Use Cases (更新: 2026/6/7)

Node.jsでCLIツールを作る: commander引数パースからnpx配布まで

Node.jsのCLIツールを引数パース・対話プロンプト・パイプ対応・色とスピナー・bin/npx配布まで、コピペで動くcommanderのコード付きで手を動かして作る。

Node.jsでCLIツールを作る: commander引数パースからnpx配布まで

初めて自作のCLIを作った日のことを、今でも覚えています。20行くらいのスクリプトで、引数を process.argv[2] で雑に拾っていました。動いた。うれしかった。

その三日後、引数が5個に増えて、--help もなくて、自分でも使い方を忘れました。process.argv[3] が日付なのかオプションなのか分からない。スペースの入った引数を渡したら全部ずれる。挙句、パイプでつないだら標準出力にログが混ざって、後ろのコマンドが盛大に壊れました。

CLIって、最初の20行は天国で、その先が地獄なんです。

でもこの地獄、ほとんどは先人が踏み抜いてくれていて、踏まないための道具がそろっています。引数パースは commander、対話は標準入力、配布は package.jsonbinnpx。この記事では、僕が clipilot という小さなツールを例に、その地獄を飛び越える順番を全部出します。npmへの公開そのものは別記事(npmパッケージ作成ガイド)に分けたので、ここは「動くCLIを作って、手元から叩けるようにする」までを濃く書きます。

この記事の要点

  • 引数を process.argv で手パースするのは三日で破綻する。最初から commander(または yargs)に任せる。
  • CLIの品質は見た目より 入出力の約束で決まる。結果は標準出力、ログとエラーは標準エラー出力、成否は終了コードで伝える。
  • パイプ(cat file | mytool)に対応すると、CLIは一気に「組み合わせて使える道具」になる。標準入力を読むのは数行で済む。
  • 配布は package.jsonbin と shebang(#!/usr/bin/env node)の二点セット。npx mytool で誰でも一発実行できる。
  • 色・スピナー・分かりやすいエラーは飾りじゃなく、ユーザーが詰まらないための装備。ただし出力先を間違えると逆効果になる。

なぜ process.argv 手パースをやめるのか

まず、やめたほうがいい書き方から。これは過去の僕です。

// アンチパターン:手パース。すぐ破綻する
const name = process.argv[2];
const verbose = process.argv.includes("--verbose");

一見シンプルですが、これだと --name=foo-n foo も扱えないし、--help を自分で書く羽目になり、順番を一つ間違えると全部ずれます。引数が増えるたびに if が増えていく未来しかありません。

ここで登場するのが引数パーサです。代表は二つ。

ライブラリ向いている場面ひとことで
commanderサブコマンド構成(git commit のような形)宣言的で読みやすい。最初の一本に最適
yargs細かいバリデーションや補完を作り込みたい高機能なぶん設定は厚め

どちらも枯れていて安心です。記事執筆時点で commander は v15、yargs は v18 が最新ですが、サブコマンドを素直に書けるぶん、最初の一本には commander を推します。以降は commander で進めます。

まず最小構成を作る

空のフォルダで土台を用意します。TypeScriptで書いて、開発中は tsx でそのまま実行、配布用には dist にビルドする形にします。

mkdir clipilot && cd clipilot
npm init -y
npm i commander
npm i -D typescript tsx @types/node
mkdir src

package.json の要点は binscripts の二か所です。bin は「インストールしたら clipilot というコマンドを生やす」という宣言で、npm公式の説明どおり、ここが指すファイルには後述の shebang が要ります。

{
  "name": "clipilot",
  "version": "0.1.0",
  "type": "module",
  "bin": {
    "clipilot": "./dist/cli.js"
  },
  "scripts": {
    "dev": "tsx src/cli.ts",
    "build": "tsc -p tsconfig.json"
  }
}

tsconfig.json は素直に。出力先(outDir)が bin の指す先と食い違うと、インストール後にコマンドが動かない事故になるので、dist でそろえます。

{
  "compilerOptions": {
    "target": "ES2022",
    "module": "NodeNext",
    "moduleResolution": "NodeNext",
    "rootDir": "src",
    "outDir": "dist",
    "strict": true,
    "skipLibCheck": true
  },
  "include": ["src/**/*.ts"]
}

commanderで引数とサブコマンドを書く

ここが本題です。commanderは、コマンド名・オプション・サブコマンド・ヘルプ・引数エラーをまとめて面倒見てくれます。下の src/cli.ts はそのまま貼って動く一本です。run はパイプ入力を引数より優先し、--json のときは機械が読むJSONだけを標準出力に出します。greet は色付き出力とスピナーのUXを見せるための小さなサンプルです。

