Advanced (更新: 2026/6/7)

RBAC実装で横移動を防ぐ:ロール設計と認可ミドルウェアの作り方

ロール名を付けただけでは権限事故は防げません。permissionの設計、サーバー側ミドルウェアでの認可チェック、最小権限、UIの出し分け、ABACとの違いを、コピペで動くコードと失敗談つきで整理しました。

RBAC実装で横移動を防ぐ:ロール設計と認可ミドルウェアの作り方

「ログインしてる人なら、まあ大丈夫でしょ」

僕が初めて作った管理画面は、この一行の油断で穴だらけでした。ある日、別の会社のユーザーが、URLの末尾の数字を1つ変えるだけで、よその請求書を開けてしまった。コードはちゃんと動いていた。ログイン認証も通っていた。なのに、です。

問題は「誰か」を確かめていなかったことじゃありません。「誰か」は分かっていたのに、「その人が、それを見ていいか」を一度もチェックしていなかった。これが認可、つまりRBAC(ロールベースアクセス制御)の話です。

ロールに「管理者・編集者・閲覧者」と名前を付けるのは、認可のスタート地点ですらありません。事故はいつも、もっと地味なところで起きます。テナントIDをクエリに入れ忘れた。記事の所有者を確認しなかった。UIでボタンを隠しただけで満足した。今日はこの「何をしてよいか」を、コピペで動く形まで落として整理します。

「あなたは誰か」を確かめるログインのほう(認証)は、Web認証の実装ガイドに分けてあります。この記事は徹頭徹尾、**ログイン後の「で、何をさせる?」**に絞ります。

この記事の要点

  • 認証(誰か)と認可(何をしてよいか)は別物。ログイン済みは、削除や他社データ閲覧の許可理由にならない。
  • RBACの核は role ではなく permissionarticle:update のような操作名)。ルートには permission を渡し、判断は1か所の authorize に集約する。
  • 原則は deny by default(明示的に許可されていない操作は全部拒否)。テナント不一致・所有者違い・権限不足は、理由つきで弾く。
  • 認可チェックはコントローラーの最後ではなく、サーバー側ミドルウェアで全リクエストに通す。UIのボタン制御はセキュリティ境界ではない。
  • 「平日のみ」「10万円以上は二重承認」のような条件が増えたら、RBACで入口を絞りつつ ABAC(属性ベース)へ寄せる。

認証と認可は、玄関の鍵と部屋の鍵

たとえ話をします。認証はマンションの玄関(エントランス)の鍵です。建物に入っていい人かを確かめる。認可は各部屋の鍵。建物に入れたからといって、全部の部屋を開けていいわけじゃない。

僕の事故は、エントランスは厳重なのに、中の部屋が全部オートロックなしだった、という状態でした。ログイン(玄関)は通る。でも、請求書という「他人の部屋」のドアノブを回したら、そのまま開いてしまった。

RBACで認可を設計するとき、判断材料を次の4つに分けておくと、後で崩れにくくなります。

要素設計時の注意
role(役割)viewer, editor, billing_admin, owner肩書きではなく、職務上の責任で分ける
permission(許可された操作)article:update, invoice:readコード上は文字列定数で固定する
resource(対象)article, invoice, user何に対する操作かを明示する
action(行為)read, create, update, deleteHTTPメソッドだけで判断しない

ここで一番やりがちな失敗が、admin という万能ロールを先に作ってしまうこと。最初は楽です。でも「管理者なら何でもできる」に例外を足し続けると、半年後には誰も全体像を説明できなくなります。あれは仕様なのか、緊急対応の名残なのか。レビューで追えなくなった時点で、その権限表はもう壊れています。

