cmdkでCmd+Kコマンドパレットを自作する(検索・キー操作・最近使った項目)
cmdkでReact製コマンドパレットを実装。Cmd+K起動、ファジー検索、キーボード移動、アクション登録、最近使った項目、アクセシビリティまでコピペで動くコードで紹介。
「あの設定画面、どこだっけ」。マウスを握ったまま、3階層下のメニューを探して30秒。1日に何回もこれをやっていると気づいて、僕はうんざりしました。
VS CodeもLinearもSlackも、Cmd+K を押せば一発で目的地に飛べます。あの操作窓——コマンドパレットを、自分のReact管理画面にも付けたい。そう思って最初はゼロから書いたんですが、ファジー検索と矢印キーの折り返しとARIAを全部自前でやったら、地味なバグが延々と出てきました。
そこで cmdk というライブラリに乗り換えたら、半日かかっていた部分が小一時間で片付きました。今日はその実装手順を、コピペで動くコードと一緒に共有します。
この記事の要点
cmdkを使うと、ファジー検索・矢印キー移動・候補の並べ替え・ARIA属性が最初から付いてくる。自分で書くのは「どんなアクションを並べるか」だけ。Command.Dialogを使えばCmd+Kで開くモーダル型パレットが数十行で作れる。フォーカス管理も内蔵。- 「最近使った項目」は localStorage に id を積むだけ。並び替えに使うと体感がぐっと上がる。
- 公開・削除みたいな危ない操作は、パレット本体ではなく
onSelectの中で確認する。速すぎる導線は事故る。 - キーボードショートカット全般の設計は別記事に切り出した。Cmd+K以外のショートカット設計 も合わせてどうぞ。
コマンドパレットって、要するに何?
コマンドパレットは、Cmd+K(WindowsやLinuxでは Ctrl+K)で開く小さな検索窓です。文字を打つと、画面移動・新規作成・設定変更・各種実行が候補として絞り込まれ、Enterで実行できます。
イメージは、家の電気のリモコンです。壁のスイッチを一つずつ探さなくても、手元から「リビング」「寝室」と指定して直接つけられる。慣れたユーザーほど、メニューをたどるより速く動けます。
ポイントは、ただの検索ボックスではないことです。実務で使えるパレットには、最低でもこれだけ要ります。
- キーボードだけで上下移動して、Enterで実行できる
- 入力中も候補がもたつかない(重い検索でも固まらない)
- スクリーンリーダーに「いま何件中の何番目を選んでいるか」が伝わる
- 公開・削除のような危険な操作を、うっかり実行しない
この「地味な周辺」を全部自前で書くと、あとで紹介する僕みたいに転びます。cmdk はそこを肩代わりしてくれるライブラリです。
なぜ自前実装ではなく cmdk なのか
最初、僕は依存を増やしたくなくて、ゼロから書きました。useDeferredValue でファジー検索を組んで、矢印キーの折り返しを % 演算で処理して、aria-activedescendant を手で更新して……。動くには動いた。でも、候補0件のときに配列の範囲外を参照したり、日本語変換中のEnterで暴発したり、地雷が次々出てきたんです。
cmdk は、まさにこの面倒な部分のために作られたライブラリです。Linearのチームが公開しているOSSで、Linear本体のパレットと同じ系譜の使い心地が手に入ります。自前実装と比べると、こう違います。
| 項目 | 自前実装 | cmdk |
|---|---|---|
| ファジー検索 | 自分でスコアリングを書く | 標準装備(filterで差し替え可) |
| 矢印キー移動・折り返し | キーイベントを全部ハンドリング | loop を付けるだけ |
| 候補の並べ替え | スコア順にソートを実装 | マッチ度で自動ソート |
| ARIA / フォーカス | role や id を手で管理 | 内部で付与(VoiceOver検証済み) |
| 書く量 | 数百行 | アクション定義が主役 |
「ライブラリに頼ると中身が分からなくなる」という不安はもっともです。でも、コマンドパレットは枯れた部品で、車輪の再発明が一番割に合わない領域でした。僕は中身を理解する勉強として一度は自前で書きましたが、本番には cmdk を使っています。
まず動かす:最小セットアップ
既存のReactアプリ(React 18以上)にそのまま入れられます。新規で試すなら、Viteのテンプレートが手軽です。
npm create vite@latest palette-demo -- --template react-ts
cd palette-demo
npm install
npm install cmdk
npm run dev
これで準備完了です。追加で必要なのは cmdk ひとつだけ。Radix UIのDialogに依存していますが、cmdk をインストールすれば一緒に入ります。
コピペで動く:Cmd+Kで開くコマンドパレット
ここが本題です。Command.Dialog を使うと、Cmd+K で開くモーダル型パレットが一気に書けます。下のコードをそのまま CommandPalette.tsx に貼れば動きます。日本語コメントを多めに入れたので、どこが何をしているか追えるはずです。