外部依存を増やさないため、色は標準の node:utilstyleText を使います(Node.js 20.12 以降で利用可、22で安定)。スピナーも依存ゼロで自前の数行にしてあります。

#!/usr/bin/env node
import { readFile, writeFile, access } from "node:fs/promises";
import { constants } from "node:fs";
import { styleText } from "node:util";
import process from "node:process";
import { Command } from "commander";

// 標準入力(パイプ)を読む。TTY(端末直叩き)なら空文字を返す
async function readStdin(): Promise<string> {
  if (process.stdin.isTTY) return "";
  const chunks: Buffer[] = [];
  for await (const chunk of process.stdin) {
    chunks.push(Buffer.isBuffer(chunk) ? chunk : Buffer.from(chunk));
  }
  return Buffer.concat(chunks).toString("utf8").trim();
}

// 依存ゼロの簡易スピナー。終わったら必ず stop すること
function spinner(label: string) {
  const frames = ["⠋", "⠙", "⠹", "⠸", "⠼", "⠴", "⠦", "⠧", "⠇", "⠏"];
  let i = 0;
  // 進捗表示は stderr へ。stdout はあくまで「結果」のために空けておく
  const timer = setInterval(() => {
    process.stderr.write(`\r${frames[i++ % frames.length]} ${label}`);
  }, 80);
  return {
    stop(done: string) {
      clearInterval(timer);
      process.stderr.write(`\r${done}\n`);
    },
  };
}

async function exists(p: string): Promise<boolean> {
  try {
    await access(p, constants.F_OK);
    return true;
  } catch {
    return false;
  }
}

const program = new Command();

program
  .name("clipilot")
  .description("手を動かして覚えるための小さなCLIサンプル")
  .version("0.1.0")
  .showHelpAfterError(); // 入力ミス時にヘルプを出すと親切

// greet: 色とスピナーのUXデモ
program
  .command("greet")
  .description("名前にあいさつする(色付き)")
  .argument("[name]", "あいさつする相手", "world")
  .option("-l, --loud", "大文字で叫ぶ")
  .action(async (name: string, opts: { loud?: boolean }) => {
    const sp = spinner("考え中...");
    await new Promise((r) => setTimeout(r, 400)); // 重い処理のフリ
    sp.stop(styleText("green", "✔ できました"));
    const text = opts.loud ? `HELLO, ${name.toUpperCase()}!` : `hello, ${name}`;
    process.stdout.write(`${styleText("cyan", text)}\n`); // 結果は stdout へ
  });

// run: パイプ入力を優先して処理する実用コマンド
program
  .command("run")
  .description("引数か標準入力のメッセージを処理する")
  .argument("[message]", "処理するメッセージ")
  .option("--json", "機械が読むJSONで出力する")
  .action(async (message: string | undefined, opts: { json?: boolean }) => {
    const piped = await readStdin();
    const text = (piped || message || "").trim();
    if (!text) {
      process.stderr.write("入力がありません。引数かパイプでメッセージを渡してください。\n");
      process.exitCode = 2; // 使い方ミスは 2
      return;
    }
    const payload = { ok: true, length: text.length, message: text };
    if (opts.json) {
      process.stdout.write(`${JSON.stringify(payload)}\n`);
    } else {
      process.stdout.write(`受け取りました(${payload.length}文字): ${text}\n`);
    }
  });

// save: ファイル書き込み。上書きは --force を要求して事故を防ぐ
program
  .command("save <file>")
  .description("標準入力の内容をファイルへ保存する")
  .option("-f, --force", "既存ファイルを上書きする")
  .action(async (file: string, opts: { force?: boolean }) => {
    if ((await exists(file)) && !opts.force) {
      process.stderr.write(`${file} は既にあります。--force で上書きできます。\n`);
      process.exitCode = 1;
      return;
    }
    const body = await readStdin();
    await writeFile(file, body, "utf8");
    process.stdout.write(`保存しました: ${file}\n`);
  });

await program.parseAsync(process.argv);

ビルドして動かすときは、配布物に shebang を残すのを忘れずに(tsc はそのまま先頭行を保持します)。開発中は次のように叩けます。

npm run dev -- --help
npm run dev -- greet Masa --loud
npm run dev -- run "hello cli" --json
printf "from stdin\n" | npm run dev -- run
echo "保存される内容" | npm run dev -- save out.txt