順番を逆にしてください。先に permission を細かく定義し、role はその束として組み立てる。「editor とは article:readarticle:createarticle:update を持つ人」と定義する。こうしておくと、後で「この API はどの権限に依存している?」が一目で追えます。

deny by default を、設計の土台に置く

deny by default は「明示的に許可していない操作は、全部拒否」という考え方です。OWASPもこれを認可設計の基本に挙げています(OWASP Authorization Cheat Sheet)。

なぜ「拒否」を土台にするのか。許可リスト方式だと、新しい機能を足したとき「明示的に許可を書かない限り、自動で拒否される」からです。逆に「禁止リスト」方式だと、新機能を足すたびに「これも禁止、あれも禁止」と書き漏らした穴が事故になる。守りの初期値は、いつも「閉じている」ほうが安全です。

具体的には、認可関数の入口で次を全部 deny にします。

  • 未知の permission(タイプミスや存在しない権限名)
  • role が空(ログインはしたが、何の役割も割り当てられていない)
  • テナント不一致(自社のIDで、他社のリソースに触ろうとした)
  • リソースを取得できない(存在しないIDを指定された)

このルールを先に固めてから、最後に「許可」を返す。順番が大事です。許可条件から書き始めると、人は必ずどこかで拒否条件を書き忘れます。

permission を中核に、authorize 1か所で判断する

ここからコードです。まずは判断ロジックを authorize という1つの関数に集約します。role を直接 if 文に散らすと、どの API がどの権限に依存しているか、すぐ追えなくなる。だからルートは permission 名を渡すだけにして、判断は全部ここへ寄せます。

TypeScript で書くとこうなります。日本語コメントは僕が後から自分用に足したものです。

// src/rbac.ts
export const permissions = [
  "project:read",
  "article:read",
  "article:create",
  "article:update",
  "article:delete",
  "invoice:read",
  "invoice:refund",
  "user:manage"
] as const;

export type Permission = (typeof permissions)[number];
export type Role = "viewer" | "editor" | "billing_admin" | "owner";

// 認証済みの「行為者」。誰か(id)、どのテナントか、どの役割か。
export type Actor = {
  id: string;
  tenantId: string;
  roles: Role[];
};

// 操作対象のレコード。所有者と所属テナントを必ず持たせる。
export type ResourceRecord = {
  id: string;
  tenantId: string;
  ownerId?: string;
};

export type AuthorizationDecision = {
  allow: boolean;
  reason: string;
};

// role を permission の束として定義する。ここが設計の心臓部。
export const rolePermissions = {
  viewer: ["project:read", "article:read", "invoice:read"],
  editor: ["project:read", "article:read", "article:create", "article:update"],
  billing_admin: ["project:read", "invoice:read", "invoice:refund"],
  owner: [...permissions]
} as const satisfies Record<Role, readonly Permission[]>;

const knownPermissions = new Set<Permission>(permissions);

export function authorize(
  actor: Actor,
  permission: Permission,
  record?: ResourceRecord
): AuthorizationDecision {
  // --- ここから下が deny by default の門番たち ---

  // 1. 知らない権限名は即拒否(タイプミス対策にもなる)
  if (!knownPermissions.has(permission)) {
    return { allow: false, reason: "unknown_permission" };
  }

  // 2. 役割が空なら拒否
  if (actor.roles.length === 0) {
    return { allow: false, reason: "no_role" };
  }

  // 3. テナント不一致は拒否(他社データへの横移動を止める)
  if (record && record.tenantId !== actor.tenantId) {
    return { allow: false, reason: "tenant_mismatch" };
  }

  // 4. どの役割もこの権限を持っていなければ拒否
  const roleAllows = actor.roles.some((role) =>
    rolePermissions[role].includes(permission)
  );
  if (!roleAllows) {
    return { allow: false, reason: "role_missing_permission" };
  }

