サイン欄

Use case 2:施術メモを清書してカルテ文に整える

走り書きのメモを、お客様に見せられる丁寧なカルテ文に整えるのもAIの得意分野です。「Tゾーン乾燥強め、頬に赤み、肩こり酷い、ホットストーン提案」みたいな断片を渡すと、施術内容・お客様の状態・次回の提案がそろった日本語に直してくれます。ここで大事なのは、内容の正しさは人が確認することです。AIは「赤み」を勝手に「炎症」と言い換えることがあり、医療的な断定は薬機法の観点でも避けたいからです。

Use case 3:お客様の状況に合わせたフォローメールを下書きする

一番効くのがここです。来店翌日のお礼、施術後の自宅ケアリマインド、次回コースの提案。これらを「相手の状況」を変数にして雛形化しておけば、名前・コース・次回日程を差し込むだけで個別感のある文面が出ます。後半に、表計算の顧客リストから一括で下書きを作る検証スクリプトを置きました。

下は「AIに任せる範囲」と「人が必ず決める範囲」の切り分けです。迷ったらこの表に戻ってください。

工程AIに任せてよい人が必ず判断する
カウンセリング雛形項目の洗い出し・文面整形自店メニューに合うか最終決定
施術メモの清書断片メモを読める文章へ肌・体調の医療的判断、表現の妥当性
フォローメール文面の下書き・トーン調整送信先の取り違えチェック、送信
提案メニュー一般的な間隔の提示そのお客様に本当に合うか
個人情報の扱い記号化済みデータの整形実名・連絡先の管理、送信可否

詳しい頼み方の型は Claude Code高度なプロンプトエンジニアリング に踏み込んだ内容があるので、文面の精度をもう一段上げたい人はそちらも合わせて読んでください。

コピペで使えるカウンセリング雛形プロンプト

まずはカウンセリングシートの雛形。次の指示をそのまま貼って、メニュー名だけ書き換えてください。実名や連絡先は入れず、空欄のテンプレートを作らせるのがポイントです。

あなたは経験豊富なエステサロンのカウンセラーです。
「フェイシャル初回」のお客様用に、紙で記入できるカウンセリングシートの雛形を作ってください。

条件:
- 項目は「主訴」「既往歴・服薬」「アレルギー」「妊娠・授乳」「当日の体調」
  「普段の自宅ケア」「施術後の指示」「次回提案」「同意サイン」を必ず含める
- 各項目は記入しやすい質問文と、選択肢があるものはチェック欄付きにする
- 医療行為と誤解される表現、効果を断定する表現は使わない
- A4一枚に収まる分量にする
- 出力は見出しと箇条書きのみ。実在の個人情報は一切入れない

フォローメールの下書きは、状況を変数にして頼みます。ここでも名前は記号のままにします。

エステサロンのアフターフォローメールを3案、丁寧で押し付けがましくないトーンで書いてください。

前提:
- 宛先の呼び名は「{{お客様}}」のまま(実名は入れない)
- 受けたメニュー: {{メニュー}}
- 来店: 初回
- 目的: お礼と、次回の推奨タイミングの軽いご案内
- NG: 効果を断定する表現、医療的な言い回し、長すぎる本文
- 各案に件名を付け、本文は200〜300字程度

出てきた3案から1つ選び、{{お客様}}{{メニュー}} を手元で本物に置き換えて送ります。この「最後の置き換えだけ人がやる」流れが、誤送信と情報漏れを同時に防ぎます。

顧客リストからフォローメールを一括下書きする検証スクリプト

ここはエンジニアでなくても流れだけ追えれば大丈夫です。表計算で作ったCSV(名前は記号、メニューと次回日程だけ入れる)を読み、雛形に差し込んで下書きを量産する最小スクリプトです。Node.jsがあれば動きます。送信はせず、下書きファイルを書き出すだけにしてあるのが安全装置です。

まずデータを用意します。実名は使わず、A001 のような社内記号にします。

code,menu,next_date
A001,フェイシャル初回,2026-06-21
A002,ボディ集中90分,2026-06-23
A003,脱毛フェイス,2026-06-28

次の draft-mails.mjs を同じフォルダに置いて実行します。やっていることは「1行ずつ読む→雛形にはめる→テキストとして保存」だけです。

import { readFile, writeFile, mkdir } from "node:fs/promises";

// 記号→文面の雛形。実名や連絡先はここには絶対に置かない
function buildMail({ code, menu, next_date }) {
  const subject = `先日はご来店ありがとうございました(${menu})`;
  const body = [
    `${code} 様`,
    "",
    `本日は${menu}にお越しいただき、ありがとうございました。`,
    "施術後はいつもより水分を多めにとり、こすらないケアを心がけてください。",
    `次回は ${next_date} 前後が目安です。ご都合のよいタイミングでお声がけください。`,
    "",
    "また心よりお待ちしております。",
  ].join("\n");
  return { subject, body };
}

const csv = await readFile(new URL("./customers.csv", import.meta.url), "utf8");
const [head, ...rows] = csv.trim().split(/\r?\n/);
const keys = head.split(",");

await mkdir(new URL("./drafts/", import.meta.url), { recursive: true });

let count = 0;
for (const line of rows) {
  const cols = line.split(",");
  const rec = Object.fromEntries(keys.map((k, i) => [k, cols[i]]));
  const { subject, body } = buildMail(rec);
  const out = `件名: ${subject}\n\n${body}\n`;
  await writeFile(new URL(`./drafts/${rec.code}.txt`, import.meta.url), out, "utf8");
  count++;
}

console.log(`下書きを ${count} 件 drafts/ に書き出しました。送信前に必ず目視で確認してください。`);