-- の後ろがCLIへの引数です(npm scriptに引数を渡す区切り)。greet でスピナーと色が出て、run ではパイプが引数より優先されるのが確認できます。

標準入出力とパイプの約束を守る

CLIをただの実行ファイルから「組み合わせられる部品」に変えるのが、この章です。Unixの道具がパイプでつながるのは、出力の置き場所をみんなで守っているからです。

ルールはたった三つ。Node.jsの process のドキュメントにも同じ整理があります。

  • 標準出力(stdout): 次のコマンドに渡る「結果」だけを書く。JSONや一覧。
  • 標準エラー出力(stderr): 進捗・警告・エラーを書く。パイプの結果を汚さない。
  • 終了コード(exit code): 成否を整数で返す。0 成功、それ以外は失敗。

ここを守ると、たとえばこういう連結が壊れません。

# clipilot の JSON 結果を jq に渡す。stdout が綺麗だから通る
echo "ログ行を解析" | npm run dev -- run --json | jq .length

逆に、進捗バーやスピナーを標準出力に書いてしまうと、上の jq は壊れます。さっきのコードでスピナーを process.stderr に書いたのは、まさにこれが理由です。デバッグログを console.log で出すクセは、CLIでは一回見直してください。console.log は標準出力、console.error は標準エラーに出ます。

終了コードを決める(自動化の生命線)

終了コードは、人間より先に シェルとCIが見ますmytool && deploy&& は、左が 0 で終わったときだけ右を実行する仕組みです。だから「失敗したのに 0 で終わる」CLIは、自動化の中でいちばん危ない。

僕はこの三段で固定しています。チーム内で意味さえそろえば、番号は何でも構いません。

終了コード意味
0成功正常に処理が完了
1実行時エラーファイルが無い、API失敗、例外
2使い方ミス・前提不足引数不足、設定未投入

コードでは process.exit(1) で即殺すより、process.exitCode = 1 を立てて関数を抜けるほうが安全です。書き込み中のストリームが途中で切れる事故を避けられます。上のサンプルもこの書き方にしてあります。

配布する: binとnpxで誰でも一発実行

ここまで来たら、いよいよ手元コマンドにします。やることは二つだけ。

ひとつ目、dist/cli.js の先頭に shebang #!/usr/bin/env node があること。これが「このファイルをnodeで実行せよ」という目印です(ソースの先頭行に書いてあるので、ビルドすれば残ります)。

ふたつ目、package.jsonbin がそのファイルを指していること。あとはローカルでリンクすれば、clipilot がそのまま叩けます。

npm run build       # dist/cli.js を生成
npm link            # ローカルで clipilot コマンドを生やす
clipilot greet you  # もう npm run dev -- が要らない

公開済みのパッケージなら、ユーザーは入れずに npx で一発です。npx はパッケージを取ってきて bin を実行してくれます。

npx clipilot greet world

「配布前に何が同梱されるか」を必ず確認してください。npm pack --dry-run で、公開時に含まれるファイル一覧が出ます。dist が入っていて、src やテストが不要なら files フィールドや .npmignore で絞ります。実際の npm publish の手順とバージョニングはnpmパッケージ作成ガイドに分けてまとめました。CIで build と dry-run まで自動化したい人はClaude CodeでCI/CDを設定する方法が続きになります。

UXの装備: 色・スピナー・対話、ただし使いどころ

CLIのUXは「迷わせない」ことが全部です。装備ごとに、効く場面と外す場面を書きます。

。エラーは赤、成功は緑。ぱっと結果が分かります。今回は依存を増やさず node:utilstyleText を使いました。注意点が一つ。出力をファイルやパイプに流したときは色コードが邪魔になります。styleText は出力先が端末でないと自動で色を抜いてくれますが、自前でANSIを書くなら process.stdout.isTTY を見て分岐します。

スピナー。時間のかかる処理で「固まった?」という不安を消します。必ず stop を呼んで消すこと、そして標準エラー出力に出すこと。消し忘れるとプロンプトに残って気持ち悪い表示になります。手の込んだものが要るなら ora が定番です。

対話プロンプト。「上書きしますか? (y/N)」のような確認です。ただし大原則として、パイプ実行中は対話を出さないcat x | mytool の最中に入力待ちすると、誰もキーを打てずCIが固まります。だから process.stdin.isTTY を見て、端末直叩きのときだけ確認を出す。今回のサンプルが確認の代わりに --force フラグを採用したのは、この事故を根本から避けるためです。対話を作り込むなら @inquirer/prompts が使いやすいです。