  // 5. オブジェクト単位の認可。
  //    記事の更新は owner か、その記事の所有者だけ。
  if (
    permission === "article:update" &&
    !actor.roles.includes("owner") &&
    record?.ownerId !== actor.id
  ) {
    return { allow: false, reason: "not_resource_owner" };
  }

  return { allow: true, reason: "allowed" };
}

// 認可の判断は、許可も拒否も両方ログに残す。
export function auditAuthorization(input: {
  actor?: Actor;
  permission: Permission;
  resourceId?: string;
  decision: AuthorizationDecision;
}) {
  console.info(
    JSON.stringify({
      type: "authorization",
      actorId: input.actor?.id ?? "anonymous",
      tenantId: input.actor?.tenantId ?? "unknown",
      permission: input.permission,
      resourceId: input.resourceId ?? null,
      allow: input.decision.allow,
      reason: input.decision.reason,
      at: new Date().toISOString()
    })
  );
}

このコードのキモは3つです。ひとつ、役割名ではなく permission を見る。「editor だから許可」ではなく「article:update という操作が許可されているか」を調べる。ふたつ、テナント境界をここで弾く。僕が事故った「URLの数字を変えたら他社の請求書」は、3番目の門番が止めます。みっつ、同じ article:update でも、所有者かどうかをもう一段見る(オブジェクト単位の認可)。役割が同じでも、他人の記事は触らせない。

サーバー側ミドルウェアで、全リクエストを検査する

authorize を作っただけでは、まだ事故は防げません。呼び忘れたら終わりだからです。だから認可チェックは、コントローラーの中にこっそり書くのではなく、ルートに入る前のミドルウェアで必ず通します。OWASPが言う「認可は、たまに確認するものではなく、保護対象の全リクエストで確認するもの」というのは、つまりこういうことです。

Express でそのまま動く形です。

// src/server.ts
import express, { type NextFunction, type Request, type Response } from "express";
import {
  type Actor,
  type Permission,
  type ResourceRecord,
  type Role,
  auditAuthorization,
  authorize,
  rolePermissions
} from "./rbac.js";

declare global {
  namespace Express {
    interface Request {
      actor?: Actor;
    }
  }
}

type Article = ResourceRecord & {
  title: string;
  body: string;
};

// デモ用のインメモリデータ。tenant-a と tenant-b が混在している。
const articles: Article[] = [
  { id: "a1", tenantId: "tenant-a", ownerId: "user-1", title: "Roadmap", body: "Draft" },
  { id: "a2", tenantId: "tenant-a", ownerId: "user-2", title: "Release", body: "Ready" },
  { id: "b1", tenantId: "tenant-b", ownerId: "user-9", title: "Private", body: "Secret" }
];

function parseRoles(value: string | undefined): Role[] {
  return (value ?? "")
    .split(",")
    .map((role) => role.trim())
    .filter((role): role is Role => role in rolePermissions);
}

// デモ用の認証。本番ではここを JWT 検証やセッション検証に差し替える。
// ※「誰か」を確かめる処理。詳細は認証ガイドの記事へ。
function authenticateForDemo(req: Request, _res: Response, next: NextFunction) {
  const userId = req.header("x-user-id");
  const tenantId = req.header("x-tenant-id");

  if (userId && tenantId) {
    req.actor = {
      id: userId,
      tenantId,
      roles: parseRoles(req.header("x-roles"))
    };
  }

  next();
}

function findArticle(req: Request): Article | undefined {
  return articles.find((article) => article.id === req.params.articleId);
}

// permission を渡すだけで、認可・404・監査ログをまとめて処理するミドルウェア。
function requirePermission(
  permission: Permission,
  loadResource?: (req: Request) => ResourceRecord | undefined
) {
  return (req: Request, res: Response, next: NextFunction) => {
    if (!req.actor) {
      return res.status(401).json({ error: "unauthenticated" });
    }

    const record = loadResource?.(req);

    // リソースを読む指定なのに見つからない → 存在しないものは触らせない
    if (loadResource && !record) {
      return res.status(404).json({ error: "not_found" });
    }

    const decision = authorize(req.actor, permission, record);