import { Command } from "cmdk";
import { useEffect, useState } from "react";
// パレットに並べる1件分のアクション。run() に実際の処理を書く
type Action = {
id: string;
label: string;
group: string;
keywords?: string[]; // ラベルに無い語でも引っかけたいとき用
run: () => void;
};
// 表示するアクション一覧。navigate は画面遷移の関数を渡す想定
function buildActions(navigate: (href: string) => void): Action[] {
return [
{
id: "new-draft",
label: "新しい記事を書く",
group: "コンテンツ",
keywords: ["create", "post", "draft", "しんき"],
run: () => navigate("/editor/new"),
},
{
id: "media",
label: "画像ライブラリを開く",
group: "メディア",
keywords: ["image", "asset", "hero", "がぞう"],
run: () => navigate("/media"),
},
{
id: "toggle-theme",
label: "テーマを切り替える",
group: "設定",
keywords: ["dark", "light", "theme"],
run: () => {
const root = document.documentElement;
root.dataset.theme = root.dataset.theme === "dark" ? "light" : "dark";
},
},
{
id: "publish",
label: "現在の記事を公開する",
group: "公開",
keywords: ["deploy", "release", "こうかい"],
// 危ない操作は run() の中で必ず確認する(パレット本体ではやらない)
run: () => {
if (window.confirm("現在の記事を公開しますか?")) {
navigate("/publish/current");
}
},
},
];
}
export function CommandPalette({
navigate,
}: {
navigate: (href: string) => void;
}) {
const [open, setOpen] = useState(false);
const actions = buildActions(navigate);
// Cmd+K / Ctrl+K で開閉。ブラウザ既定のショートカットは preventDefault で止める
useEffect(() => {
const onKeyDown = (e: KeyboardEvent) => {
if (e.key.toLowerCase() === "k" && (e.metaKey || e.ctrlKey)) {
e.preventDefault();
setOpen((prev) => !prev);
}
};
document.addEventListener("keydown", onKeyDown);
return () => document.removeEventListener("keydown", onKeyDown);
}, []);
// アクションを実行したら閉じる
const handleSelect = (action: Action) => {
setOpen(false);
action.run();
};
// group ごとにまとめてセクション表示する
const groups = [...new Set(actions.map((a) => a.group))];
return (
<Command.Dialog
open={open}
onOpenChange={setOpen}
label="コマンドパレット"
loop // 末尾で下キーを押すと先頭へ折り返す
>
<Command.Input placeholder="コマンドを検索..." />
<Command.List>
<Command.Empty>該当するコマンドがありません</Command.Empty>
{groups.map((group) => (
<Command.Group key={group} heading={group}>
{actions
.filter((a) => a.group === group)
.map((action) => (
<Command.Item
key={action.id}
// value はラベル+キーワードを検索対象にするため連結
value={`${action.label} ${(action.keywords ?? []).join(" ")}`}
onSelect={() => handleSelect(action)}
>
{action.label}
</Command.Item>
))}