実行はこれだけです。

node draft-mails.mjs

drafts/ フォルダに記号ごとのテキストができます。あとはその中身を確認し、記号を本物の名前に置き換えてメールソフトに貼るだけ。AIにもっと自然な本文を書かせたい場合は、buildMail の中身を前章のプロンプトの出力で差し替えれば、雛形の質が一段上がります。Claude Codeの初期設定からつまずいている人は、先に Claude Code入門ガイド で環境を整えてから戻ってくると早いです。

個人情報とセキュリティの注意点

ここは省略できません。エステサロンが扱うのは、お名前・連絡先に加え、既往歴やアレルギーといった機微な情報です。守るべき線はシンプルです。

  • 実名・電話番号・メールアドレス・住所をAIへの入力に直接書かない。A001 のような記号に置き換える。
  • 既往歴など健康に関する記述は、可能なら「アレルギーあり」程度に抽象化して渡す。
  • 生成された下書きに個人情報を埋めるのは、AIの外、自分のパソコンの中でだけ行う。
  • 送信前に宛先と本文を毎回目視。一括送信ツールに流す前のワンクッションを必ず入れる。
  • スタッフで使う場合は「何をAIに入れてよいか」を1枚のルールにして共有する。

個人情報を扱うルールは、サロンの規模が大きくなるほど属人化が事故を生みます。チームでの運用ルール作りは CLAUDE.md ベストプラクティス の考え方が応用できますし、複数スタッフでの定着まで踏み込みたいなら Claude Code生産性向上のコツ も参考になります。個人情報保護の基本的な考え方は、国の窓口である個人情報保護委員会の解説が分かりやすいので一度目を通しておくと安心です。

導入前と後、そしてROIの目安

数字で見たほうが判断しやすいので、友人のサロン(オーナー1人+パート1人、1日平均6人)の実測に近い概算を置きます。

項目導入前導入後
カルテ清書(1人)約6分約2分
フォローメール作成(1人)約4分約1分
1日6人の事務合計約60分約18分
誤送信の発生月1〜2回ほぼゼロ

1日あたり40分前後の短縮、月20営業日で約13時間。時給換算で仮に1,500円とすれば、月2万円弱のコスト削減か、その時間を接客や物販に回せる計算です。導入の手間は最初の雛形作りに数時間。1か月以内には元が取れる規模感でした。

よくある質問

Q. AIが書いた文章を、お客様にそのまま送って大丈夫ですか。 A. そのまま送るのは避けてください。下書きとして使い、最後は必ず人が読みます。特に効果を断定する表現や、医療的に聞こえる言い回しが混じっていないかは毎回確認します。

Q. パソコンが苦手でも導入できますか。 A. 雛形プロンプトを貼って文面を作るだけなら、特別な知識は要りません。一括下書きのスクリプトはハードルが上がるので、まずはプロンプトだけ使い、慣れてから自動化に進むのがおすすめです。非エンジニア向けの始め方は 非エンジニアのためのClaude Code にまとめてあります。

Q. 顧客名簿をAIに読ませて自動で送ってもらえますか。 A. 名簿の実名や連絡先をAIに渡すのはおすすめしません。記号化して下書きまでをAIに任せ、本物の名前への置き換えと送信は手元で行う形が安全です。

Q. 既存の予約システムと連携できますか。 A. CSVで書き出せるシステムなら、本記事のスクリプトのように差し込み元データとして使えます。直接連携は無理でも、エクスポート→記号化→下書き、の流れで十分実用になります。

実際に試した結果

僕が確かめたのは3つです。1つ目、カウンセリング雛形をフェイシャル・ボディ・脱毛の3種で作らせたところ、項目の抜けがなくなり、新人パートさんでも同じ深さで聞けるようになりました。2つ目、走り書きメモの清書は、断片を渡して整える流れがそのまま使えて、清書時間が体感で3分の1になりました。ただし「赤み」を「炎症」と言い換えた例が1件あり、表現チェックを人が外せないことも確認できました。3つ目、CSVからの一括下書きは、10人ぶんを1分かからず生成できました。送信はあえて自動化せず、記号を名前に戻す一手間を残したことで、例の誤送信は実験期間中ゼロでした。

事務でへとへとになっていた金曜の夜が、少し早く終わるようになった。これが一番の成果です。サロン全体で仕組みとして根付かせたい段階に来たら、運用ルールづくりや研修は研修・相談ページから相談してください。

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Masa

この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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