    // 許可も拒否も、ここで必ず記録する
    auditAuthorization({
      actor: req.actor,
      permission,
      resourceId: record?.id,
      decision
    });

    if (!decision.allow) {
      return res.status(403).json({ error: "forbidden", reason: decision.reason });
    }

    return next();
  };
}

export const app = express();

app.use(express.json());
app.use(authenticateForDemo);

app.get("/health", (_req, res) => {
  res.json({ ok: true });
});

// ルート定義では permission 名を渡すだけ。判断は authorize に任せる。
app.get(
  "/articles/:articleId",
  requirePermission("article:read", findArticle),
  (req, res) => {
    res.json(findArticle(req));
  }
);

app.patch(
  "/articles/:articleId",
  requirePermission("article:update", findArticle),
  (req, res) => {
    const article = findArticle(req);
    if (!article) return res.status(404).json({ error: "not_found" });

    article.title = String(req.body.title ?? article.title);
    article.body = String(req.body.body ?? article.body);

    return res.json(article);
  }
);

app.delete(
  "/articles/:articleId",
  requirePermission("article:delete", findArticle),
  (req, res) => {
    const index = articles.findIndex((article) => article.id === req.params.articleId);
    if (index >= 0) articles.splice(index, 1);
    return res.status(204).send();
  }
);

app.get("/admin/users", requirePermission("user:manage"), (_req, res) => {
  res.json([{ id: "user-1" }, { id: "user-2" }]);
});

if (process.env.NODE_ENV !== "test") {
  app.listen(3000, () => {
    console.log("RBAC demo listening on http://localhost:3000");
  });
}

authenticateForDemo はあくまでデモです。本番ではここを JWT 検証やセッション検証の結果に差し替えます。ただし、Auth0 のような外部のIdP(ID基盤)から permission を受け取る場合でも、テナント境界とオブジェクト単位の認可は、必ずサーバー側でもう一度確かめてください。外から渡された claim を鵜呑みにするのは、玄関の鍵を相手に預けるようなものです。

ルート設計そのものに不安があるなら、Claude CodeでのAPI開発手順で土台を固めてから、この認可層を重ねると無理がありません。

UIの出し分けは「親切」、認可は「壁」

ここで強調したいのが、フロントエンドの表示制御を認可と勘違いしないことです。これは僕も一度やりました。「削除ボタンを管理者にだけ表示」して、安心していた。

でもボタンを隠しても、API が article:delete を確認していなければ、削除リクエストは普通に通ります。ブラウザの開発者ツールを開けば、誰でも直接 API を叩けるからです。

UIの出し分けサーバー側の認可
役割体験をよくする(混乱させない)セキュリティ境界を守る
破られると見えなくていいボタンが見える程度データが漏れる・壊れる
どこに置くフロントミドルウェア(必須)
省略していいか省いても事故にはならない省いたら即事故

正しい順番はこうです。まずサーバー側でガチガチに認可を固める。その上で、できないことを最初から見せない親切として、UIを出し分ける。逆にしてはいけません。UIの制御は、おまけです。本丸はサーバー側にあります。

権限のないユーザーに対しては、ボタンを消すか、押した瞬間に「権限がありません」と出す。どちらでも構いません。大事なのは、その裏で API が独立して 403 を返せること。フロントの状態に依存しない、独立した壁になっていることです。

拒否ケースを厚くテストする

RBACのテストは、「許可されるケース」より「拒否されるケース」を厚く書きます。許可が通るのは、正直あまり心配いりません。怖いのは、通っちゃいけないものが通るほうです。

最低でも次の4パターンは必ず入れます。同じ role だが別テナント、同じテナントだが別の所有者、ログイン済みだが権限不足、存在しないリソース。これが「横移動」(権限の横方向の昇格)を潰す要です。