</Command.Group>
))}
</Command.List>
</Command.Dialog>
);
}
これだけで、Cmd+K 起動・ファジー検索・矢印キー移動(末尾で先頭に折り返し)・グループ表示・候補0件メッセージが全部動きます。自前実装で数百行かけた部分が、ほぼ宣言だけで済んでいるのが分かると思います。
アプリ側からは、こう差し込むだけです。
import { CommandPalette } from "./CommandPalette";
export function App() {
return (
<>
{/* 既存の画面 */}
<CommandPalette navigate={(href) => (window.location.href = href)} />
</>
);
}
Next.jsなら navigate に router.push を渡せばそのまま使えます。スタイルは cmdk が付ける [cmdk-...] 属性に対してCSSを当てるか、公式のスタイル例をベースに整えてください。
「最近使った項目」を足して体感を上げる
パレットを毎日使い始めると、結局よく使うコマンドは数個に固定されてきます。そこで「最近使った項目」を上に出すと、入力すらほぼ要らなくなります。
実装は驚くほど単純で、実行したアクションのidを localStorage に積んで、表示時に並び替えに使うだけです。
import { useState } from "react";
const STORAGE_KEY = "palette:recent";
// localStorage から最近使ったidの配列を読む
function loadRecent(): string[] {
try {
return JSON.parse(localStorage.getItem(STORAGE_KEY) ?? "[]");
} catch {
return [];
}
}
export function useRecentActions() {
const [recent, setRecent] = useState<string[]>(loadRecent);
// 実行したidを先頭に積む。重複は除き、最大5件まで保持
const pushRecent = (id: string) => {
setRecent((prev) => {
const next = [id, ...prev.filter((x) => x !== id)].slice(0, 5);
localStorage.setItem(STORAGE_KEY, JSON.stringify(next));
return next;
});
};
return { recent, pushRecent };
}
あとは handleSelect の中で pushRecent(action.id) を呼び、表示時に recent に含まれるidを先頭の「最近使った」グループへ寄せるだけです。cmdk は検索中はグループの並びをマッチ度で再構成しますが、検索語が空のとき(=開いた直後)にこの並びが効くので、ちょうど狙いどおりになります。
僕の管理画面では、これを入れてから「新規記事」へ飛ぶのが Cmd+K → Enter、つまり実質2打鍵になりました。検索すらしない日が増えています。
こんな場面で効く(3つ)
1. SaaSの管理画面
ユーザー検索、請求画面、監査ログ、招待メール送信。メニューが深くなりがちな機能を横断できます。ただし「ユーザー削除」「プラン変更」は即実行にせず、onSelect から確認画面へ遷移させます。表示できるコマンドを絞るだけでなく、実行時にもサーバー側で権限を必ず確認してください。
2. ブログ・CMS 記事作成、画像ライブラリ、カテゴリ編集、公開前チェック。このサイトでは、記事編集からOGP画像確認、内部リンクチェックへ飛ぶアクションを登録したら、毎日の更新作業がかなり短くなりました。
3. 開発者向けツール・ドキュメント APIリファレンス、設定例、CLIコマンドの横断検索。全文検索と違うのは、「現在のページをコピー」「サンプルを開く」「Issueテンプレートを作る」のような“実行”も候補にできる点です。
僕がやらかした失敗3つ
正直に書きます。最初のパレットは事故だらけでした。
ひとつ目は、公開コマンドを直接実行にしたこと。Cmd+K から3文字打ってEnter、の勢いで記事を本番公開してしまいました。速いUIほど、勢いで危ない操作まで通ってしまう。今は破壊的な操作を全部 onSelect 内の confirm か確認画面に通しています。
ふたつ目は、日本語入力中のEnterで暴発させたこと。自前実装のころ、IMEで変換を確定するEnterと実行のEnterを区別せず、変換確定のつもりで削除を実行しかけました。cmdk はこのIME問題を内部で面倒みてくれるので、乗り換えてから一度も再発していません。
みっつ目は、キーワードを英語だけにしたこと。label が日本語なのに keywords を英語だけにしていたら、「がぞう」と打っても画像ライブラリが出ない。value にラベルとキーワードを連結し、ローマ字読みも keywords に足したら、打ち方を選ばずヒットするようになりました。