僕がやらかした失敗3つ

正直に書きます。CLIで踏んだ地雷は、だいたい同じ三つです。

ひとつ目、標準出力にログを混ぜた。良かれと思って console.log("処理中...") を挟んだら、JSONを受け取る後段のスクリプトが「予期しないトークン」で全滅。以来、結果は標準出力、それ以外は全部 console.error、と体に叩き込みました。

ふたつ目、終了コードを返し忘れた。エラーをキャッチして console.error でメッセージは出すのに、exitCode を立て忘れて 0 で終わっていた。CIは緑のまま、壊れたものがデプロイされる。いちばん怖いやつです。今は失敗パスで必ず process.exitCode を立てます。

みっつ目、bin の指す先がズレていたtscoutDirbuild に変えたのに package.jsonbindist のまま。ローカルでは npm run dev で動くから気づかず、公開してインストールした人から「コマンドが無い」と連絡が来ました。npm pack --dry-run を出す習慣で、これは防げます。

Claude Codeに任せるときのコツ

このCLIづくり、Claude Codeに頼むと速いです。複数ファイル(cli.tspackage.jsontsconfig.json)をまたぐ作業を一気にやってくれるので。ただ「CLIを作って」と丸投げすると、デモでは動くけど運用で壊れるコードが出がちです。境界条件を先に渡すのがコツです。

Node.js 22 + TypeScript + commander で clipilot というCLIを作ってください。
- greet / run / save の3サブコマンド
- run は標準入力を引数より優先し、--json で機械可読JSONを stdout に出す
- 結果は stdout、進捗・警告・エラーは stderr に分ける
- 成功は exit code 0、実行時エラーは 1、使い方ミスは 2
- package.json の bin と shebang で npx 実行できる形にする
- save の上書きは --force を要求し、パイプ中は対話プロンプトを出さない

「動くか」ではなく「自動化に組み込んで安全か」でレビューしてほしい、と最初に伝えるのが効きます。導入そのものが初めてならClaude Code入門ガイドからどうぞ。

よくある質問

Q. commanderとyargs、どっちを選べばいい? 最初の一本なら commander。サブコマンドを宣言的に書けて読みやすいです。補完やリッチなバリデーションを作り込みたくなったら yargs を検討、で十分です。両方とも長年使われていて安定しています。

Q. パイプとプロンプト(対話)は両立できる? できます。process.stdin.isTTY で判定し、端末から直接叩かれたときだけ対話を出します。パイプ実行中は対話を出さず、フラグ(--force など)や設定で代替します。これでCIが固まる事故を防げます。

Q. npm linknpx の違いは? npm link は開発中の自分のマシンにコマンドを生やす仕組み、npx は公開済み(またはローカルの)パッケージの bin を取ってきて実行する仕組みです。開発は npm link、配布後のユーザー体験確認は npx mytool で見ると分かりやすいです。

Q. 色が出力ファイルに変な文字([36m など)として残る。 ANSIカラーコードがそのまま書き込まれています。node:utilstyleText は出力先が端末でないと色を自動で抜きますが、自前でANSIを書くなら process.stdout.isTTY を見て、端末以外では色を付けないようにします。

Q. TypeScriptで書いたものをそのまま配布できる? ビルドして .js を配るのが基本です。tscdist に出し、bin をその .js に向けます。.ts のまま配ると、入れた人の環境で実行できないことがあります。shebang はソース先頭に書いておけばビルド後も残ります。

実際に試した結果

この順番で clipilot を組み直してみて、いちばん効いたのは「標準出力を結果専用に空ける」一点でした。スピナーも進捗も全部 stderr に寄せたら、| jq でつないでも > out.json で保存しても壊れない。CLIが急に「他のコマンドと会話できる道具」になった感触がありました。

終了コードを 0/1/2 で固定してからは、mytool && next のような連結が信用できるようになって、シェルスクリプトを書くのが楽になりました。そして地味に大きかったのが、配布のたびに npm pack --dry-run を出す習慣。bin のズレも余計な同梱も、公開前に全部つかまります。

賢いツールを作る前に、入出力の約束を先に決める。遠回りに見えて、これがいちばん壊れないCLIへの近道でした。手元のコマンドを増やしたくなったら、まずこの記事の cli.ts を一本コピペして、自分の処理を run に差し替えるところから始めてみてください。さらにチームの開発フローごと整えたい人は教材・テンプレート一覧もどうぞ。

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この記事を書いた人

Masa

Claude Codeの実務活用、導入設計、収益導線改善を検証しているエンジニア。10言語の技術メディアを運営中。

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