// test/rbac.test.ts
import request from "supertest";
import { describe, expect, it } from "vitest";
import { app } from "../src/server.js";

const editorUser1 = {
  "x-user-id": "user-1",
  "x-tenant-id": "tenant-a",
  "x-roles": "editor"
};

const editorTenantB = {
  "x-user-id": "user-9",
  "x-tenant-id": "tenant-b",
  "x-roles": "editor"
};

const owner = {
  "x-user-id": "owner-1",
  "x-tenant-id": "tenant-a",
  "x-roles": "owner"
};

describe("RBAC middleware", () => {
  it("未ログインは 401 で弾く", async () => {
    const res = await request(app).get("/articles/a1");
    expect(res.status).toBe(401);
  });

  it("同テナントの自分の記事は更新できる", async () => {
    const res = await request(app)
      .patch("/articles/a1")
      .set(editorUser1)
      .send({ title: "Updated roadmap" });

    expect(res.status).toBe(200);
    expect(res.body.title).toBe("Updated roadmap");
  });

  it("役割が同じでも、別テナントの記事は 403", async () => {
    const res = await request(app).get("/articles/a1").set(editorTenantB);

    expect(res.status).toBe(403);
    expect(res.body.reason).toBe("tenant_mismatch");
  });

  it("editor はユーザー管理を触れない", async () => {
    const res = await request(app).get("/admin/users").set(editorUser1);

    expect(res.status).toBe(403);
    expect(res.body.reason).toBe("role_missing_permission");
  });

  it("owner はテナント内のリソースを削除できる", async () => {
    const res = await request(app).delete("/articles/a2").set(owner);

    expect(res.status).toBe(204);
  });
});

ローカルで動かす手順はこれだけです。

npm install
npm test
npm run dev

テストで僕が必ず見るのは、失敗理由(reason)が監査ログと一致しているかです。tenant_mismatch で弾いたなら、ログにも tenant_mismatch が残る。これがズレていると、後で「なぜ拒否されたのか」を追えなくなります。403 を返すだけでなく、なぜ拒否したのかをセットで残す。これが地味に効きます。

現場ごとに、権限の粒度を決める

RBACの設計に唯一の正解はありません。サービスの性質で、ちょうどいい粒度が変わります。僕が実際に迷った4つの例を挙げます。

1. BtoB SaaSのプロジェクト管理。 ここはテナント境界が最重要です。owner はメンバー招待と請求設定まで、editor はタスクや記事の編集まで。URLの projectId を推測されても、DBクエリとミドルウェアの両方で tenant_id が一致しなければ拒否する。僕の事故はまさにこれを怠った結果でした。

2. 社内CMS。 編集者は自分の記事を更新できるが、公開済み記事の削除や他人の記事の編集は編集長だけ。これは単純なロールだけでは足りず、ownerIdstatus(公開状態)を見るオブジェクト単位の認可が要ります。

3. 請求・返金管理。 billing_admin は請求書を読めるが、返金は別問題です。金額の上限や二重承認が絡む。「役割が billing_admin だから全額返金OK」は危険すぎる。RBACで入口を絞り、金額や承認状態は追加で見る設計にします。

4. カスタマーサポートの代理ログイン。 サポート担当はユーザー画面を閲覧できても、メールアドレス変更や決済情報の操作はできないようにする。さらに代理操作は必ず監査ログに残し、本人の操作と区別できるようにします。これを怠ると、後で「誰がやったのか」が永遠に分からなくなります。

RBACで足りなくなったら、ABACへ寄せる

最後に、RBACの限界の話を。RBACは「職務に対する権限」を表すのが得意です。でも、条件が増えると role名が爆発します。

たとえば「平日9時〜18時だけ返金可能」「10万円以上は二重承認」「EUテナントの個人情報はEUリージョンからのみ閲覧」。これを全部 role で表そうとすると、billing_admin_weekday_under_100k みたいな悪夢のような役割名が量産されます。