アクセシビリティで外せない点
cmdk はARIA属性とフォーカス管理を内部で付けてくれます(公式がVoiceOverとChrome DevToolsで検証済み)。ただ、丸投げにせず最低限ここは自分で確認してください。
Command.Dialogにlabelを必ず渡す。スクリーンリーダーが「何のダイアログか」を読み上げる元になります。- 選択中の候補が視覚的に分かる色を付ける。
[cmdk-item][aria-selected="true"]にCSSを当てます。 - 候補へ直接フォーカスを移さない。フォーカスは入力欄に残し、選択状態は属性で伝えるのが定石です(
cmdkはこの方式です)。
ARIAの考え方そのものは奥が深いので、支援技術に正しく意味を伝える実装 に別途まとめてあります。combobox/listboxの背景を知りたい人は、一次情報の WAI-ARIA Combobox Pattern も参照してください。
Claude Codeに頼むときのコツ
Claude Codeに「コマンドパレット作って」とだけ言うと、たいてい見た目重視の浅い実装が返ってきます。要件を具体的に渡すと、生成物の質が一段上がります。
cmdk(React 18+, TypeScript)でコマンドパレットを作って。Command.Dialog で Cmd+K / Ctrl+K 起動、loop で折り返し、group 表示、Command.Empty、最近使った項目を localStorage で並び替え、破壊的コマンドは onSelect 内で confirm、を含めて。ファイルは CommandPalette.tsx と useRecentActions.ts に分けて、コピペで動く形にして。
大量の候補をサーバー検索する規模になったら、shouldFilter={false} にしてAPI側でページングする方針に切り替えます。クライアントで数千件を抱え込むと入力が詰まるので、そのときは 大量データでも詰まらせない設計 の考え方が効いてきます。
よくある質問
Q. cmdk と自前実装、どちらを選ぶべき?
特別な理由がなければ cmdk です。ファジー検索・キー操作・ARIAは枯れた部品で、自前で書くと地味なバグの温床になります。中身を勉強したいなら一度自作するのは良い経験ですが、本番は乗せ替えをおすすめします。
Q. ファジー検索のロジックを差し替えられる?
できます。Command に filter={(value, search, keywords) => 数値} を渡すと、独自のスコアリングに置き換わります。返り値が0なら非表示、大きいほど上位です。日本語の表記ゆれに合わせたいときに便利です。
Q. 矢印キーで末尾から先頭に戻したい。
Command(または Command.Dialog)に loop を付けるだけです。リストの端で方向キーを押すと反対端へ折り返します。
Q. Next.js のApp Routerでも使える?
使えます。cmdk はクライアント部品なので、ファイル先頭に "use client" を付けてください。navigate には useRouter() の router.push を渡します。
Q. 検索対象に説明文やカテゴリも入れたい。
Command.Item の value に検索したい文字列をまとめて入れるか、keywords プロパティに配列で渡します。keywords はマッチ判定に加味され、表示には出ません。
実際に試した結果
このサイトの記事管理画面に cmdk 版を入れてから、よく使う「新規記事」「画像ライブラリ」「公開前チェック」への移動が、メニューを2〜3クリックたどる作業から Cmd+K → 数文字 → Enter になりました。さらに「最近使った項目」を足したら、よく使うものはほぼ無入力で選べます。
体感差が一番大きかったのは、検索速度そのものより、手をキーボードから離さずに次の作業へ移れることでした。一方で、公開コマンドを直接実行にした初期案は本当に危なかったので、確認画面への遷移に変えました。コマンドパレットは速さを作るUIですが、速すぎて事故る導線は設計ミスです。
まずは上のコードを貼って、自分のアプリに3つだけアクションを登録してみてください。Cmd+K から目的地に飛べる快感を一度味わうと、もうメニューを手でたどる気にはなれなくなります。次の一歩として Cmd+K以外のショートカット設計 を読むと、パレットと併用するキー体系まで整います。指示テンプレートやレビュー観点をまとめて使いたい人は 教材一覧 からどうぞ。
無料PDF: Claude Code はじめてのチートシート
まずは無料PDFで基本コマンドと最初の使い方をまとめて確認してください。登録後はそのままテンプレート集や導入相談にも進めます。
スパムは送りません。登録情報は厳重に管理します。
Claude Codeを仕事で使える形にしませんか?
まず無料PDFで基本を固め、繰り返し使う作業はGumroad教材へ、チーム導入や権限設計は導入相談へ進めます。
この記事を書いた人
Masa
Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。
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