ここが ABAC(属性ベースのアクセス制御)の出番です。ABACは Attribute-Based Access Control の略で、ユーザー・リソース・環境・リクエストの属性を見て許可を判断する方式。「時刻」「金額」「リージョン」といった、role では表しきれない条件を扱えます。

RBACABAC
判断材料役割役割+各種の属性(時刻・金額・地域など)
得意なこと職務に応じた権限細かい条件の組み合わせ
弱点条件が増えると role が爆発設計とデバッグが複雑になりがち
おすすめまずはここから条件が増えてきたら寄せる

実務での進め方は「RBACで入口を絞り、属性条件が増えてきたらABACを足す」です。いきなり全部ABACにすると、今度は誰も認可ロジックを追えなくなる。Casbin のようなポリシーエンジンを使う場合も、先に permission名・テナント境界・監査ログ・テストケースを固めてから入れたほうが、ブラックボックス化を避けられます。認可まわりを含めた全体の守りは、Claude Codeの安全対策もあわせて確認してください。

よくある質問

Q. RBACとABAC、最初はどっちで作るべき? A. まずRBACです。ほとんどのサービスは、role と permission をきちんと分けるだけで十分守れます。「平日のみ」「金額上限」のような属性条件が実際に出てきてから、その部分だけABACを足してください。最初から全部ABACにすると、認可ロジックが複雑になりすぎて、かえって穴を見落とします。

Q. 認可チェックはコントローラーに書いてはダメ? A. 書いてもいいですが、それだけに頼るのは危険です。コントローラーの中だと「呼び忘れ」が起きます。ルートに入る前のミドルウェアで必ず通す形にして、コントローラー側のチェックは念のための二重化、という位置づけがおすすめです。

Q. UIでボタンを隠せば、認可になりますか? A. なりません。表示制御は体験をよくするための「親切」で、セキュリティ境界ではありません。ボタンを隠しても、ブラウザの開発者ツールから API を直接叩けば操作は通ります。サーバー側で必ず 403 を返せる状態を作った上で、UIはおまけとして出し分けてください。

Q. 監査ログには、成功した認可も残すべき? A. 残すべきです。拒否(deny)だけ記録すると、「正規の権限を悪用された」ケースを後から追えません。許可も拒否も、誰が・いつ・何を・どんな理由で、を両方残してください。ただしトークンやパスワードなどの機密情報はログに出さないこと。

Q. Claude Codeに認可の実装を任せて大丈夫? A. 方針を自分で決めた上でなら有効です。permission名、テナント境界、deny by default の条件、拒否系テストを先に文章で固めてから「この範囲だけ実装して」と頼むと、レビューしやすい差分が返ってきます。逆に「いい感じに認可作って」と丸投げすると、admin バイパスのような抜け道を平気で足してくるので注意です。

実際に試した結果

冒頭の「URLの数字を変えたら他社の請求書」事故のあと、僕は認可の考え方を根っこから変えました。「このユーザーを信じるか」で悩むのをやめて、代わりに**「どの門番で止まったか」**を見るようにしたんです。

authorize に deny by default の門番を5つ並べて、テナント不一致を3番目で弾くようにしたら、横移動の事故はゼロになりました。認可チェックをコントローラーからミドルウェアに引き上げたら、「呼び忘れ」が構造的に起きなくなった。そして拒否ケースのテストを成功ケースより厚く書いたら、仕様変更のたびに穴が開く、あの不安がなくなりました。

賢いロール名をひねり出すより、転んでも被害が広がらない壁を先に作る。RBACは「役割をいくつ作るか」のゲームじゃなくて、「どこで・なぜ拒否するか」を設計するゲームです。手元で試すなら、まず一番怖い操作を1つ選んで、role・permission・resource・action・tenantId・ownerId を紙に書き出すところから。コードに落とす前に、抜けが見えてきます。

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この記事を書いた人

Masa

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